第3話 僕らの世界が消えた日について
第3話!!!長めです!!
シオンの過去と 椿の過去が大まかに分かります!
重要人物も出てきます…!
ではどうぞ!
「……」
「……」
き、気まずい
ここ数年、女性どころか人ー家族は除くーと話した覚えなどない、ぼっち歴16年の神崎 シオンは、秀才美少女「皇 椿」とオシャレなカフェにて向かい合わせに座っている
シオンはカフェなどというキラキラした場所に繋がりはなく、『え?レストラン?』とまで思った。そのくらい外で歩かない
だからまぁ、キラキラした場所でキラキラした人と一緒に…
何が言いたいか、そう!
気まずい(2回目)
「あぁ、そうだ、苗字」
「えっ?あぁ、うん」
沈黙を破ったのは椿だった
そうだそうだ、ここに入る前に椿は俺の苗字が気になるとか言ってたか
「あなたの苗字は[神崎]よね?」
「あぁ」
「あなたの両親について聞きたいんだけど」
「両親ねぇ…」
こいつ、どこまで知ってんだ…?
「言いたくないのならいいわよ」
「…いや、言うよ」
正直、俺も『皇』の姓に関しては少し気になっていた
「俺の母親は[神崎 そら]。天文学者で独自の方程式やら計算で多くの星を見て、宇宙の謎を多く解いてきた。それも、10代で俺らより若い時から」
いわば天才。将来も期待されニュースにもなった
昔はよく星の話とか聞いたっけ。それ以来俺も星空とかよく見るし、宇宙は好きだ
「ただ、その天才が選んだ道は学者じゃなく妻になることだった」
「妻…?」
「[神崎 洸星]。そいつの妻に」
「洸星、つまり俺の父親は物理学者。父さんも父さんで天才学者。何でも11の時に自分で相対性理論を作り上げたんだと」
相対性理論、アインシュタインが作り上げた、今や物理学の基本となる理論だ
その理論がすでにある事が分かった時はショックだったみたいが、逆に11の男に解かれたってのもアインシュタインからしたらショックだろうに
昔はよく自慢されたわ…他にも色々教えられた
「で、まぁ、その天才も夫になり、俺の父親になって…」
「……」
何かを押さえ込むように息を吸い込む
で、全部吐き出すように言った
「…両親共々、死んだ」
「えぇ…知ってるわ…」
知ってて聞いたのかこいつ。悪趣味な
「まぁ、そんな間に生まれた俺もすげぇ期待されたが、うざいよな。あの期待を抱いた目が」
昔、同級生やら先生やらに色々言われたっけ…
「で、まぁ、その期待が嫌で嫌で、人から距離をおいた」
「それで、あの自己紹介ね。だいたいわかったわありがとう」
大方説明できたか
さぁ、次はこっちの番だ
「お前も聞かせろ、皇について」
「やっぱ分かっていたのね…特に特殊な家柄ではないけどね」
「聞き覚えがあるだけだ」
「そう…」
多分だが、俺はこいつと面識がある。気がする
「私と…あなたの故郷…[輝夜島の出身よ」
…やっぱりか
輝夜島
日本のはずれにある、あまり大きくない島だ
森林が多く田舎といえば田舎だが、テレビで見る感じの田舎ではない
商店街みたいなものはあるし、どちらかというと平地が多い
中央に大きな山があって周りを人里が囲んでいる
そこそこ発達していたのだ
椿はそんな島の…
「皇家は輝夜島の領主よ」
「…あぁ、知ってる」
