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僕は3人で狩りに出た。

1時間後、王都付近の森林…


フィリップは『オーク3体討伐』のクエストを3人分受注して、3人で外へ出た。

獲物は…いた!豚の頭が乗った人型モンスター。

「まずは、あれにする。」

フィリップがオークを指さす。

「私が行きます。」

ニェットが剣と盾を構える。

「ナインは弓と魔法で援護して。」

フィリップが魔導書を開く。

「ああ。」

ナインが弓をつがえる。


「………!!」

無言でニェットが突進した。

「わわっ!?」

「ニェット、出る前に何か合図して…くそっ…***…」

フィリップが詠唱を始める。

「BUHI!?」

「………」

ニェットが剣をオークに振り下ろす。

「BUHIII!!」

「………!!」

何合か剣を交え、ナインが矢を放つ。

そこにフィリップの【パラライズ】が飛び、オークの動きが鈍る。

「今だ、ニェット!!」

「………!!」

ニェットが短く魔法を詠唱する。


【ファイア】!!


ニェットの剣から炎が出て、オークを焼く。「BU、BUHII~~~!!」


射程を犠牲に、詠唱時間を短縮した近距離魔法。あの時、ギルドマスターが使って見せた呪文だ。


続いて【アイス】、【ウィンド】、オークの手斧で手傷を負っても、対象を自分限定にして短縮した【ヒール】で自己回復していく。魔法使いは体力に劣るため、重い鎧を着けず、後方から射程の長い魔法を使うという固定観念を覆した、近接系魔道士が誕生した瞬間だった。


【ファイア】!!


