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異世界召喚 魔法と剣の国エクスピア  作者: 武蔵野純平
王都包囲戦(1章)
9/75

ヒーローになる時 9話

 兵士の案内で会議室に着くと、もうみんな揃っていた。

 俺が席に着くと執事が話し始めた。


「では、始めます。みなさまにお話しした通り、明日早朝、我が軍は包囲している敵に攻勢をかけます。こちらをご覧ください」


 執事はテーブルの上を指した。

 テーブルの上には石がいくつかのっかっていた。


「ここが城門、内門ですね。堀の上に橋があってここが外門です。敵軍は外門の前に主力部隊3000人を配置しています。残り2000人で城をグルッと囲んでいます」


 みんな真剣な顔で聞いている。

 あっちゃんの表情がかなり硬い、頬がピクピクと動いている。

 ダイドウが口を開いた。


「戦力比は? 執事!」


「わが方3500。敵5000強、力の強い獣人も含まれています」


「こちらが不利だな!」


「数の上では不利でございます」


「うーむ」


 なんだ?

 まさかダイドウ、自分が大将って勘違いしてないか?

 やーまずいな、流れを変えよう。


「こちらが有利な点はないですか?」


「2点ございます、ソウマ様。高い城壁の上から攻撃出来る事と魔法使いです」


「高い城壁はわかりますが、魔法使いと言うのは?」


「南の国は、魔法使いが少ない地域です」


「では、こちらの方が魔法使いの数が多い訳ですか?」


「おそらく。それとこちらには、広範囲を攻撃出来る魔法フラッシュオーバーが使える上級魔法使いが3人おります」


「質でも上回ると?」


「はい、ソウマ様」


 急にダイドウが立ち上がった。


「よーし! 勝ったな!」


「……」

「……」

「……」


「し、執事さん、その辺はどうなんでしょう?」


「そ、そうでございますね。勝機は多いにあるかと」


「よし! 作戦を説明しろ!」


 もう、ダイドウはいいや。

 ほっとこう。


「流れはこうです。

 1 相手の魔法使いを魔力切れにする。

 2 敵兵を囮で引付け、挟み撃ちにする。

 3 騎馬隊で分断する

 4 フラッシュオーバーで殲滅する。

 以上です」


 簡単に言うな……。

 そんなにうまく行くのか?


「魔法使いは、ファイヤーボール隊、ファイヤー隊、フラッシュオーバー隊の3隊に分けます」


 あっちゃんが質問する。

 声が硬い。


「使える魔法で分ける感じですか?」


「はい。全員がフラッシュオーバーやファイヤーボールを使えるわけではございませんので」


「わかりました」


 執事は左右を見回して、質問がない事を確認してから話を進めた。


「まず第一段階。外門左右に展開する敵部隊に、城壁上から堀越えでファイヤーボールを撃ちます。このファイヤーボール隊にはアツシ様に入っていただきます」


 あっちゃんはファイヤーボール隊か、城壁の上なら安全とまではいかなくても、最前線ほど危険はないだろう。

 あっちゃんもその辺がわかったみたいで、少し落ち着いた表情になった。


「おそらく敵の魔法使いが魔法で防御するでしょう。敵に防御されても気にせずファイヤーボールを、撃ち続けてください。敵の魔法使いの魔力を防御で使い果たさせるのです」


 なるほど。

 この前、俺との組手で執事さんがやった様に、敵さんはこちらのファイヤーボールを水系の魔法で防御する訳だ。

 でも、あえて防御させて、あちらの魔法使いの魔力切れを狙うと。


「第二段階。内門を開いて、ファイヤー部隊が橋の上に出ます。外門は閉じたままです。この部隊は橋の上から、城門左右に展開する敵部隊に、ファイヤーで攻撃します。この部隊には、ダイドウ様、ヒロユキ様、イノグチ様に入っていただきます」


 井ノ口さんはファイヤーボールをマスター出来なかったのか。

 ここは敵との距離が近くなるから危険度が増す。


「ファイヤー部隊は囮です。敵は橋上にいる距離が近いファイヤー部隊に、弓隊で攻撃をするでしょう。獣人が飛び込んでくる可能性もあります」


 ダイドウとヒロユキは、真っ青な顔をしている。

 無理ないな。


「この部隊は危険度が高いですので、盾役にはベテランの兵士を配置しました。また攻撃力の高い精鋭歩兵を入れましたので、獣人が飛び込んで来たら、精鋭歩兵が対応します」


 ダイドウが珍しく気弱な声を出した。


「このファイヤー部隊はいらないんじゃないか?」


 執事が冷静に答える。


「城壁からの単純な攻撃では、敵は安全な距離をとって包囲を続けてしまいます。敵を引き付けるために橋上の囮が必要なのです」


 執事と目が合った井ノ口さんが、コクリとうなずいた。

 井ノ口さん気合が入ってる。


「そして挟み撃ち。橋の上にファイヤー部隊が出たら、城壁上のファイヤーボール隊は、外門左右の敵にファイヤーボールを打ち込み、ファイヤー部隊と挟み撃ちにします」


 なるほど、攻撃がクロスする様にするのか。

 敵は、正面からファイヤーボール、斜め前から橋からのファイヤー、両方の攻撃を受ける事になる。


「敵も橋上の囮を攻撃する為に、外門の左右に兵力を振り向けるでしょう。すると外門前の敵が薄くなります。そこで第三段階。外門を開けて、城内から騎馬を中心とした部隊が、外門の敵兵部隊の薄くなった中央に突撃して左右に分断します」