皇といえば大きなお屋敷に住んでいて、住んでる人も大層きらびやかな服を着て、お嬢様お坊ちゃん口調なものだと、幼い頃の俺はイメージしてた
この椿と出会うまでは
「よくうちに来て望遠鏡使って星見てたっけ」
「覚えてるん…のね!やっぱりシオンじゃない!」
やっぱり、椿だった。お嬢様口調とやんちゃな言葉遣いが中途半端に混ざった変な言葉遣い
昔はそうでもなかった。お嬢様なんて感じないくらいのやんちゃガールだった
好奇心旺盛で、色々なものを一緒に島中見て周ったっけ
「自己紹介の時にビビビッてきちゃった!」
「じゃあ何であんな他人行儀に話しかけてきたんだ?」
「同姓同名の別人だったら嫌じゃない…でも、学校が早く終わったにも関わらず図書館に行って推理小説読んでるもんだから間違いないと」
おいそれは、友達がいるかいないかで判断したのかお前この野郎
「ともかく、久しぶりに会えて嬉しいのよ!あの日以来めっきり姿を見せなくなったもんだから…」
「まぁ、引きこもってたし…」
あの日…
あぁ…変なこと思い出した…
ーーーーーーーーー
ーーーーー
「早く来なさいよー!シオン!」
「ちょっ、まっ、元気か…お前…」
「椿は元気だなー、負けてらんないな…よしシオン!競争だ!」
「ちょ、かえで…はやっ、まっ…」
「流れ星見れるといいね、シオン君」
「唯一俺と歩いてくれるの花奈だけだぜ…」
「ほら、もうすぐで山頂よ」
「華恋…お前も歩いてくれるんだな…」
「ほらぁー!もう先行っちゃうわよー!」
「もうお前だけ先行ってろ、椿…」
「この星空を来年も、みんなで見れるといいわね!」
「あぁ…そうだな」
ーーーーーーーーー
ーーーーー
そうだ…あの時はみんないてくれて…
みんな…
「安心しなさい、みんな元気よ」
「!?……そ、そうなのか」
素っ気なくするな、俺
ほんとはすげぇ嬉しいくせに
椿の言った『あの日』
星が降ったあの日。俺らの島は消えた
ーーーーー
ーーーーーーーーー
8月4日。夏の風物詩とも言われるペルセウス座流星群が来るとニュースも島の人も騒いでた
特に俺は天文学者の母から聞いていたし、物理学者の父親から星がどうたら流星は何たらと色々聞かされた。それに[輝夜祭]と呼ばれるお祭りが今日ある。そんな訳で何故か神崎家にお祭り騒ぎの椿がいる訳で。
神崎家はログハウス風の家で二階建て。二階のもう一個上には巨大な天体望遠鏡があり、それを度々、皇家の長女やら島の子たちが見に来てた
まぁ、こんな山奥の小屋に来るのは変わり者ばかりだけど…
「早く夜になってほしいねー!」
「そうだな」
爛々とした目で俺に話しかけるのはこの島の領主の娘、椿
そんな完璧美少女の問い掛けをパソコンをポチポチしながら適当に受け流した俺を阿呆だと思ったのか
そら「もう!ダメじゃない!素っ気なくしちゃあ!モテないよ!」
母さんは微笑ましいものを見たような顔して言った
うるせぇ、興味津々で言ったら引かれるんだよ
シオン「へいへい」
そら「もぉー!」
呆れたようにそう放った
直後ドアから破裂したような音がした
かえで「よぉー!シオンいるかぁー!?」
シオン「いません」
ドア開けただけだよね?なんで銃撃音みたいな音すんの?
