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高校生活を無事に過ごせそうにない件について  作者: そるとん
第1章 春の出会いと記憶
6/6

第6話 怪異を目の当たりにした件について

怪異とーじょー!



「中々見つかんないなぁ……」


俺らは今、芳香怪異の原因を探している。華恋の能力で大体は察知したのだが、あまりにも見つからなさすぎる。


「今日は活動しないのかしら……」


椿が少し不安を見せた。それでもまだ30分程度なんだ、も少し頑張ってみようぜ…?

短気な椿とかえでが諦めモードになりかけていた、その時……


「……っ!?来た…!」


華恋が何かを察知した。その時は俺らはまだ気づかなかったが時間が進むにつれて認識出来るようになってきた。

もっとも、それは臭いなのだが。

何かを誘うように薄い赤色をした霧が現れ、甘い香りがする。間違いない。怪異だ。


「どうやら1人みたいね。あまり気配を感じられないわ。」

「そうか……」


ほんと便利だな、華恋の能力。

感心したのも束の間、続けるように、


「でも、詳しい場所が分からないわね…」

「なるほど…この霧ね…」


困ったような口ぶりの華恋に続けるように椿は言った。

どうやら霧が濃くて、上手く察知出来ないみたいだ。

臭いを辿っていけばいいのでは?と思ったが危険みたいだ。知らず知らずの内に意識がなくなってしまうらしい。怖いなぁ…。

どうしようか…ここは市街地から少し離れた山の中。街がまだ見えているとはいえ、奥に行くのは……

すると突然椿が口を開いた。


「……うんっ!こっちね!!」

「…いやいや、勘進むのは危な……」


いや、まてよ?椿の能力は……

こいつ、さては凄いな?


「…行こうか」

「ふふ…理解した?それじゃあ行きましょ!」


少し分かってきたぞ。常識は考えない方がいいな。


ーーーーーーーーーー

ーーーーー


「うわぁ…いかにもって感じだなぁ」

「…そうだな」


かえでが思わず「うわぁ」とか言っちゃう雰囲気。

まさかこの山にこんな拓けた場所があるとは、あまり広くはない。その上不気味に霧が漂う。

こんなの、「ここにいますよ!」って言ってるようなもんじゃないか。

あ、ちょっとボーッとしてきた…。ここに長居はキツイかもな。

ーーそんなボーッとした頭の中に響くような、それでいて静かな声が聞こえた。


「あなたたち、だぁれ?」

「……それはこっちのセリフ」


聞き慣れた事のない声だ。つまり、俺らの中の誰かではない。ましてや、こんな幼い声を出せるやついない。はず。


「人に名前を聞くときはまず自分からよ?」


俺の言葉に続けるように椿は言った。そんなセリフ漫画でしか見たことない。

幼い声の主は素直に言った。


「私は……そうだね…怪異よ!名前なんて無い!」

「名前がない…?」

「有名な怪異とかになると名前、二つ名とかもそれなりに付くんだけど、あまり知られていないものだと名前は付かないの」


俺の疑問に花奈は答えた。

なるほどね……怪異は恐怖を喰うっつったっけ。大方、知名度が低くて消えかけたから、こうして問題を起こしたと。


「大方理解できた。つまりは、自分の存在を知らしめるために事件を起こしたんだな?」

「そうだよ〜!ここ最近になってからようやく知名度が広がってね!も〜お腹いっぱい!」

「ならそろそろ潮時じゃないかしら?やめたら?」


身振り手振りで感情を表す怪異に椿は冷たく言った。

容赦ねぇなこいつ…。怪異あのこ泣いちゃったらどうしよう。

なんて心配、いらなかった。

つくづく俺は甘いなと、感じた。


「嫌だね。自分のために、ここでやめるわけにはいかないの。もし、邪魔をするって言うなら……」





ーー殺すよ?








「皆んなっ!!引いて!!!」

「は!?」


椿が叫んだと同時に、激しい爆発音、衝撃波が体を襲った。

何が起こった!?なんて、野暮だな。ハッキリと体感した、怪異の「殺気」。


怪異のほど近くにいた俺た椿は吹き飛ばされてしまったが、かえで達には被害があまり及んでいない。


「正体表したなぁ!」

「覚悟なさい……」


かえでと華恋が前に立って怪異を威嚇している。花奈は飛ばされた俺に駆け寄ってきた。


「だ、大丈夫ですか!?」

「…あぁ、何とかな。椿が叫んでなきゃもっと酷かった」


とっさとはいえ、少しばかり躱せた。直撃は免れた。

その椿はというと、


「あんた良くもやってくれたわね!!ぶっ飛ばしてやるわ!!」


かえで達と一緒に吠えてた。元気かよ。

女の子に負けちゃう俺はポンコツだなぁ…。


「さ!私たちも行きましょう!」

「あ、あぁ、そうだな」


ほんと、母さんの言う通り、こいつらは逞しいな。

少しばかり、嫌な予感がするが……


ーーーーーーーーーー

ーーーーー


「うりゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「どりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