 なるほど。


「第四段階。左側の部隊は突撃部隊が背後に回り込み反包囲します。右の分断した敵部隊を、フラッシュオーバーで攻撃します。右が終われば左です。フラッシュオーバー部隊には、ソウマ様に入っていただきます」


 ここで俺か。

 分断された敵右部隊をフラッシュオーバーで面攻撃だな。


「ソウマ様はフラッシュオーバーを撃つまで力を貯めておいてください。フラッシュオーバーを撃つ時は、躊躇なく、最大範囲を最大火力でお願いします」


 躊躇なく、か。

 あっちゃんのファイヤーボール隊は牽制の意味合いが大きい。

 だから敵を殺さなくても、天幕を焼くとかでも効果がある。


 けど、俺のフラッシュオーバーは、決めの一手だから外せない。

 フラッシュオーバーが外れたら、外に出た突撃部隊や橋の上のファイヤー部隊が全滅しかねない。

 一撃必殺のつもりで、ほんとに躊躇なく、フラッシュオーバーを撃たなきゃならない。


「フラッシュオーバー隊は3人しかおりませんので、声を掛け合いながら延焼範囲が、かぶらない様にします。正面の敵は3000人、フラッシュオーバーを何発も撃つ必要があります」


 執事が目で問いかけてきた。


(出来ますか?)


 つまり、敵を殺せますか? と、目で聞いてきた。

 ブルッっと身震いした。

 俺はコクリとうなずいた。


「では、明日、異人のみなさまのご活躍を期待いたします」


 執事の言葉で、会議は終了した。


 その後、武器庫に向かい、革鎧など防具を受け取って、部屋に戻った。

 晩御飯の支度が出来ていた。


 晩御飯は、倍の量のステーキとパンと野菜スープだった。

 ワインもあったが、俺は飲む気になれなかった。


 三人ともなかなか話さない。

 あっちゃんが口を開いた。


「ソウマさん、フラッシュオーバーって、どんな魔法何ですか?」


「フラッシュオーバーは、面攻撃の火炎魔法だよ。一定の範囲に火炎を発生させて、敵を焼き殺す」


 俺は覚悟を決める為に、あえて、殺す、という言葉を使った。


「それってどの位の広さを燃やせるんですか?」


「今日の練習では10メートル四方は出来たよ。フルパワーならテニスコート1面分くらいはいけると思う」


 俺は少し話を盛って答えた。

 さすがにテニスコート1面はキツイと思う。

 けど、これを聞いて少しでも2人が安心してくれれば良い。


「そんなに広い範囲ですか!」


「うん、まあ、やれると思う」


「さすがヒーロー研究会ですね!」


「このタイミングでそれ言う?」


 俺とあっちゃんは、笑った。

 少し気持ちがほぐれた。

 井ノ口さんが、つぶやいた。


「明日は私がヒーローになるよ」


 俺とあっちゃんは、目を見合わせた。

 ちょっと心配だな。気合入り過ぎじゃ?


「井ノ口さん、ファイヤー部隊はリスク高そうだから、気を付けてください。俺とあっちゃんは、城壁の上だけど、井ノ口さんは敵に近い橋の上ですから」


 腹に響く様な声で、井ノ口さんが答えた。


「望むところだよ」


「マジで大丈夫ですか?」


「大丈夫。前にアツシ君には話したんだけどね。私は前の世界じゃ、あまり目立たない人間だったんだよ。けど、こっちの世界に来て変わった。期待されてるんだ!」


「……」


「明日活躍すれば、貴族とか、大臣とか、なれるかもしれない。お金も沢山もらえるだろうし、家族も新しく作れる。どうせもう戻れないんだ。精一杯やるよ」


「……そうですね。みんなでヒーローになりましょう」


「ああ、勝って若い嫁さんもらうよ」


 井ノ口さんのらしくない冗談に三人で笑った。


「今日は一人づつ風呂沸かしますよ。少し時間食ってもいいでしょ?」


 明日は初陣だ。

 新しい湯で身を清めたい。

 水を張るのに時間がかかるだろけど、それでも三人とも新しい湯に入れる様にしたい。


「ソウマ君いいの? 魔力使っちゃうでしょ?」


「大丈夫ですよ。寝たら回復しますよ」


「そっか、それじゃお言葉に甘えるとするよ」


「ソウマさんありがとうございます。僕もお言葉に甘えます」


「おう! 明日はあっちゃんが、攻撃の一発目だね」


「いやー、プレッシャーかけないでください」


「大丈夫、きっとうまく行きますよ。アツシ君、今日の練習でもうまく行ったじゃないですか」


 俺は風呂場に向かった。

2018/6/14 字下げ句点等を修正しました。

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