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異世界召喚 魔法と剣の国エクスピア  作者: 武蔵野純平
王都包囲戦(1章)
8/75

えっ?明日戦うんですか? 8話

主人公視点に戻ります。

 俺は訓練場の椅子に座って休んでいる。

 水を飲みながら、真っ黒に焼け焦げた地面を眺めている。


 今日はこの世界に来て3日目だが、なにか今日は雰囲気が違う。


 今朝は昨日と同じ様に起き、同じ様に朝食を食べ、同じ様に兵士に案内をされて訓練場に来た。

 昨日と同じ様にあっちゃん達とは別メニューだ。


 執事が落ち着かない様子で、今日マスターして欲しい魔法を見せるので、後は一人で訓練して欲しい、と告げて来た。

 さくっと魔法を見せてどこかへ行ってしまった。


 新魔法はフラッシュオーバー、火炎系の上級魔法だそうだ。

 広い範囲に火炎を発生させて、一定範囲の敵を焼き殺す魔法だ。


 新魔法フラッシュオーバーの練習をしては、休んでを繰り返しているとお昼になった。

 昼食は兵士がサンドイッチを運んできてくれたので、訓練場で済ませた。


 適当に休んで午後も新魔法フラッシュオーバーの練習をして、そして今また小休止している。

 執事が全然顔を出さないのもおかしいし、ギャラリーもほとんどいない。


 新魔法フラッシュオーバーは問題なく使える様になった。


 最初は足ふきマット位の広さから初めて、だんだん燃焼範囲を広げていった。

 次に遠い位置を燃焼させ、そして遠い位置で広い範囲を燃焼できる様になった。


 問題としては、フラッシュオーバーは魔力を結構使うみたいで、数回この魔法を使うと軽い疲労を感じてしまう。

 なので、今日は魔力切れに気を付けながら、ちょこちょこ休みながら練習をしていた。


「ソウマ様、いかがですか?」


 やっと執事がやってきた。

 大きい盾を持った兵士を連れている。


「新魔法の方はバッチリですよ」


「それは何よりです!」


 なんか執事の声が硬い。何かあったのだろうか?


「ただ、フラッシュオーバーは魔力を沢山使うみたいで、疲れやすいですね。休み休み練習してました」


 執事はフムフムとうなずいた。


「ソウマ様、この者はクロードと申します。明日の戦いでソウマ様の盾役を務めます」


 えっ!? 明日の戦い?


「明日戦うんですか? 城外の包囲している敵と ?南の国と?」


「そうです」


「どうしたんですか? 急ですね」


「はい。急遽戦う事となりました」


 ちょっと混乱した。


「食料がなくなったのですか?」


「いえ、食料はまだあります」


「では、援軍が着いたとか?」


「……」


「援軍が来たんですね?」


「そこは、なんとも……」


 ん? どういう事なんだ?

 執事は話しづらそうな顔をしている。


「執事さん、明日は命がけで俺も戦う事になりますよね。ですから、可能な範囲で構わないので、事情を教えていただけませんか?」


「わかりました。他の方には、話さないでください。ソウマ様、こちらへ」


 執事と少し歩いて、兵士クロードから離れた。


「実は一万の軍勢が近くにおります」


「一万! あ! 北東に騎馬団討伐へ向かった軍が引き返して来たんですね」


「そうです。ここから一日の距離にいます」


「良かったじゃないですか! これで城の内外から挟み撃ち出来ますね」


 執事が眉根を寄せた。


「ところが、その一万の遠征軍が動かないのです」


「?」


「野営をして動く気配がないのです」


 なんでだ?

 城外の包囲軍は、5000人。

 こちらは一万人の遠征軍と3500人の城内兵。

 挟み撃ちにすれば、勝てそうなもんだ。

 倍以上の兵力差があるのだし。


「実は遠征軍総指揮官のナバール卿が問題なのです」


「というと?」


「今、エクスピア王国では、国王派とナバール卿派で対立がございます」


「でも、王都がピンチの今は、派閥争いは関係ないですよね?」


「いえ。今回の状況もナバール卿の仕掛けと考えれば合点がいきます。ナバール卿は南の国と奴隷貿易を行っていて強い影響力を持っています」


「すると、ナバール卿がそそのかして南の国の軍が攻めてきたと?」


「それどころか、手引をしたのでしょう」


 執事はとんでもない事を言い出した。

 それって裏切り行為だよね?