どうやればそんな音すんの?ドア壊すのやめてね
このお転婆娘は[因幡 かえで《いなば かえで》]
下ろせば肩まである茶色の髪を後ろで束ね、スポーティな服装をしている
というか、スポーティ。俺とは違ってアウトドア。陰と陽でいったら陽
つまるとこ俺とは真逆である
今思ったがアウトドアなのに肌白いなこいつ
かえで「そんなつれないこと言うなよー」
シオン「ドア壊しそうなやつに話しかけたら殺されそう」
かえで「偏見が酷いな!?」
発言から何から馬鹿っぽそうだがそんな馬鹿ではない
単純に頭はいいし、常識もある
だが、うるせぇ、元気、騒がしい
それも彼女の個性だがね
かえで「今日行くだろ?輝夜山!」
シオン「あぁ、もちろん行くよ」
椿「私も行くわよ!!!」
[輝夜山]
人の名前ではない。輝夜さんじゃあない。山だ
この輝夜島の中心に位置する大きな山である
その標高は高く、椿と俺はよく探検と称してそこに行った
またその標高の高さから星がよく見える
故に、今日のペルセウス座流星群を見るにはうってつけの場所だ
神崎家はその輝夜山にあって、山頂からも近かったりする
だからこうして、俺と面識のあるやつはここにくる
かえで「椿!シオン!祭り会場に行ってみようよ!人いるぜ!」
椿「いいわね!それ!行きましょ!」
そりゃ、人いるだろ。準備してんだもん。小さい島とあってか島中の人達はほとんど面識がある。逆に知ってる人が多くないの俺くらいだろ
シオン「あー、俺はいいわ、まだやる事あるし」
椿「え〜!?ノリ悪いわねぇ、バーカ!」
領主の娘とは感じさせないくらい酷い言葉遣いだなこいつ
シオン「馬鹿はないだろぉ…お前は特に言葉遣い気をつけろぉ…」
椿「バーカバーカ!」
かえで「ばーか!禿げろ!」
シオン「禿げろはおかしくねぇ!?!?」
うひょひょー逃げろー!と楽しそうに2人とも家を出てく
小学生かって…今俺らは14で中二な訳だが、中二…なんだが…
小学生かって…
そら「シオン」
シオン「うおぉ…どした母さん」
急に話しかけんなびっくりしちゃうだろ
そら「流星群見に行くの?」
シオン「え?あぁ、まあな」
妙に真面目な顔してるなぁ…
そら「だったら最後まで見るべきよ、山頂から動かずに」
シオン「え、なんで…」
そら「夜が更けてからが綺麗なのよ、みんなにも見せてあげるといいわ」
そうなのか。流石天文学者。いつもの調子に戻って話してるな
俺の考えすぎか…素直に楽しむとしよう…
そら「ほら、一足先に山頂の下見でもしてみれば?西側で綺麗に見れるわよ」
シオン「あ、あぁ、分かった…」
そら「父さんもきっと行くわよ。ここ最近いなかったし、今日は楽しみみたい」
そう言われたら行くしかないかぁ…俺も別に興味がない訳ではないし、楽しみだからな
シオン「じゃあ、行ってくるよ」
そら「えぇ、気をつけてね」
俺は家を後にした。
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そら「あなた、準備は出来たの?」
洸星「あぁ、大丈夫だ、きっと」
そら「どうか、無事であって欲しいけど…」
洸星「大丈夫だ、俺もいる。守るぞ」
そら「えぇ…」
ーーーーーーーー
シオン「あれ?もうこんな時間」
山頂に行ったら行ったでかなりの時間を過ごしてしまった…
結構楽しいよね、高いところ
輝夜山は休火山なのだ。従って輝夜島は噴火で出来た島である
噴火の様子は凄いもので、月に届きそうなほどだった
だから『輝夜』。かぐや姫から取ったのだ
実際、この山から見る月も格別で、むちゃくちゃ明るく、不気味なくらいに大きい。だからこそ、俺は宇宙の神秘を肌で感じれる
