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僕は彼女とクエストに出た。

魔法戦士と言えば聞こえは良いが…


手っ取り早く大金を稼ぐためになった冒険者だったが、他の者と同様、小さいころから聞かされていた英雄譚に憧れが、全く無かった訳じゃあない。

「2つの夢」を叶えられると、喜び勇んでくぐった冒険者ギルドの門、だったが、待っていたのは適性の無さという現実だった。

重い武器を装備する事も、強力な攻撃魔法、回復魔法を唱える事も出来ず、それでも「冒険者」にしがみつくため、それらを組み合わせて戦っていた。

魔法の使用を妨げない程度の革鎧や短い剣を装備し、魔法も詠唱時間の短い物を選び…

だがそれでも、そんな僕を必要とするパーティーはどこにも無かった。


「わーいふぃりぽん、おはよー!!」


………ただ一人、こいつ(・・・)を除いては………


こいつ…西の森の王国から来たらしい女エルフの戦士、モリガンは、廃鉱山でゴブリンに襲われていたのを助けて以来、何故か僕になついていた。

おまけに人間の名前に不慣れなのか、単なる愛称なのか、僕の事を変な呼び方で呼んで………

おかげで最近は、オバチャンまで僕の事をふぃり…そ、その変な呼び方で呼ぶ始末…

はぁーーー…さっさと目標金額貯めて、とっとと除隊してやる…


     ※     ※     ※


昼頃、冒険者ギルド…


「ねぇねぇふぃりぽん。今日は何するの!?」

モリガンが、彼女を無視してツカツカと掲示板へ向かおうとするふぃりぽん…もとい、フィリップに話しかける。

「………知らん!」フィリップはにべもなく答える。

「じゃあ…」

「待てーーーーーっ!!」

掲示板の募集を指さそうとするモリガンを、フィリップが慌てて制止する。

「お…お前は、クリア出来るか考えてオファーしろよ…」

何しろ彼女には前回の戦いだけでもいろいろ前科がある。

放っておいたら、実力に会わないクエストを受けてしまう危険性があった。

「あと…お前、どこかのパーティーに入らないのか!?」

そうすれば、彼にとっても厄介払いが出来る。

「えー…みんなわたしをいれてくれないもん」

モリガンは何か不満そうに言った。やはり異種族への抵抗があるのだろう。それに、いくら強いとは言っても、筋力に劣るエルフの戦士、しかも女では大成しそうにない。

そう言えば、彼女の装備は盾無しのバスタードソード。いわば柄の長い片手剣を両手で持っているのだ。筋力が足りないのだろうか…


「あと………やっぱりにんげんはちょっとこわいし…」

「怖い!?」

意外な答えに驚くフィリップ。

「うん…せんそうでかぞくをにんげんにころされたしりあい、いっぱいいるから…」

「戦争…!?」

更に分からない答えが返ってきた。確かにこの東の鉱山の共和国と、エルフの住む西の森の王国は、戦争をしていた。だが…

「第4次大戦は40年も前だぞ…」

そう言ってからフィリップはしまったと思った。モリガンの答えは、

「…たった40ねんまえじゃない…」

だった。

人間の40年は世代が交代するくらいの長い年月だが、永遠の年月を生きるエルフにとって40年は昨日の事も同然なのだ。

フィリップはあの戦争を、老人の昔話でしか知らないが、モリガンは実際に体験している可能性があるのだ。しかも、今と変わらぬ姿で…

「………僕だって人間だぞ…」

ほんの少し、どんな答えが返って来るか怖かった。が…

「ふぃりぽんはこわくないよー。」

あっけらかんとモリガンは答えた。

「わたしにまほうをかけてくれるしー。」

…何が言いたいのだろう…


「そういえばー…このまちにえるふっていないのー!?」

モリガンはフィリップに問う。

「………僕の目の前にいる。」

「わたしいがいのえるふはー!?」

「知らないよ。僕だってこの街の全てを知ってる訳じゃないし…」

また変な事を聞く奴だ。

「そっかー…」

モリガンのエルフ耳の先端が、目に見えて垂れ下がる。

「ちょいと、フィリ坊…」

オバチャンが小声で話しかけ、フィリップの袖を引っ張る。

「…何だよ、オバチャン…」

「こないだあの娘、あたしにも同じことを聞いて来たのよ。『この街にエルフはいないか』って…」

「私も聞かれました。」

余計な事を滅多に言わない受付嬢がそう言い添える。

「まぁ、『私は知らない』としか答えようがなかったんだけど…あの娘もたった一人で故郷の国からここへやって来て、心細い事もあるんじゃない!?…」

同郷のコミュニティの庇護を求めているとでも言うのだろうか。

「…だから、もう少しあんたが優しくしてあげた方がいいと思うけどねぇ…」

「だからって何で僕が……」

おせっかい焼きのオバチャンだ…


「ねぇねぇ、なんのはなししてんのー!?」

モリガンが自分を置いて話しを始めた3人に加わろうとする。

考えてみれば、こいつは何故、人間の国に来たのだろうか…

「何でもない。」

そう言ってフィリップは再び掲示板に視線を戻し、

「………これにするか…」

と、あるクエストの掲示を指さす。

街道でのゴブリン3匹退治、危険手当あり、ランク制限無し。場所が前回の廃鉱山から街道に変わっただけだ。

「街道でのゴブリン退治ですね、かしこまりました。」

受付嬢は機械的に応対する。

「じゃあわたしもー」

モリガンもそう言うと、フィリップは少し嫌な顔をし、

「かしこまりました。行ってらっしゃいませ。」

受付嬢は再度無表情にそう答える。


「ところでー…」

モリガンはフィリップに問いかける。

「な…何だ!?」

どうせまた頭の痛くなる問題発言だろうとフィリップは心の準備をしていると、


「ごぶりんってなに!?」


「のわわわわっ!!」


爆弾発言だった。フィリップは盛大にこけ、『酒場』にいた冒険者たちから大爆笑が起きた。

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― 新着の感想 ―
[一言] >◯◯は言う。「~」 みたいな表現が多い上、1行に「」が複数あるので、文章がすごい読みにくい。ストーリーの続きは気になるだけに、残念。
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