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人間の俺が弱小魔族達の救世主になったわけ  作者: エコロジー毒電波
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逃亡劇

 一通り叫び終えると、少し心が落ち着いてきた。


 改めて目の前の人物の頭を見直してみると、ちょうど耳の真上10cmくらいの位置から横向きに角が伸びているのが分かった。


 伸びた角はカーブを描いてコチラ側に向かって突きだしており、


(なんかクワガタみたいだなあ)


 と言う感想が頭に思い浮かんだのだった。



「角……それ本物なの?」


「え? はい、私の頭から生えてます。本物のツノです」



 目の前の人物は、こちらの質問にキョトンとした表情で答えてくれた。


 本物の角と言われ呆然としていると角の生えた人物は何かを思い付いたようで、先程の答えに補足を入れ始めた。



「あの……角を見た事が無いのですね。もしかして魔族を見るのは初めてですか?」


「へっ? まぞくって何?」



 ここに来てまた知らない単語を聞かされた俺はスットンキョンな声を出してしまう。


 目の前の人物も頭に"クエッションマーク"を浮かべているみたいで、二人の間に沈黙が続いていく。


 ほどなくして二人の沈黙を破る声が近づいてきたのだった。



「街中で魔法を使ったのか?!」

 「魔法を使ったのはまだ子供だという話だぞ」

「子供が魔法を使うだと? 危険だ、早く捕らえよう」

 「対魔法用の装備は全員分あるな」



 声のする方を見ると黒を基調とした軍人風の服を身に纏った複数の男が近づいてくるのが見えた。


 近づいてくる男の中で一際目立つ帽子を被ったリーダー風の男がこちらに気づいたようで、


「魔法を使ったのは、そこに居る者か?」


 指を指しながら周囲の人達に確認を取っていく。



「はい、恐らく風系の魔法だと思います。恐ろしく強い風を起こしてアチラに倒れている大男を吹き飛ばしていきました」


「ほぅ、あそこに伸びている大男を飛ばしたというのか。まさか子供が【大魔導師】クラスの力を使うとはな。皆、心して懸かれよ!」



 聞き慣れない単語がまた聞こえてきたので、目の前の人物に質問をしてみる。



「なぁ、大魔導師って何?」


「え~と、魔導師の階級で上から二番目に高いくらいの事です」


「そうか……」(全く分からん)



 分からない事だらけでは有るが、ここに来て分かってきた事が一つだけある。


 それは、ここが『ファンタジー世界』であるという事だ。



◇中世風の景色と人物

◇奴隷制度

◇魔族という種族

◇魔法



 これはもう今まで居た世界とは別物だと言えるだろう。



(あぁ、元の世界に戻れるのかなぁ……)



 現実(?)逃避をしていると、



「おい! そこの子供。大人しくコチラに来るんだ」



 全身黒服の軍人らしき複数の男が盾を構えながら近づいてきた。


 すると横に居た魔族と名乗った人物が俺の手を取り急に走り出したのだった。



「待て、逃げるな!」


「えっ? どういうこと」


「いいから、私と一緒に逃げましょう。捕まれば最悪、牢に入れられてしまいますよ」


「なんで? 牢屋に入れられるような事してないよ?」



 "フッ"と言う風切り音がした後、急に頬が熱くなる。徐々に"ズキリッ"とした痛みが頬全体に広がっていくのを感じたのだった。



(っ! 何かされたのか?!)



「矢です! このまま走っていたら的にされます! あそこの路地に入りましょう」



 手を引かれるまま建物と建物の間に有る狭い路地に逃げ込んで行く。



「くそっ! 走りながらじゃクロスボウの照準が合わん」

 「バカタレ! なぜ撃った! 相手は子供だぞ。対象を殺す気か?!」

「す、すみません」



 逃げる背に怒号が聞こえてくる。


──息が苦しい


──撃たれた頬が痛い


──背中を流れる冷や汗が止まらない


──怖い。怖い。怖い。怖い。怖い



(クロスボウ! 武装してるのか? こ、殺されるっ)



 恐怖から逃げるよう足をメチャクチャに動かす。



(死にたくないっ)



──走る、走る、走る!


──繋いだ手を離さないよう必死に走る


──今まで走ったことの無い速度で走る


──恐怖から逃げる為に全力で走ったのだった

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