輝夜山のすっかり草原と化した火口で寝そべりながら俺はぼんやり考えてた
シオン 「俺も大概変人だな…」
こう寝そべってるだけでも、よく噴火口がここまで塞がったなぁとか
草生えたなぁとか、大地を感じてる。側から見たら変人だわ、これ
シオン「あぁ、祭りかぁ…行くか…」
ゆっくり上半身を起こし、ボソッと喋る
シオン「また騒がしくなるのか…」
満更でもなかったりする…
ーーーーー
ーーーーーーーーー
ガヤガヤ、ざわざわ
そんな擬音が文字になって見えてくる
人里あげての輝夜祭は大規模で人里全体を使っている
ちなみに、輝夜山から祭りの風景を見下ろすのも何かと幻想的で俺は好きだ
そんな事を考えてたら耳に突き刺さる声が聞こえた
かえで「シオンーーーーーー!!」
椿「んーーーーーーー!!!!!」
どこぞのお嬢様に関しては『んー』しか言ってねぇ
シオン「食うか喋るかどっちかにしろ」
椿「んんっ…んぐっ…よし…シオンーーーーーー!!!」
シオン「叫び直すなうるせぇっ!!!」
律儀に無礼だった
???「こんばんは〜シオン君」
シオン「ん?…おぉ、花奈。こんばんは」
花奈「早速お疲れだね…」
苦笑い気味に花奈は言った
[日夏目 花奈]は俺の数少ない知り合いの1人
おっとりしていて彼女といると落ち着く。まぁ、普段のやつらがうるさいだけだが。そんなわけで俺の中でも貴重な存在。安らぎってマジで必要だよ
そんな性格とは裏腹、剣術の達人でもある。実家が剣道で有名で、家系も剣道一色に塗れた一族の娘。そんな日夏目一族の中でも類を見ないほどの天才で段を取るにはかなりの年月を有する剣道において、14の彼女は現在7段
これ、あり得ないのだ。そのあり得ない程の強さをもっているのが花奈
一応言うと、かわいい。クリーム色のショートボブになんかふわふわした服
うん、かわいい。貴重
かえで、椿「「……」」
シオン「え、何?こわっ」
めっちゃ睨まれてる
椿「なんか目がいやらしいわね」
かえで「離れろ、花奈。こいつ何かやらかすぞ」
シオン「おいこら馬鹿野郎」
花奈「え?えぇ…?」
分かりやすい困り顔…
何だかこの子に関してはえげつない罪悪感芽生える
まぁ、俺も困ってる。というか、殺意が芽生えるわこんちきしょう
椿は変に勘がいいから困る。ただ、俺からその娘をとらないで
落ち着きがある日がなくなる気がする。ダレカタスケテ
???「困ってるからやめてあげなさいよ」
シオン「か、華恋!!!」
椿「華恋も来たのね!!」
[天宮 華恋]
彼女は皇家に仕えるメイドさんだ。高身長で良いスタイルをしている
毛先が赤く、他は綺麗な黒髪、首くらいのショートヘアーで前髪で右目が少し隠れている。可愛いというか、美人、てかイケメン
完璧主義者で、椿から話を聞いていたが完璧な仕事ぶりらしい
実際、学校でもよく仕事をしてる。クラスのことから先生の手伝い
挙句にはプリント一緒に作ってた。頭いいからなぁ
あと、負けず嫌いで強がりで、ちょっとお節介焼き
華恋「私も祭りくらいくるわよ」
シオン「ともかく、助かったよ、ありがとう」
華恋「ど、どうって事ないわよ」
礼を言われる事が苦手だったっけ…
椿「あら、全員揃ったのね」
かえで「流星群いつなんだろ」
シオン「あぁ、もうそろそろか」
花奈 「じゃあ、もう行きましょうか」
華恋「そうしましょうか」
祭り会場を後にして、俺らは輝夜山に向かった
ーーーーーーーー
椿「早く来なさいよー!シオン!」
シオン「ちょっ、まっ、元気か…お前…」
かえで「椿は元気だなー、負けてらんないな…よしシオン!競争だ!」
シオン「ちょ、かえで…はやっ、まっ…」
花奈「流れ星見れるといいね、シオン君」