ニェットの左足が炎を纏い、オークの股間を蹴り上げると、


「BU…」

悲鳴を上げてオークは倒れ、


「「………」」

無関係のはずのフィリップとナインも、何故か自分の股間をかばう様に両手を当てた。が、


「………!」

その後もニェットはその手を緩めなかった。

地に横たわるたオークの死体に、無言、無表情で、剣を、魔法を、打ち込んだ。


「ニェット…よすんだ…ストップ!!」

フィリップの言葉に、ニェットはハッと我に返る。

「わ…私、何を…!?」

「も…モンスターは、その肉や毛皮が素材になる場合もあるし、身体の一部を切り取って持ち帰らないと、倒した証明にならないから、必要以上にモンスターを傷めない様に。」

「………分かりました。」

何とかニェットに納得してもらえた。

「とにかく、それ、『切り取り』お願い。」

「はい…」

オークの死体にナイフを持ってしゃがみ込むニェット。だが…


「待て…」

何故かフィリップはそれを制止する。

「そのまま戻って来い。ゆっくりとだが素早く、音を立てずに…」

「あ…」

ナインが向こうを指さす。

ニェットが言われた通りに音を立てずに2人が隠れていた物陰に引っ込むと、そこにやって来たのは…木の棒を持ったオーク。


「オークメイジ…上位種だ…」

魔法が使えるオークである。

そいつは同族であるオークの死体を眺め、その死体を漁って(彼等にとって)値打ちのある物を回収すると、またノシノシと歩いて行った。


「ふーー…」

フィリップは胸をなでおろす。

「やり過ごせたか…」

「………倒さなくて良かったんですか!?」

ニェットはたずねた。自分か兄、どっちかを犠牲にすれば、倒せたかもしれない。

「お前らにはまだ荷が重い。」

「………ふーん…」

奴隷の様にこき使われる事を危惧していたニェットは、少しだけフィリップの事を見直した。が…


ギリッ!隣でナインが爪を噛んで、去って行くオークメイジを睨んでいた。

「ナイン、こらえろ…」

フィリップはナインをなだめた。

「強くなれば、いつか、相手出来る日が来る。」


     ※     ※     ※


「ま、本当言うと…」

残されたオークの死体から『切り取り』を終えた後、フィリップは2人に言った。

「あいつ倒すに越した事は無いってのは確かだ。

その…不幸な人を出さないために…」

「え…!?」

「…あいつらには、人間…この場合は、エルフの血が混じってるんだ。だから魔法も使える。」

どこかで同じ話をした記憶がある…


「…時々、人間の女が行方不明になる事がある。

家族や村長は、冒険者に捜索を依頼するが、見つからず、しばらくすると、依頼は取り下げられ、村では空の棺の葬式が挙げられる…要はそういう事だ…」


「あー…」

ナインはフィリップが何を言いたいのか気づいたらしい。

そしてニェットは…


「オスなんて、オークもヒューマンも同じね…」

と、吐き捨てる様に言い、そして、

「あー…そうか…今の私には、そういうオスどもを倒せる力があるのかー…」

段々ニェットの口調と目つきが怖くなってきた。

「そういえばフィリップさん、さっきの冒険者ギルドの掲示板の隅に、ヒューマンの盗賊捕縛の依頼もありましたねー…」

「あ…あぁ…」

ヒューマンの盗賊捕縛…共和国で罪を犯し、国境を越えて王国へ逃げ延び、そこでまた、強盗やら暴行やら…両方の意味での…の罪を犯した者たちだ。

もしかして、そう言った者たちの中に、2人の『父親』もいるのだろうか…


「フィリップさぁん…」

ニェットは妖しい目付きで言った。血を分けた兄であるはずのナインもドン引きしている。

「私、冒険者になれて、本当に良かったぁ。色々と、教えて下さいねぇ。強くなりたいの…」

「あ…ああ…」


どうやらとんでもない子を入れてしまったらしい…


そして3人は、森の各地を転戦した。

ナインとニェットを交代で前に立たせてみたが…

ニェットがオーバーキル気味なのが気になった。

さっき必要以上に傷つけるなと言ったのだが、後衛をやっていても、倒れた敵に矢や魔法を追い打ちして来るのだ…


(これは何とかしなきゃ…)何匹目かを狩ったその時…「あ…」


「………」フィリップは、一人のエルフと目が合った。斧をかついでいるという事は、木こりだろうか。いつからか、フィリップ達の戦いを見ていたらしい。

「こんにちは…」フィリップがお辞儀をする。「………ほら、お前たちも挨拶して…」「え…こ…こんにちは…」「………こんにちは…」


「………」

エルフは3人を無視して、去って行った。


「あいつらが俺たちに、挨拶を返す訳が無いのに…」

ナインが言ったが、フィリップは、

「…だが、将来的に僕たちに依頼をして来るのは、メシの種になるのは、彼等だ。ニェットが言う『オス』の退治を依頼しに来るのも…」

と言った。

「媚びる必要も無いが、最低限、頼られる様に、危険視されない様にはしろ。

奴らをカネや仕事のネタとして利用する、ずる賢さを持て。」


「………」「は…はい…」


まっすぐになれないなら、とことんねじ曲がって上を向け。

自分もこいつらの事は言えないんだから…


その後、目標頭数の9匹討伐を達成し、ギルドに帰り、何とかニェットにも、報酬と、温かい夕食と、寝床を与える事が出来た…


     ※     ※     ※


同日、夜、冒険者ギルド飲食スペース…


ナインとニェットは、既に上の部屋で休んでしまった。


「…と、いう訳なんですよ…」

と、語り終えたフィリップは果実水をグっと飲んだ。

「なるほど…それは難物だったね…」

今日はどうだった?軽い気持ちで聞いたギルドマスターは、フィリップから予想以上にひどい話を聞かされた。

普段は暴力的だが、戦闘では沈着冷静なナインと、

普段は大人しいが、戦闘、特に相手がオスだと暴走するニェット…

「二人が互いを支え合って行ければと思ってましたが…」

「互いがストッパーにならないと、だね…」

「とにかく…あの2人から始めますよ。」

しかし…『ねじ曲がった末で、上を向け』とは言ったが、恐らくどこかで綻びは生じる。

真っ直ぐに育っていく様に仕向ける事も必要だ。それは多分、フィリップでは無理だ。

そう言えば、僕も彼等と同じくらいひねくれてたのに、つい最近まで、王国に来るまではその傾向はかなり改善されてた…何故だっけ…!?

ああ、あいつが、いてくれたからか…


「まぁ、それより頭が痛い事は、他にもありますけど…」

「依頼、だね?」

「はい…」


この国での、冒険者の認知度は低い。

森で出会う人への挨拶、初日にもやった、近隣の村々での御用聞き…いずれも反応は芳しくなかった。

「ごめんねぇ…怠慢はギルドマスターで…」

ギルド設立から40年近く、何でこの人はここまで放置したのだろうか…

「まぁ、規律が緩いお陰で、テルでクエストを受注する無理を通してもらえたけど…」

ともあれ、冒険者にはなったけど、仕事がありませんでは、最悪、あの2人は、覚えた戦闘術を使って野盗になってしまう危険性がある。

何とかしないと、だがこれは、地道に信頼を得て行くしか無いのか…

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