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僕の王国での日常。

ある日の昼下がり…


王都から少し離れた場所にある洞窟…


汚い闇の中で、10人の汚い男どもが、雑魚寝をしていた。


彼等は野盗である。共和国で罪を犯し、王国まで逃げてきて、ここでもまた、盗み働きをしている…


「………んぁ!?」

ウトウトしていたその中の1人が、表から鈴を転がす様な美しい歌声が聞こえ、目を覚まし、表へ出ていった。


「♪~」「♪~」

洞窟の入り口で様子を窺うと、そこには、2人のエルフの美少女が、手をつないで歩いていた。歌っているのはこの国の民謡だろうか…

「あ”は~~~…」

男は下卑た笑みを浮かべ、ベロリと舌なめずりをした。

「女だぁ~~~…」

それから男は洞窟の中へ戻り、お頭と仲間たちを起こし、自分が見た物を報告した。

お頭は、

「じゃあそいつらに、俺たちの相手をしてもらおうかぁ~~~」

と、言った。そして、

「お前と、お前と、お前と、お前はここに残れ。留守番をしろ。

なぁに、俺たちが終わったら、連れ帰って相手をさせてやる。」

と、言った。


それから、6人がかりで2人のエルフ少女を追いかける。

2人の歌声を頼りに、気づかれない様に、しかし速足で…


が…


唐突に歌の最中に、2人は足を止め、そして、グルリと野盗たちの方を向いた。

「「!?」」

よく見ると、2人のエルフ少女のうち1人は、耳が普通のエルフより短かった。ハーフエルフだ…

「みんなには、おうこくからてはいしょがでてるよー。」

エルフの少女…モリガンが言った。

「………なんで皆殺しにしないのよ…その方が楽なのに…」

ハーフエルフの少女…ニェットが物騒な事を言った。

「お…お前ら冒険者か!!」「ふざけやが…うぐっ!?」

野盗の言葉はそこで途切れた。森の木々の向こうから【エリアパラライズ】が飛んで来て、全員麻痺させられたからだ。

そこにいたのは、ツァウバーフォームに変形させた『ツァウベラッド・ブラウⅡ』に跨ったフィリップ。

「よし、縛るぞ!」「おう!」

横からロープを持って現れたナインと2人で、無抵抗の野盗を縛る。

今日の『パイライト』のクエストは野盗の討伐。

村娘に変装したモリガンとニェットを囮に、一網打尽を図ったのだ。

「お…お前、ヒューマンだな…」

野盗のお頭が、フィリップに気づいて言う。

「同じヒューマンだろう…助けてくれよぉ…」

「王国に住むヒューマンだから、罪人のお前らを助ける訳にはいかないんだよ…」

フィリップは言った。

「それに、僕に出来る助けと言えば、君らを王国じゃなく、共和国に突き出す事くらいだけど…」

それを聞いて野盗は顔を真っ青にした。共和国に帰っても彼等には極刑が待っているんだろう…


その日の夕方、10人の縄で縛られた野盗たちを引き連れて、王都の門をくぐる『パイライト』の5人を、家路を急ぐエルフ達が目撃した。

「おらー、きりきりあるけー!!」「………*ねばいいのに…」

愚図る野盗を後ろから突くモリガンとニェット。

(あれ、冒険者だろ…)(ヒューマンの野盗を捕まえてくれたのか…)(敬遠してたけどいい奴なんじゃないか、あいつら…)

エルフ達の噂する声が聞こえて来た。

「『パイライト』の皆さん方、野盗を捕まえたんですか!?」「すっごいのぉ、恰好いいのぉ、あこがれるのぉ!!」

冒険者になったばかりの、ハーフエルフとドワーフの青年が羨望の眼差しでフィリップ達を見つめた。

(しかし…)