シオン「唯一俺と歩いてくれるの花奈だけだぜ…」
華恋「ほら、もうすぐで山頂よ」
シオン「華恋…お前も歩いてくれるんだな…」
椿「ほらぁー!もう先行っちゃうわよー!」
シオン「もうお前だけ先行ってろ、椿…」
ーーーーーーーー
かえで「もう日が沈んだなー」
椿「全体的に見えるそうよ!」
花奈「見えるといいなぁ…」
華恋「はい、シオン水筒」
シオン「あ、あぁ、ありがとう…」
華恋の優しさに理性溶けそう…
思えば、お人好しばかりだな
俺以外の4人は元々友人同士で、椿が何故か俺に興味を持って話しかけられた。何とも理由が『寂しく推理小説読んでたから』だと。うるせぇやい
まぁ、初対面な俺は『そ、そうだな…』とかよく分からん返事をしてしまった。で、それを機に、かえで、花奈、華恋とも出会った
どいつもこいつも、お人好しだよ…
そんな俺を現実に戻す一筋の光
かえで「あっ!見えたー!」
椿「また見えたわよ!大規模な流星群と謳うだけあるわね!」
花奈「ほんとだぁ〜!きれいだね!」
華恋「えぇ、ほんと、来た甲斐があるわね」
シオン「ほんと…綺麗だ…」
こんな日を悪くないと思っている
それどころか、この夢のような日がずっと続いて欲しいと思う
いずれ、この一夏の思い出が消えてしまうと思うと切なくなる
シオン(そう思うと…儚いもんだな…)
そう…夢のように儚い日々は、本当に儚いものだった
椿「あら、一際大きいわね、あの流れ星!」
かえで「ほんとだ〜!」
一際大きいか…
『最後まで見るべきよ。山頂から動かずに』
山頂から動かずに…
『夜が更けてからが綺麗なのよ』
……夜が更けてから…綺麗…
花奈「中々消えないね、あの流れ星」
華恋「ほんとね、不思議」
シオン「流れ…星…?」
嘘をつけ。あんなの
隕石だろ
椿「あの…どうしたの?シオン」
かえで「何か思い出したのか?」
シオン「…っちに…てる…」
花奈「え?」
シオン「こっちに…向かってる…」
華恋「あれが?」
母さんの天文学者としての知識を持ってすれば
父さんの物理学者としての計算力があれば
隕石がここに落ちる事くらい予測出来たのでは…?
シオン「…まさか」
母の言葉の意味が分かった。分かってしまった
華恋「なんか人里が騒がしいわね」
あれは…
シオン「父さん!?母さん!?」
人が小さく見えるが、父さんがいつも来てる白衣はハッキリ見えたし、母の綺麗な甘栗色の長い髪が確かに目に写った
そして、その2人が船着場にある中型の船へと島民を必死に誘導している
椿「何が起こっているの!?」
かえで「分かんないけど…避難してるのか…あれ」
ここ最近父さんがいなかったのは船でも準備してたのだろうか
楽しみにしてたなんて嘘じゃないか
最後まで見ろなんて…俺らをここから動かしたくなかっただけじゃないか
ただ、綺麗である事を否定出来なかった。多分俺は捻くれてる、最低だ
でも、祭りの灯りが、紅く光る宇宙の石が
ひどく神秘的だった
花奈「早く行かなきゃ!!」
華恋「みんな行きましょ!」
『山頂から動かずに』
ふと母の声が頭をよぎる
シオン「ダメだ」
椿「何でよ!私達も手伝わなきゃ…」
シオン「間に合わないんだ」
椿「…え?」
父さんから聞いた話を思い出しながら、途切れ途切れに話す
シオン「隕石は…最低でも、秒速30kmはある……あの大きさとなると、かなり速い……推定秒速40kmほど…隕石が尾を引いて肉眼で見えるのは地球から640km…隕石があるところはここから5,000kmはある…見えたのは約6秒前…だから、地上まで…足して引いて…割って…約2分で落ちる…」
花奈「シ、シオンくん…?」
