after1 僕達のそれから・上
モリガンとの再会、そして、一しきりの抱擁の後…
2人はオバチャンと受付嬢を呼び戻し、事情を説明した。
オバチャンは黙って2人の説明を聞いた上で、
「…そうかい…2人とも、覚悟を決めたんだね………」
その言葉に、フィリップとモリガンは、
「「はい。」」
と、揃って答えた。
「おめでとうございます。」
受付嬢はそう言って一礼し、
オバチャンは、
「…よくぞ私に相談してくれたね…」
それからモリガンと、フィリップの肩をポン、ポンと叩き、
「これから大変だよ…準備が。」
と言った。
「準備…」「じゅんび…!?」
と聞き返す2人に、オバチャンはにっこりと微笑みながら言った。
「何、言ってんだい!急がないと新婦の体形が変わっちまう…結婚式だよ!」
※ ※ ※
それから、時が駆け足で流れた。
大急ぎで準備をし、街の教会で式を挙げた。
純白のウエディングドレスに身を包んだ、妖精の花嫁は、きれいだった…
新婦の駆け落ち同然という立場と、新郎の交友関係の狭さから、招待客はほとんどいなかったが…
「お前…冒険者云々以前に、人として失格だぜぇ…俺達を招待しねぇなんてなぁ!!」
「おめでとう、2人とも。」
アルバートとエレンが駆けつけ、
「来てやったぜぇ…師匠ぉ!!」
「おめでとうございます、モリガンお姉さま…」
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ!」
ナインとニェット、そしてオヤジさんも、ツァウベラッド・グリュンとドヴェルクに乗って来てくれた。
「おめでとう…この一発必中男ぉ!!」
アルバートは皮肉たっぷりの祝福の言葉を述べた。
「う…うるさい…なんで知ってんだよ…」
「あははははは!おおあたりーーー!!」
「モリガン笑い事じゃない。」
しかし…2人が教会で式を挙げ、外で出てくると…
「おめでとう、『パイライト』。」「おめでとう!!」
外には大勢の人々が待ち構え、口々に祝いの言葉を述べた。
「な………何で…!?」
状況が読めないフィリップに、ナインが言った。
「師匠…言ってたじゃねぇか…共和国では『境の村の軌跡』の英雄だって…おまけに王国の冒険者ギルドを立て直して…」
「ついでに『ツァウベラッド』の工房の若き工場長…」
アルバートが続けた。
「そんな男が、冒険者のパートナーと結婚するって噂が流れたら…こうなるよ。全くお前、分かってないぜ!!」
「あ………」
紛い物と呼ばれ続けた男は、ついに…
「皆さま…」
フィリップは集まった観衆に深々と頭を下げた。
「未熟な二人ですが、どうか見守って下さい…」
見物人達の後ろには、工房のドワーフ達が作った、純白のツァウベラウトが用意されていた。後ろには、”Just Married”と書かれている。
「最後、これに乗って退場しろってのか…」
恥ずかしい、とフィリップは思った。が、この一件が元となり、ツァウベラウトは急速に世間に認知されて行った。
「ねぇ、ふぃりっぷ、つぁうべらっどは!?あれであなたのうしろにのりたいよぉ…」
モリガンが妙なおねだりをしたが…
「…万が一転んだら大変でしょ。」
「ぶー………」
フィリップが運転席に座り、モリガンが助手席に座ろうとして…手に持っていたブーケを高く掲げ、
「これ、うけとったひとが、つぎのはなよめさんだよーーー!!」
と、問題発言をする。
集まった観衆の中の、未婚女性達が、途端に殺気立った。が…
ぽい! 雲一つない青空に向かって放り投げられたそれは…
エレンの手の中に落ちる。
エレンは右手でそれを、アルバートに差し出し、左手を自分の下腹部に当てた。少し顔を赤らめながら…
「………っ!?」彼女の意図を察したアルバートの顔が青くなる。
「わーっはっはっは!お前のパーティーはまた求人を出さないとなぁ!!」
「でもこれで、『このこ』に、おともだちができるね。」
その後…アルバートはみっともなくも、逃げようとして自身のツァウベラッドに乗ったが魔力供給者がいないために動かず、フィリップとモリガンのツァウベラウトを乗っ取ろうとして逆に取り押さえられ、エレンに土下座して謝った後、1か月後、同じ教会で年貢を納めた…事は、本人の名誉のために秘密にしておく。
ツァウベラッド・ドライ:
アルバートパーティーのベティ、ダスティー、フレッド(後に除隊)搭乗。現実世界で言うオート三輪あるいはトゥクトゥク。
アルバートから『積載量の増加』と『居住性の向上』という課題を出されてフィリップが作成した機体。
ツァウベラッドの魔動エンジンとコンデンサをそのままスケールアップしたものを搭載し、『馬に引かれた馬車』をイメージして後部に長椅子を追加して後輪を2輪とし、更に全体を屋根で覆った。
フィリップが四輪車の残骸を持ち帰り、『ツァウベラウト』が普及した事により、積載量と安定性では四輪に、小回りでは二輪に劣るドライはすぐに姿を消したが、資金に困る、あるいは少人数構成のパーティーに、少数が生産された。
ベティのドライは彼女が手放す際、『パイライトカンパニー』が引き取り、工房のエントランスにレガシーとして展示されている。




