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お茶会へいざ

「ミルティス様がいらっしゃったわ!」


「いつ見ても麗しい殿方ですわね」


「今日こそローニを貸してもらわなくては!」


着いた早々に騒ぎ出すお茶会会場の令嬢達。

頬を染めて遠巻きに見る令嬢に、突撃しようとして止められている令嬢、興味の無い振りをしながらチラチラ見ている令嬢など三者三様だ。

私の口からはこの場で出してはいけない重いため息が出てきそうだった。

案の定、他の執事を連れていこうとした私はローニに見付かって失敗した。

だから今の状況は上手く出来なかった自分のせいなのだ。


「ローニ、貴方は少し離れていてくれないかしら?このままでは誰ともお話が出来ない内にお茶会が終わってしまうから」


さりげなく邪魔だと伝えるも、返ってきたのはとても良い笑顔。


「心配には及びません。私がお嬢様に合うご令嬢をお連れ致します」


その連れて来た令嬢もローニに声を掛けられた時点で私を見てはくれなくなるだろう。

そんな状況を知ってか知らずか、周りを優雅に見渡すローニは令嬢達の茶会に招かれた貴族子息のような空気を醸し出していた。

そして何より気になっているのはここに来ているご令嬢方の気合いの入りよう。


「暫くはお茶会にも出ない方がいいかしら…」


「ミルティスお嬢様が居ないお茶会など水の無い砂漠のようです」


水が無いから砂漠が出来上がるのではないか。

そんな事を言い返せないまま、主催者であるマーレン侯爵夫人の元へ辿り着いた。

色とりどりの薔薇が咲き誇る庭園の真ん中に置いてあるテーブルと椅子。

その前で他の令嬢達から挨拶を受けている金髪の美人が振り替えってローニに微笑み掛けてきた。


「ミルティス・バルフォード侯爵令嬢様、ようこそお出でくださいました」


完璧な淑女の礼を取るマドリーヌ様は私に挨拶しているようで、視線はずっとローニに向いている。


「ご招待ありがとうございます」


マドリーヌ様の様子に胸がモヤモヤするが、押さえ込みながら淑女の礼を返す。


「ローニも来てくれたのね」


私の礼が終わる前に私を通り越してローニに近付いて、勝手に腕を絡める。

ぎょっとしながらローニの顔を見ると優しい顔で私の方を見ているではないか。

恥ずかしくて目を反らしてしまった。


「今日は執事達も好きなように食事をしてはどうかしら?」


「まあ、それは楽しそうでございますね」


照れながらモジモジしていたらマドリーヌ様がとんでもない事を言ってきた。

普通は連れてくる執事と飲食を一緒にすることはない。

身分の差というものが存在するからこそ、周りに侍る事はあっても同じテーブルに付くことは無かった。

それをこの主催者はローニとお茶が飲みたいが為にこんな提案を出してきた。

しかも頬を染めながらローニを遠巻きに見ていた令嬢もその提案に乗ってきたのだ。


「それはとても嬉しい事ですね」


しかもここで遠慮して反対しなくてはならないローニまでも賛成意見に便乗してくる。


「ではローニはこちらに…」


本人からの承諾を得て目を輝かせたマドリーヌ様は絡めた腕を引いて自分の席へと案内しようとしていた。

ローニはそれを驚くほどスマートに遮り、私の手を取ってきた。


「今日は給仕ではなくお嬢様と同じテーブルに着いていいそうです」


「え…あ、うん」


自分でも間抜け面を晒していると分かっているが、どうしようもない。

私は手を引かれるまま近くの椅子へとエスコートされていた。

主催者を蔑ろにしても怒られないのは何故なのだろう。

そんな私の疑問に答えてくれる人は誰も居ない。

マドリーヌ様でさえ悲しそうな顔をしながらも何も言わずに自分の席へと帰ってしまった。

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