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異世界召喚 魔法と剣の国エクスピア  作者: 武蔵野純平
北部遠征(第四章)
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コボルド討伐(58話)

「アルフレッド、幹部を集めろ。作戦を説明する」


 颯真そうまはアルフレッドに命じると川の中州に目を移し、新開発の魔法を発動した。


 ダン!

 ダン!

 ダン!

 ダン!

 ダン!


 と鈍い音が辺りに響いた。

 川の中州に気絶して横たわる子供たちを、すっぽり覆う様に、灰色の四角い箱が現れた。


 川の中州に突然現れた箱型の建築物に、みな驚いている。

 あつしが灰色の箱の正体に気が付いた。


颯真そうまさん、あれ……、コンクリートじゃないですか?」


「さすが、あっちゃん! 正解です!」


「あきれた! どうやったんですか?」


「コンクリートになあれ! って感じで魔力を成形するんだよ」


「なあれって……、出来ませんよ!」


 颯真そうまは王都の軍の演習場で魔法の自習をした時に様々な新魔法を試していた。

 前の世界の知識をもとにした魔法、単なる思い付き魔法、イチロー・タナカのノートに書いてあった魔法、そして自分の願望を魔法で再現しようとした。


 最初はケーキ、チョコレート、コーヒーといった前の世界の食料品を再現しようとした。

 しかし、ケーキは白い何だかよくわからないオブジェクト、チョコレートは茶色い板、コーヒーにいたっては、毒薬としか思えない危険な香りのする飲み物に、魔法で生成してしまった。

 そもそも、安全性が怪しかったので、口に入れる事はしなかった。


 魔法はイメージを現実化するらしい、しかし、どうやら細部までは現実化できない。

 颯真そうまはその事がこの食料品再現実験で分かった。


 そこで颯真そうまはもっと大雑把なイメージで再現出来て便利そうな、使い道がありそうな前の世界の物を考えた。

 電化製品や自動車の様な精密な機械はダメ、そこで思いついたのがコンクリートだ。


 コンクリートの成分は知らないが、イメージすること自体は簡単だった。

 颯真そうまは何度かの練習の後、自分の魔力をコンクリート化する事に成功した。


 金やダイヤモンドも試してみたがダメだった。

 颯真そうまは、前の世界で金やダイヤモンドを手に取った事がなかったので、イメージが作れなかったのだ。


「それでは作戦を説明する」


 集合した遠征団の幹部とシモン男爵に颯真そうまは作戦を説明した。

 ルル・ヴェルジー郊外のコボルド掃討作戦が開始された。


 **********


「川岸の兵は下がれ! 岸から下がれ! 魔法が発動するぞ!」


 川岸に設置された柵を守るシモン男爵の兵士たちが、颯真そうま達のいる川を見晴らす高い位置まで後退した。

 執事が魔法使いラーソン、あつしに合図した。


「水魔法開始」


 子供達をコンクリートで覆った箱の周りで、水魔法のウォーターウォールが発動した。

 水の壁に囲まれたコンクリートの箱が水に濡れている。


 コボルドの集団は、水魔法に驚いていたが、自分達に害がない事にすぐ気が付き颯真そうま達に威嚇の声を上げだした。

 颯真そうまはそんなコボルド達を川べりの高い位置から見下ろしていた。


 颯真そうまの警備についたクロード隊は、三十Mほど離れた位置で待機をしている。

 広範囲の火炎魔法を使う為、颯真そうまは魔力をコントロールする為を意識を集中した。


 王都の演習場で行った実験を思い出しながら、頭上に大きな火球を形成した。

 颯真そうまの作った火球は火と言うよりもドロドロのマグマので、オレンジ色の火球の中がドロドロと動いている様に見えた。


 颯真そうまが右手を振ると、火球は川の上流の方へ、コボルドの集団がいるのとは違う方角に飛んで行った。

 颯真そうまの様子を見ていたクロードは、颯真そうまが魔法のコントロールに失敗したのかと心配をした。


 クロードの心配はすぐに打ち消された。

 上流の方に消えた火球は、すぐに戻って来た。


「うお!」


 川沿いを二十Mほどの高さで、大型の火球が高速で飛んでくる様子を見た兵士が声を上げた。

 コボルドの集団を見ていた者も兵士の声と、迫りくる火球の音に気が付き川の上流を見た。


 水魔法ウォーターウォールを発動していた執事達も、呆気あっけにとられた。

 打ち合わせで新型の火炎魔法を使うと聞いていたが、これからあの高速で飛ぶ巨大な火球がどうなるのか? それは執事達の想像の範囲を超えていた。


 バン!!


