転生
──まぶしい太陽に刺激され目を覚ます
──瞼を開け横になった体を起こすと、まるで硬い床に寝かされていたかのような痛みが全身を走りまわるのだった
(痛っ! えっ? なんで外で寝てるんだ?)
辺りを見回すと中世ヨーロッパを思わせる建物と綺麗な石畳が目に入った。
(こんな景色現実で見たの初めてなんだけど、外国にでも飛ばされてしまったのだろうか?)
突然の事に自分の思考が明後日の方向に飛んでいく。
(あれれ? ホントにどこなんだ?)
何とか現状を把握するべく辺りから有益な情報を集める事とする。
◇黄色や赤色の外壁をしたカラフルな建物
◇細長い造りをした建物や多角形の建物
◇果物を売っている日本では見たこともないような露店
◇往来を歩く洋風な男女
◇etc…etc…
自分が住んでいた場所とは全く違う風景。
どうやらここは日本では無いらしい。
そんな現実に愕然としていると、いかにも人の良さそうなお婆さんが話しかけてきた。
「お嬢ちゃん、さっきからキョロキョロしているけど何か探し物でもあるのかい?」
「いえ探し物は無いのですが、え~と、つかぬことをお伺いしますがここはどこなのでしょうか?」
「あらあら、外国からいらしたのかい。ここはナサナ大陸の北部にあるホクザンの街じゃよ」
「……」
全く知らない地名を聞かされ呆気に取られていると、
「あら大丈夫?」
気の良さそうなお婆さんが心配そうにこちらの顔を覗きこんできた。
(落ち着け……落ち着くんだ!)
深呼吸を繰り返し何とか心を落ち着かせる。
(謎の地名も気になるが自分の声が何かいつもより高い気がする。それとこのお婆さん、こちらに向かってお嬢ちゃんって言ってたけど誰の事なのだろう?)
目の前のお婆さんはコチラが落ち着くのをニコニコしながら待っていてくれた。
その様子を見、混乱していた頭が少しずつ落ち着いてくる。
落ち着きが戻ってくると今度は気になることがいくつか頭に沸き上がってくるのを感じた。
1.まず目線がいつより低い気がする。
2.それに自分の手足も何だか短い。
3.違和感はそれだけに留まらず、
(何か嫌な予感がして知りたくないけど一応調べておく必要が有るよな…)
恐る恐る自分の手を下半身に持っていくと大事なアレが無くなっている事に気付いたのだ。
(???)
驚愕の事実に狼狽していると、ふと建物の窓ガラスに自分の姿らしき物が映る。
「って、誰だお前はーーーーっ!!!」
往来の真ん中で、生涯一度も出した事の無い大きな声を出してしまったのだった。