フィリップは、この国に来て一番評価された仕事が、同じヒューマンの捕縛である事に複雑な思いを抱き、そして…

「おらぁ!さっさと歩かんかぃ!!」

オヤジには、野盗たちのねぐらと思しき洞窟内に残った者たちの始末をお願いしたのだが…1人で4人もの野盗を、しかも生け捕りにした彼は一体何者なんだろうと思った。


     ※     ※     ※


また別の日の昼下がり…


王都から少し離れた別の場所にある洞窟…


汚い闇の中で、10人の汚い男どもが、雑魚寝をしていた。


彼等も野盗である。共和国で罪を犯し、王国まで逃げてきて、ここでもまた、盗み働きをしている…


「………んぁ!?」

ウトウトしていたその中の1人が、表から歌声が聞こえ、目を覚まし、表へ出ていった。


「♪~」「♪~」

洞窟の入り口で様子を窺うと、そこには、2人のエルフの青年が歩いていた。歌っているのはこの国の民謡だろうか…

「あ”は~~~…」

男は下卑た笑みを浮かべ、ベロリと舌なめずりをした。

「男だぁ~~~…」

それから男は洞窟の中へ戻り、お頭と仲間たちを起こし、自分が見た物を報告した。

お頭は、

「じゃあそいつらに、俺たちの相手をしてもらおうかぁ~~~」

と、言った。そして、

「もう、お互いで相手をするのにも飽きて来たからなぁ…」

と、言った。


それから、10人がかりで2人のエルフ青年を追いかける。

2人の歌声を頼りに、気づかれない様に、しかし速足で…


が…


唐突に歌の最中に、2人は足を止め、そして、グルリと野盗たちの方を向いた。

「「!?」」

よく見ると、2人のエルフのうち1人は、耳が普通のエルフより短かった。ハーフエルフだ…

そして残る1人は着け耳で、そもそもエルフでは無かった。


「お前らには、王国から手配書が出てる。」

着け耳を着けたヒューマンの青年…フィリップが言った。

「………なんで皆殺しにしねぇんだよ…面倒くせぇ…」

ハーフエルフの青年…ナインが物騒な事を言った。

「お…お前ら冒険者か!!」「可愛い顔してるのに…うぐっ!?」

野盗の言葉はそこで途切れた。森の木々の向こうから【エリアパラライズ】が飛んで来て、全員麻痺させられたからだ。

そこにいたのは、魔法の短杖を掲げたニェット。

「お姉さま、縛って!」「おう!」

横からロープを持って現れたモリガンが、無抵抗の野盗を縛る。

今日も『パイライト』のクエストは野盗の討伐。

村娘に変装したモリガンとニェットを囮に、一網打尽を図ったのだが…

「うぎゃーーーっ!!女は触るなーー!!」

「お…お前ら…」

野盗のお頭が言う。

「同じ男だろう…助けてくれよぉ…俺達の仲間になれよぉ、大丈夫だよ、怖いのは最初だけ…」

「御免被る!!先にモリガンとニェットを囮に出した時は、全然食いつかなかったので、もしやとは思ったが…」

フィリップは言った。

「まさかガチでそっち側だったとは…」

ナインは吐き捨てる様に言った。

「…何で律儀にハニートラップ作戦にこだわる必要があったんだ…!?」

「………こいつらはヒューマンでオスだけど、女を襲わない。放っておいてもいいのかな…ブツブツ」

またもや何やら物騒な事を言い出したニェットに、

「にぇっとちゃーーん、しょうきにもどってーー!!」

モリガンが叫んだ。


その日の夕方、10人の縄で縛られた野盗たちを引き連れて、王都の門をくぐる『パイライト』の5人を、家路を急ぐエルフ達が目撃した。

「おらー、キリキリ歩け―!!」「………*ねばいいのに…」

愚図る野盗を後ろから突くフィリップとナイン。

(あれ、冒険者だろ…)(ヒューマンの野盗を、また捕まえてくれたのか…)(やっぱりいい奴なんじゃないか、あいつら…)

エルフ達の噂する声が聞こえて来た。

「『パイライト』の皆さん方、また野盗を捕まえたんですか!?」「すっごいのぉ、恰好いいのぉ、あこがれるのぉ!!」

冒険者になったばかりの、ハーフエルフとドワーフの青年が、また羨望の眼差しでフィリップ達を見つめた。


(しかし…)

その光景を見ていた皆は思った。


(フィリップとナインは、何故、心底嫌そうな顔をしてるのだろう…)

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