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僕はほんの少し魔法が使える  作者: 白洲詠人
2023年お正月スペシャル エルヴンブライド
59/69

8 僕の最後の冒険。

第7話(LightningS掲載)のあらすじ


(本話は第7話と同時刻の話。フィリップは誘拐犯が捕らえられた地下牢で尋問を始めた。)



地下牢…


「耳長に話す事は何もない。」

入牢させられた犯人の一人は、無表情でそう言い放った。

「僕は一応ヒューマンなんだけどねぇ…」

鉄格子の外の廊下からフィリップは言った。彼は異世界人のアユムとカオリ、非戦闘員のエミリーを除けば、この場にいる唯一のヒューマンだったため、彼らとの対話を試みたのだ。結果はこの通りだが…

「我らは真の共和国愛国者だ!!胸を張って絞首台に立ってやる!!」

「何、言ってんだ、君たち…」

「お前…フィリップ翁の若い頃の肖像画にそっくりだな。あいつは売国奴だが、一つだけ良い事を言ったな…」嘲る様に男の一人が言った。


「『歴史は教科書の中だ』、ってな。常に教科書を見ろ!そして思い出せ!!そこに書かれてる耳長どもの悪事の数々をよぉ!!」


カチン!フィリップは鉄格子越しに男の胸ぐらを掴む。

「あれは、そういう意味で言ったんじゃない!!」

「ああ!?」


フィリップは、怒気を隠さずに叫んだ。

「『不幸な歴史を、教科書の外へ出すな…現実にするな』って意味だ!!言った本人が言うんだから間違い無い!!妙な曲解をするな、若造!!」


ドサっ!牢屋の床へ放り出され、呆気にとられる男。こみ上げた怒りをどうにか抑えたフィリップは、


「なあ…お前らの後ろに誰かいるのか!?ツァウベラウトはそいつからもらったと言ってたな。しかもそいつとお前らとは、微妙に意志統一が図られていない…」


牢の中の男達は一斉に目を逸らした。それすらしゃべってくれないのか…


「ふぃりぽーん、おおきなこえがしたけど、どうしたのー!?」

階上からモリガンが降りて来た。

「なんでも無い。」

「あのねふぃりぽん、わたし、いみがよくわからないんだけど…」

それからモリガンはフィリップにぱしゃぱしゃと耳打ちする。フィリップはニヤリと笑って、牢屋の男たちに、


「君たちの証言は必要なくなった。望み通り絞首台へ行くがいい。」


そう言い残すと、フィリップはドカドカと地下牢を後にし、モリガンも「べぇ。」と男たちに舌を出すと、フィリップに連いて行った。


     ※     ※     ※


男達が盗んだ『過去視の魔導具』を使って、エリナを拐かした犯人の足取りを追う。それがスティーブの考えた作戦だった。


「ところで父さん…今回はどうしてあなたは若いのに私は年をとったままなんですか!?」

「花婿の父親が若くては話にならんだろう、スティーブ…」


フィリップとモリガン、アユムとカオリ、ウィルとヴィッキーの6人は、科学と魔法のバイクにそれぞれ跨り、スティーブ邸をあとにした。


まず、エリナの誘拐現場に魔導具を設置し、誘拐の瞬間を再生、誘拐犯が逃げていった先でまた再生を繰り返して犯人の足取りを次々とたどって行った。


     ※     ※     ※


追跡は順調だった。その間の雑談で、ウィルは信じられない話を聞いた。フィリップとモリガンは自分の祖父母の若き日の姿で、アユムとカオリは異世界から呼び出されたのだと…


そして、6台のバイクを先導するフィリップが、不意に叫んだ。

「アユム君カオリさん、君たちは見るな!!」


目の前にあったのは、グチャグチャに潰れた数人分の死体だった。


     ※     ※     ※


過去視の魔導具で再現すると…ローブを着た老人と、縛られたエリナを連れた数人の男が言い争っていた。


『ワシが頼んだのはエルフの誘拐だけじゃ。誰が宝物庫漁りなんぞせえと言うた!?』


『あんたの協力には感謝している。だがこの耳長は、俺達が使う。』

『なんか文句あんのか!?じじいに何が出来る!?』


『やれやれ…なら、こいつは違約金代わりだ。』


次の瞬間、過去視の魔導具の視野一面が影に覆われ、しばらく男達の悲鳴が聞こえる。


「何ですか、これ!?」

「過去視の魔導具に映りきらない巨大な何かを、この老人が連れてたんだろうね。」


やがて静かになった後、老人の『さあ、一緒に来い。』という声。エリナは連れ去られたらしい。


「やっぱり…捕まえた男達には黒幕がいたか…」

フィリップが言った。

「あの老人が黒幕で、本来の依頼はエルフの誘拐だけだった。それを実働班として雇われた危険思想主義者が、過去視の魔導具強奪と娘を人質にライオスを脅迫して修復にすり替えた。」


「エリナ…」

ウィルが不安そうな顔で天を仰ぐと、フィリップはぽん、と、彼の肩を叩いた。

「エリナさんは必ず助け出そう。」「はつまごのよめとりー!!」

モリガンがそう付け加える。


     ※     ※     ※


やがて…ようやくたどり着いた見るからに怪しげな古い砦跡に、あの老人が、縛られたエリナを連れて待ち構えていた。


「ウィルぅぅぅ〜~~!!」エリナの悲鳴。


「来おったか…我が花嫁の最後の希望を、へし折ってくれよう。」

老人が右手を挙げ、砦の大きな扉が轟音とともに開く。

「いでよ、我が研究成果!!」


ガオーーー… メェーーー…


何だ、この鳴き声は!?


砦から出て来たのは、ライオンの頭とヤギの頭を持った、四脚の獣…


「き…」「キメラ!?」「って、


あんなに大きかったっけ!?あと、あの翼に尻尾は!?」


呼び出された獣は、確かにキメラの特徴を持っていたが、キメラには無いコウモリの翼と、サソリの尻尾を有し、おまけにライオンの頭のてっぺんまで数メートルはあった。


こいつが、さっきの男達を…


「ウィル、ヴィッキー…君たちは、キメラと戦った事は!?」

「ありません。じいちゃんは!?」

「知っての通りヒューマノイドモンスター専門だ。」

こんな奴、どうすれば…その時、


「離れていて下さい、皆さん…」「あれを倒せばいいのね。」

それまでずっとついて来るだけだったアユムとカオリが、並んで前に出た。アユムは小さなカバンを出し、目の前に掲げ、叫ぶ。


「ブリスターバッグ、オープン!!」


カバン…ブリスターバッグから光が溢れ、次の瞬間、現れたのは、全高7メートルくらいの、巨人。夜の闇の様に深い青色に、ところどころに金色の差し色の入った、鎧の様な装甲を全身に纏った…更に異様を放っていたのは、左右の目の色が違う事。左目が緑色、右目が金色。そして、兜の額には、五芒星と三日月を組み合わせた飾りが着いていた。明らかに人工の、機械じかけの巨人。我々は『これ』を表す言葉を知っている。『ロボット』…


フィリップは、ようやく理解した。


あのひ弱そうな少年が、この世界に呼び出された理由を!

第9話(落星機兵ALLETS掲載予定)へ続く。

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