シオン「山頂から船着場まで高低差を考えても100km以上はある…秒速4mで走ったとしても着くのは5分後…」
かえで「お、お前……」
シオン「つまり…間に合わない」
そのセリフを、ため息混じりに、絶望を交えて放った
椿「じゃあどうすればっ…!」
シオン「ここから動くな」
椿「え?」
シオン「ここから…動いちゃダメだ…」
あの隕石が人里に落ちると予測した母は、被害が少ない山頂に留まらせるつもりだったんだ。真面目なのは気のせいなんかじゃなかった。裏があった
まるで、この4人の命を任せたとでも言ってるような…
きっとこれは罰なんだ。素っ気ない態度をとって、親を心配させた、罰だ
じゃなかったら
なんで両親の最期を見なきゃいけないんだ
華恋「シオン…泣いてるの…?」
シオン「ぇ…」
声が震えていた、言われるまで気づかなかった
泣いてる場合じゃないんだこの意気地なし
シオン「逃げよう、火口の中心に行こう、窪みにもなってるし被害は少ないと思う」
椿「で、でも…!」
シオン「言われたんだ。母さんに、動くなって」
最後の会話を思い出し、噛みしめるように
花奈「…分かった、行こう、みんな」
かえで「あ、あぁ…」
シオン「急げ、もう1分もない」
分かってくれたみたいだ、花奈には感謝しよう
俺も、早く……
『あれが織姫で、あれが彦星。間には天の川があって、2人は会えないの。でもその間には白鳥がいるの。はくちょう座。2人のために橋をかけてあげるの。何だかロマンチックじゃない?』
紅い光が近づく
頭に母の少女のような笑顔がよぎる
『物理はこの世の真理で、決して曲げられないもの。お前の心の中にも物理のように、曲げられない何かがあるかな?多分あるぞ、気づいてないだけで、お前は誰かを救える、立派な人間になる』
島民は避難出来たみたいだ。だが目には両親の姿が映る
頭に父の誇らしげな顔がよぎる
お礼を言っただろうか
まだ、言えてないんだ。話してない事もいっぱいあるんだ
だから、早く逃げてくれ。お願いだから
シオン「早くっ…!!!!逃げ…」
掠れた声で全力で叫んだ
ーー刹那、衝撃波と共に俺の声と両親の姿は消えた
ーーーーーーーー
「……ン!…シオン!!」
聞いたことある声が耳に刺さる
「おい!起きろシオン!!」
うるさい、声だ…
そうだ、あいつらは、無事かな
シオン「そうだ!あいつらは!」
かえで「うぉお!びっくりしたぁ!」
目に見たことあるポニーテールが映る
周りを見渡せば、ちゃんと4人いる
花奈「シオン君大丈夫!?」
華恋「あなたかなり吹っ飛んだわよ」
シオン「吹っ飛んだ?」
そうだ、衝撃波で…ちょっと頭痛いな…
衝撃波…
シオン「父さん…!母さん…!!」
椿「ちょっと、シオン!?」
全てを思い出した俺は坂を登る
火口平原の一番したに落ちたらしく山頂は遠かった
動けば全身痛いことに気づいた。だけどそんなこと言ってる場合じゃない
町は…どうなって…
シオン「!?……え…?」
直撃したであろう場所には穴があき、周辺は更地になっていた
衝撃は山頂のほど近くまで来たらしくそこら中の木が倒れていた
椿「ここまで、衝撃波が来てね、かなり飛ばされかけたわよ」
頭が真っ白になった。一瞬で消えたのだ。夢のような日々が
綺麗な灯りが灯っていた祭り会場だったところはあちらこちらで火柱が立っている。本当に儚かった
シオン「いかなきゃ…」
椿「…どこによ」
シオン「家に…」
停止している俺の脳内に、母の言葉が響いた。
最初で最後。両親の助けを求めてる。
ここまで見てくれてありがとう!
シオンが計算してるシーンもう頭ぐらぐらのめちゃくちゃかもしれませんがご了承くださいw
では、次回は『僕らの世界が消えた日について②』です!
見たってな!