椿とかえでが騒ぎながら、それでいて見事なコンビネーションで怪異を追い詰めていく。

かえでは得意の空手を用いて、椿は俺たちがもつ固有の力、『月力つきりょく』なるものを弾丸のように飛ばしていた。

あの島の生存している被害者に宿っているらしく、オーラのようなものみたいだ。華恋が説明してくれた。

その華恋と花奈は勝負が見えたのか、少し離れた場所で様子を見ていた。

俺は、呆然としてた。


「私たちいらないわね」

「そうだね…このまま終わるね……」


怪異がなんともいたたまれない。悪い奴とはいえ、見た目は小学校低学年くらいの見た目だ。その子が追い詰められるのを見ているのは気分が良いものではない。

けれど、これが一番手っ取り早いらしい。

力でねじ伏せるか、痛みで覚えさせる。

マフィアか何かか?と思いながら戦闘を見ていた。

すると、怪異は口を開いた。


「君たち強いねぇ!人間なのに不思議ぃ!!その弾丸も何か気になるなぁ!」


……余裕、なのか?

さっきから2人の攻撃をかなり食らっているはずなのに、余裕な態度で、軽い口ぶりで、傷1つ無い。

人ならざるものとはいえ、今の2人だってかなりの力を持っているはずだ。なのに無傷とは、いかに?

ーーまた嫌な予感がする。


「久しぶりに"おねぇさん"本気になっちゃった!!」


ゾッとした。俺だけが感じたのか俺以外の4人は黙って怪異の様子を見てる。

何だかいけない気がする。


「はぁ?おねぇさんって、あなたちんちくりんじゃない」


椿が辛辣に返すと、今までとは比べ物にならないほどの殺気が溢れた。しかし、華恋ですら気づいてない。



もしかして……霧……

しまった!!


「ーーーーっ!!逃げろ!!つばきっ……!!」

「え?何…きゃぁっ!!!!!」


遅かった。

攻撃力を持った殺気が俺たちを吹き飛ばす。

鋭い殺気は周囲の木を、葉を、椿達を切り裂く。


ーーしばらくするとその殺気は収まった。華恋と花奈は少し離れていたために対処はできたみたいだ。所々傷を負っているが。

俺も離れていたため傷は少ない。

が、椿とかえでは全身から酷い出血をしていた。

かなり吹き飛んだらしく、離れていたはずの俺の隣で椿は木にもたれかかっている。


「椿っ…!!かえで!!」


やばい。やばい。やばい。

どうしようか、やられてしまったのか……!?


「……んっ、ぅん……」

「椿!!」


よかった。生きているようだ。

反対側ではかえでを見ていた華恋達もホッとしている。

ひとまずは安心……


出来ねぇな。


「お前…そんなナイスバディーだったっけか…?」

「だから言ったでしょ?おねぇさんって!」


幼女の姿をした怪異はどこへやら。

目の前には、月光の下、ふよふよと飛んでいるナイスバディー1人。

強さに応じて、見た目も変わるらしい。つまり、幼女の姿は偽りだったと。

本来の姿はこのナイスバディー。サラサラなロングの黒髪は月光を反射してキラキラしている。透けるような色白な肌で、端正な顔立ちは人とは思えない。


「本当のお前はこっちだったと……」

「えぇ、見惚れちゃった?」


あぁ、見惚れたよ。あまりにも綺麗だ。



ーーけれど、椿達を攻撃した事は許さない。



けれど、アグレッシブではない俺は武術には長けていない。

出来るのだとしたら……俺に、出来るとしたら……


ん?そういえば……


「何で、幼い見た目してたんだ?そっちの方が人から恐れられるんじゃないか?」

「!!」


俺の純粋な疑問に、何故か怪異は顔を歪めた。

そうか、何かあるんだな。

きっと、この怪異には、もっと別の理由がある。

目立ちたいからではなく、もっと別の。

なら、俺はそれを根本から断ち切る。

俺の出来る事は、『干渉』することしかないな。



シオンくんの能力が分かるかも…!


第7話で!!

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