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僕達の最後の冒険。

これが、問題の『遺跡』か…


フィリップは呟いた。山中に唐突に現れたその建物は、共和国の様式とも王国の様式とも違っていた。

入り口から入ると、そこは広い部屋になっており、そこには、何台もの謎の物体の残骸が並んでいた。

車輪と、椅子の付いた、残骸…恐らく、人間を乗せて移動するための物だろう。車輪が2つ着いている物も、4つ着いている物もあり、車輪2つのものは、ツァウベラッドに似ていた。

「ねぇ、ふぃりぽん…つぁうべらっどって、もしかして…」

「…だろうな。ここにあったのかもしれない。」

「じゃあ、ふぃりぽんのおじいちゃんって………!?」

「それは無いと思う。」

フィリップの祖父、スティーブは冒険者だったのでは無いか、と、考えた事はあった。が、その考えはすぐに否定された。

確かに祖父は、抑留された王国から帰った後、結婚してツァウベラッドの解析に入るまで5年間あり、その間何をしていたのか、よく分かっていない。

が、それは、計算すると『始まりの冒険者』が活動するよりも前だ。

つまり冒険者が出現する前になってしまう。

恐らく、ここからツァウベラッドを運び出したのは、他の誰かだろう…と、フィリップは推測した。


「………」

フィリップは、4輪型の魔道具の中から、比較的原型を留めている物を、『アイテムストレージ』に収納した。


「行こう…」

「うん………」


石とも、木とも、レンガとも着かない物体で作られた、長い、長い廊下を、2人は進んで行った。時々、大まかな地図を作製しながら…


「うぇぇぇぇ…まただよ…ふぃりぽん…くちゃぁい…」

「死臭って奴だな…我慢しろ、モリガン…」

2人を待ち構えていたのは、『アンデッドゴブリン』。

名前通り、ゴブリンの死体がアンデッド化させられたものだ。

「えーーい!!…うぇぇぇ…はなつまんでたたかおうかなぁ…」

「息が続かなくなるぞ。」

これが時折、廊下や途中の部屋に出現した。

まぁ、ただでさえ弱いゴブリンが、動きが鈍くなっているため、更に弱くなっていたが…

(これ…明らかに人為的に『置かれた』物だよなぁ…)

ズシン、ズシン…時折、変な音が遠くから聞こえて来た。

「まただよ、ふぃりぽん…あれ、なんだろう…」

「何かの足音、かな…?」


そして、いくつ目かのアンデッドゴブリンの部屋の、入って来たのと反対側の出入り口に、2枚のお札が貼られていた。

「見ろ、モリガン…」

「なにこれ!?」

「アンデッド除けの護符だ…この先に入って来ないための…」

「どゆこと!?」


「アンデッドゴブリンは、守備兵だろうな。

ゴブリンの死体に禁呪を使えば、その筋の者には簡単に作れるし、最初に置いた所から遠くへ行かないし、エサの心配も無い。護符を貼れば、その先に侵入しない…」

「だからどゆこと!?」

「この遺跡の奥に、誰かが入って来た。

そいつが、奥でしてる事を邪魔されない様に、アンデッドを置いた。」

「じゃあ、この先に…!?」

「ああ…そいつがいる。」


ズシン、ズシンと音が響く遺跡の中を、更に進む2人。

「ふぃりぽん、あれ…」

「ん…!?」


廊下の壁に描かれていたのは、非常に精工な絵。誰かが、何等かの魔道具を操作している絵と、それに続いて、ここでは無いどこかに、異形の怪物が現れる絵…


「………この遺跡の…用途、か………!?」


やがて、廊下は行き止まりに達し、開いたままの扉の奥にあったのは、広い、広い部屋。

天井も非常に高い。その中央には、さっきの絵に描かれていた魔道具にそっくりな物体が設置されていた。そして…

「ふぃりぽん、これ………!!」

「ああ…」

壁には、壷の欠片や布袋の切れ端が散らばっていた。急造の食糧庫だろうか…

そして床には、血だまりの中に、衣服の切れ端が散乱していた。

アンデッドを置いた張本人のものだろうか。既に殺されてたなんて…

「どうやらこいつが、伯爵の目当ての物らしいな…」

フィリップは魔道具を調べてみる。

本体と思しき部分は、破壊されて動かなかったが、さっきの絵の中で人物が操作している部分は、まだ動いている様だ。

「モリガン、本体の破片を回収して。」

「あいよ。」

モリガンは床に散らばっていた本体の破片を、アイテムストレージに収納して行く。

その間にフィリップが、操作部分と思われた装置の、正面の透明な丸い板に手をかざすと、そこに文字が浮かび上がった。共和国で使われている物に似た文字が…

”Goblin”…”Orc”…

フィリップが手を動かすと、次から次へと、映される言葉が変わった。

「ねぇ、これはもってかえれないの!?」

次にモリガンは、フィリップがいじっている操作部分に関心を向けた。

「ああ…建物から外せそうにないからな…」

言いながらフィリップは装置の操作を続けると、更に映される言葉が変わる。

”Ogre”…”Troll”………

……”Giant”…

(…これは、遠隔地にモンスターを召喚する魔道具らしいな…さっきの絵から推測すると…

どうやらあの血だまりの人物が、ここ1年半の間起きた、一連のモンスター大量発生事件の原因の様だな…

あの人物はこの遺跡を見つけ、研究し、操作していたらしい。

その目的が邪悪な意思による物か、単なる好奇心かは分からない…まぁ、禁呪でアンデッドを作る者が、まっとうな人物とは思えないがな…)

「おもしろーーーい!!これ、ほかにもいろいろともじがでてくる…」

考え事を始めたフィリップに代わってモリガンが面白そうに操作板をガチャガチャと動かしたが、フィリップは怪訝な顔をして言った。

「でも、あの人物は何故あんな不自然な死に方をしたのだろう…それにこの魔道具…本体も、何故壊れた…!?」

それに答えるかの様に…

ズシン、ズシン…という、振動を伴う足音が、段々と近づいて来た………


「あ………!!」

そして、部屋に入って来たのは…身の丈5mはある、巨人!!そして………目が合ってしまった。

最終話まであと3話。

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