 俺が絶句していると、執事が話を続けた。


「南の国から王都まで、どんなに急いでも半月かかります。その間、王都に危急を告げる知らせがなかったのが不自然です。しかし、西海岸を抑えているナバール卿が、海路を使って、西海岸から包囲軍を移動させ王都まで誘導したなら……」


「なるほど、誰にも気が付かれずに王都を奇襲できますね」


「はい。ナバール卿の狙いは、王都を南の国に奇襲させて、国王陛下を亡き者にするつもりだったのでしょう」


 ひどいな、ナバール卿。

 派閥争いでそこまでやるんだ。


 執事は、ため息をついた。


「幸い早くに城門を閉めましたので、それは防げました」


「しかし、ナバール卿は、本当に……、その有罪と言うか、間違いないのですか?」


「間違いないでしょう。だいたい北東地域に向かった遠征軍が、こうも早く引き返して来たのも不自然過ぎます」


 そうか、状況証拠だけではあるけれど、クロって事で間違いないか……。


「ナバール卿としては、次は南の国と一緒に王都を攻撃して、正面から国王陛下を殺害するつもりでしょう」


「それはさすがに無理じゃないですか? 遠征軍には国王派の人もいるのでしょう?」


「います。が、このまま王都と南の国がにらみ合いをしている間に、調略されてしまうかもしれません」


 調略って、あれだ。

 戦国時代に秀吉とか信長とかがやった、敵方を寝返らせるやつだな。

 金とかで国王派からナバール卿派に鞍替え、って訳だ。


「時間が経てば経つほど、危険度が増す訳ですね……」


「左様でございます」


 確かにな。

 そこまでいかなくても、南の国に王都を落させて、ナバール卿が王都を奪還してヒーローになる。なんて筋書きもありそうだよな。


 どっちにしろ、俺は殺されてしまうわけか。


「ナバール卿は国王陛下に、敬愛の情とか、愛着とか、そういう気持ちはないんですかね?」


 執事が、またため息をつきながら答えた。


「国王陛下は、元々王位継承順位6位だったのです」


「6位? 継承順位低いですよね? 1位から5位の人はどうしたんですか?」


「お亡くなりになられました」


「それってまさか……」


「病死や戦死ですが、不信な点は多々あります」


「暗殺!? そこまでやりますか!」


「はい。なにせ王位継承権7位の姫がナバール卿の甥の婚約者でしたから」


 あー、なるほど。

 その姫様が王位を継げば、自分の甥が女王様の旦那さん。

 そしてその子、ナバール家の血を引く子供が王様になり、ナバール王朝の誕生ってわけだ。

 あれ? しかし?


「6位だった国王陛下は良くご無事でしたね」


「暗殺者は全て私が始末いたしました」


 執事怖い。

 さすが。


「そうか、執事さんは、国王陛下の執事さんだったんですね」


「はい、陛下がご幼少の頃からおそばに仕えさせていただいております。王宮には侍従がおりますので、身の回りのお世話は侍従がしておりまが、今も陛下のご命令でお仕事をさせていただいております」


 なるほどな。

 そういう事情があったんだ。

 今の国王陛下はナバール卿の一族のライバルだったわけね。


「そういった事情がありましたので、ナバール卿を遠征軍の指揮官にして外へ出し、王都に国王陛下が残る体制にしたのですが……。どうやら、裏目に出ました」


 うーん。裏目か。

 何か逆転の可能性はないのかな?

 正面から戦うのでなく、なにか謀略的な……。


「あ! そうだ! そのナバール卿の甥の婚約者、継承権7位の姫様を人質にするってのはどうですか?」


「その策はとれません」


「あー、まー、ダメですよね。王族の、それも女性を人質にするなんて」


「いえ、そうではありません。その姫様は昨年お亡くなりになりました」


「それ……、まさか執事さんが?」


「いえ、違います。さすがに王族に手をかけることは出来ません。ナバール卿の甥のロングビル子爵は素行に問題のある方で、姫様はそれを苦に自殺をなさいました」


「素行ですか?」


「まあ、ちょっと……、口にするのをはばかる様な事です」


「ああ、わかりました」


 どうせ女癖が悪いとか、そんな事だろう。

 戦う他に手はないのか……。


「そうすると、自力で城外の包囲軍を打ち破り、遠征軍全てがナバール卿に調略される前に、遠征軍を王都に迎え入れる……。という事ですか?」


「左様でございます」


「……わかりました。やりましょう!」


 まあ、どうせ戦わなければならない訳だし。

 このまま籠城していたら、どうなるにせよ生き残る確率は低そうだ。

 それなら国王さんに協力して事態を打開するしかない。


「そこで、今日の残りの時間は、盾役のクロードと実戦での動きの確認をして下さい。その後、異人の皆様に明日の戦いでの配置や作戦のご説明をいたします」


 執事は、クロードを呼んで、早足でどこかへ行った

 準備で忙しいんだろう。


 俺はクロードと打ち合わせた。

 クロードはがっしりした体格の男で、実戦経験があって、頼りになりそうだ。


 昨日の俺と執事さんの組手も見ていて、俺の事を気に入ってくれたらしい。

 体を張って守ると約束してくれた。

 頼もしい。


「城外の敵への遠距離攻撃ですから、シンプルな連携で行きましょう」


 なるほど、時間もないしクロードの言う通りで良いだろう。


 クロードがしゃがんで大盾を持って踏ん張る。

 俺はその後ろに隠れて、ひょいと体を出しては魔法を撃つ。

 撃ったら大盾とクロードの後ろに隠れる。


 何回か繰り返していると兵士が呼びに来た。


「軍議が始まります!」

2018/6/14 字下げ句点等を修正しました。

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