 火球はコボルド集団の手前に来ると分裂した。

 無数の小さな火球に分かれ、高速でコボルド集団の頭上に降り注いだ。


 バウ! バウ! バウ!  バウ! バウ!


 火球が高さ一mの所で爆発を起こした。


 コボルド集団のいた川の中州は火球の爆発に飲み込まれ焼け死ぬコボルド、自分の体についた火を消そうと川に飛び込むコボルドで大混乱になった。

 無傷のコボルドは一匹もいなかった。


 颯真そうまが放った火炎魔法はナパーム爆弾のイメージで開発した新魔法だった。

 飛翔する大型の火球が分裂し広い範囲を爆撃、延焼させる。


 普通の火球と違ってドロッとした火球は、分裂した後の爆発、延焼を起こさせるための形態だ。

 普通の火球だと分裂も爆発も起きなかったが、このドロッとした火球に変える事で新魔法が実現した。


 ヘルファイヤに比べると魔力の消費量が少なくて済む。

 魔力のコントロールも分裂して爆発させれば良いだけなので、多数のファイヤボールをコントロールするよりも楽であった。


 実戦での威力もなかなかで、コボルドは十数匹残っているだけになっていた。

 作戦の第二段階に移った。


 ズン!

 ズン!

 ズン!

 ズン!

 ズン!


 颯真そうまは魔法を発動して、コンクリートの柱を川岸から中州にかけて等間隔に出現させた。

 ファビオ隊、ガストン隊、ニコラ隊、ボリス隊が、颯真そうまが魔法で作ったコンクリートの柱に次々と板をかけて臨時の橋を作った。


 片手に盾、片手にククリナイフを装備したシュレを先頭に、シュレ隊が最初に中州に立った。

 生き残ったコボルドがシュレ達に襲い掛かるが、シュレは盾でコボルドをかち上げて臨時の橋から中州へ上陸する為のスペースを作った。


 臨時の橋からは、リナ隊、かえで隊、ロザリーが続いて中州に上陸した。

 ロザリーがコボルドと戦闘しながら、上陸部隊の指揮をとった。


かえで隊は上流へコボルドを押し込め! シュレ隊は下流に! リナ隊は遊撃!」


 戦闘スペースを確保する為に、臨時の橋に板を渡した遠征団の兵士達は川岸で待機している。

 リナ達を冷やかして大乱闘事件を起こしたボリス隊もリナ達上陸隊の戦闘を見ていた。


「何だあいつら……」

「獣人てあんなに強いのか?」

「東の武士団のおねーちゃん方もやるな……」


 リナ隊、かえで隊、シュレ隊は、生き残ったコボルドを瞬殺した。

 リナ達の戦いぶりを見て、ボリス隊の面々は、彼女たちを冷やかすのはあの世へ直結しかねない行為だと深く理解した。


 中州のコボルドは、一匹残らず掃討された。

 颯真そうま達は中州から対岸まで、同じ要領で臨時の橋をかけ、ファビオ隊、ガストン隊、ニコラ隊、ボリス隊の四隊が対岸の偵察に向かった。


 アルフレッドがコンクリートの箱の天井を外し、中の子供たちを外に抱え出した。

 水魔法で冷却していた為、箱の中の子供達は無事だった。


 ルル・ヴェルジー郊外のコボルド掃討作戦は成功に終わった。

 もう、一刻程で日が暮れる。


 傾いた日を眺めながら、颯真そうまは色々と考え事をしていた。

 実戦投入した新魔法は上々の仕上がりだった。


 魔力の消費を押させて広範囲を攻撃する事が出来た。

 もっと大規模の戦場で何発も連続して打つことが出来る事は、今後の戦術の幅を広げる事になるので、大きなプラス材料だった。


 一方で、ワイバーンに対して火炎魔法の効果が薄かったことはマイナス材料だ。

 あのワイバーンの上に乗っていたのは、バートリー子爵に違いない。今度、どう対策をするか? 颯真そうまは突き付けられた宿題に頭を悩ませた。


 だが、川岸をこちらに向かって歩いてくる仲間達を見て、彼らとなら乗り切れるだろうと考えた。

 そこには子供達と手をつないで歩くかえで、リナ達。

 子供を肩車するアルフレッドらが見えた。

東京は雪が降って大変でした。

皆様もお気をつけて。

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