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異世界召喚 魔法と剣の国エクスピア  作者: 武蔵野純平
北部遠征(第四章)
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ルル・ヴェルジー到着(56話)

今回は短めです。場面が変わるので一回切りました。


「おお! 颯真そうま伯爵! お待ちしておりましたぞ!」


 颯真そうま達北部派遣団は、ルル・ヴェルジーの街に昼頃到着した。

 宿屋に入って程なく、シモン男爵が颯真そうまを訪ねて来た。


 シモン男爵は人の好さそうな笑顔の中年男性だった。

 いかにも育ちの良さそうな裏のなさそうな笑顔に颯真そうまはホッとした。


 シモン男爵は、あつしや執事、かえでやリナともフランクに言葉を交わしていた。

 家令のアルフレッドが、そっと颯真そうまの耳元でシモン男爵の情報を教えてくれた。


あるじと最初に飲んだ逸品のワインを下さったのがシモン男爵だ。シモン男爵は、ヴェルジー家の一門でルル・ヴェルジーの街周辺が領地だ。この辺りはブルグンド地方と言ってワイン醸造が盛んで潤っているぞ。ワインのお礼をあるじから頼む」


 颯真そうまはアルフレッドの記憶力と情報力に感謝した。

 自分だけだったら、あれだけ大量の贈答品を誰に貰ったか思い出すことは出来なかっただろう。アルフレッドが酒を多く飲むくらいは大目に見ようと颯真そうまは思った。


「シモン男爵、ワインをありがとうございました。とても素晴らしワインでした!」


「おお! お口にあった様で何よりです! あれは我が家の秘蔵のワインでしてな。颯真そうま伯爵の活躍を聞き、ぜひ差し上げたいと思ったのです」


 ワインの事を褒められてシモン男爵は喜んだ。

 シモン男爵が属するヴェルジー家は、エクスピア王国でも最古の貴族だが、シモン男爵自身は王都でそれほど顔が売れていなかった。

 そんな自分の贈ったワインの事を、颯真そうまが覚えていてくれた事がとても嬉しかったのだ。


 一方の颯真そうまは、あれだけ高級なワインを贈ってもらったのだから、お返しに働かなくては。

 アルフレッドを雇えた一因にあのワインもあるだろう、と考えていた。


「早速ですがシモン男爵、状況の確認をしたいのでご説明をお願いします」


 颯真そうまは兵士長クロードと各隊の隊長、執事、かえで、リナ、シュレ、ロザリー、アルフレッド、魔法使いのクリスチーナ、そしてあつしを呼び寄せた。

 全員が宿屋の大きな部屋に集まった所で、状況説明をシモン男爵が始めた。


「このルル・ヴェルジーの街から一刻いっこくほど西へ行ったところに、大きな川があります。その川の中州にコボルドが集落を作り周辺の子供をさらっています」


 颯真そうまは子供がさらわれた事が気になったが、まずは魔物の戦力確認を優先した。


「コボルドの数は?」


「およそ百程度が確認されています」


「コボルドの強さはわかりますか?」


「兵士三人で一体を倒せるかどうか……。と言ったところです」


 颯真そうまはコボルドを見た事がないので、どのくらい強いのか感覚的に理解が出来なかった。

 兵士長のクロードがつぶやいた。


「すると、兵士三百人程度の戦力か……」


 ボリスがクロードの言葉に反応した。

 ボリスはいかにも荒くれ者の頭領と言った風体の男だったが、慎重な意見を述べた。


「いや、四百人と見込んだ方が良い。コボルドの集団の中には、ハウンド・コボルドやブル・コボルドがいる場合がある。コボルドの上位種だ」


 颯真そうまはボリスに話を続ける様に促した。

 ボリスは自分の経験を語った。


「俺は東の方で三十体程のコボルドの集団を相手どった事がある。その時は、ハウンド・コボルドが二体、ブル・コボルドが一体混じってた」


 クロードがボリスに、上位種の強さの確認を始めた。


「強さはどれくらいだ?」


「ハウンド・コボルドは動きが速い。強さはコボルドと変わらんが、とにかく早い。周りから盾で囲い込んで始末したが、時間がかかった」


「ブル・コボルドは?」


「こつは力が強い。バトルアックスで盾なんて叩き割るんだ。兵士じゃ歯が立たないので、魔法使い三人がかりでファイヤーで焼き殺した」


 エルフで魔法使いのクリスチーナが話に入って来た。


「コボルドは魔物の中じゃ弱い方だと聞くわよ」


「そりゃエルフの方は魔法があるから良いですけどね。俺達の様に魔力も闘気もない人間にはシンドイ相手ですよ」


「それにしても北部でコボルドって珍しいんじゃない? 私はエクスピア北西のヘイ族のエルフの里出身だけど、コボルドは見た事がないわ」


 シモン男爵がクリスチーナに答えた。


「私も初めての事です。我がヴェルジー家一門は北部に領地を多く持っていますが、コボルドの発生は記憶がありません」


 颯真そうまは、バートリー子爵の事を思い出していた。バートリー子爵は魔物を飼っていると言う。

 バートリー子爵が、シモン男爵の領地にコボルドを放って、それが増殖したのではないかと考えた。


 黙って聞いていたあつしが、心配そうにシモン男爵に聞いた。


「シモン男爵。コボルドが子供をさらうと先程おっしゃいましたが、子供たちは無事なのでしょうか?」


あつし子爵。それはわかりません。川の中州の集落に子供達は運ばれ、小屋に入れられている様ですが……」


「生死は不明なんですね?」


「その通りです」


「さらわれた子供の数は?」


「五人です。家族から泣きつかれまして……。私も困っております」


「ボリス隊長、コボルドが子供をさらう理由を知ってますか?」


あつし子爵様。私も理由は知りません。ただ、子供は無事かもしれませんぜ。東の方でコボルドと戦った時は、子供は無事でした」


「それは良い情報ですね。颯真そうまさん、現場を見に行きませんか?」


「そうだな。夕方までまだ時間があるし、現場の川に行こう。シモン男爵、どなたか案内人を付けて下さい」


「いやいや、それなら私も行きましょう」


 颯真そうま達は、コボルドの集落がある川に向かう事にした。

※1 一刻:2時間としました。調べてみたいのですが、「一刻は三十分」との記載もネット上にあります。私は一刻は2時間と習った記憶があったので、一刻は2時間と設定しています。


※2 コボル「ド」と記載しています。コボル「ト」よりも、コボル「ド」の方が、私は耳慣れていたので、コボル「ド」記載にしました。

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