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異世界召喚 魔法と剣の国エクスピア  作者: 武蔵野純平
北部遠征(第四章)
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颯真の結婚(53話)

連載開始から一か月経ちました。

1時間ぼうずの私ですが、続きました。

皆様の応援のおかげです。これからもよろしくお願いいたします。

「これは素敵ですね!」

「リナはこれが好き!」


 かえでとリナは、エルフのトーベが出した指輪を見ていた。

 颯真そうまかえでとリナに、指輪を見てくれ、としか伝えなかった。


「そちらのお嬢さんが選んだのは、水龍の涙だね」


 かえでが選んだ水色の宝石の入った銀色の指輪を指してトーベがかえでに説明を始めた。

 水色の宝石は透明度が高く、清流の様な清らかさを見る者に与えた。銀色の指輪部分には、呪文が彫り込んであった。


「お嬢さんはひがし武士団ぶしだんだったね? 水龍が住み着いてる湖は知ってるかい?」


「はい。私の家から離れていましたが、話は聞いた事があります」


「この宝石は、その水龍の涙なんだよ」


「へー! そんな宝石があるとは知りませんでした」


 かえでは水龍の涙の指輪を両手でそっと持ち上げ宝石を眺めた。


「なんでもね。水龍が住み着いた湖のそばの民が、毎年酒を備えるらしいんだ。その時に、水龍が備えた酒のお返しに水龍の涙をくれるらしいよ」


「なるほど、貴重な宝石なんですね」


「そうさね。毎年一定数出回るけど、それでも貴重だね。その指輪はミスリルだから魔力を帯びている。水龍の涙とミスリルが反応する様に出来ているよ」


「どんな効果があるんですか?」


「指輪をはめた人に水龍の加護を与える。炎の魔法にレジスト、つまり火炎系の魔法が効きずらくなる。それと、あんたの剣が、水龍の剣みたいに水をまとう様になるよ」


「すごいですね!」


「ま、あくまで、水龍の剣その物ではないけど、使い手の力次第で相当威力が出るよ」


「ねえ! この赤いのはぁ?」


 リナが身を乗り出して、トーベに自分の選んだ指輪について聞きだした。

 リナは赤い宝石の入った金色の指輪を持っていた。

 赤い宝石は、鮮やかな赤色で炎の様な光りを帯びていた。金色の指輪には、水龍の涙の指輪と同じように呪文が彫り込まれていた。


「これは、イフリートの口づけ、と言う宝石だよ」


「イフリートぉ?」


「炎の精霊さ。あたしの故郷でとれる宝石でね。昔イフリートか大地に口づけをして、その宝石が出来たと言われてるよ」


「すごぉーい!」


「その指輪の芯はミスリルだよ。周りを金で囲ってあるけど、ちゃんとミスリルと宝石が反応するよ」


「どうなるのぉ?」


「イフリートの加護を受けて、力が上がる。剣に炎をまとった攻撃が出来る様になるよ。ただし、鉄剣や銅剣は溶けてしまうからね。はがねの剣以上にしておきな」


「すごぉーい!」


 颯真そうまは、二人に水龍の涙とイフリートの口づけの指輪を買う事にした。

 二人を店の外に出してから、指輪の値段をトーベに聞いた。


「トーベさん。それで、この指輪は二つでいくら?」


「金貨二十枚だね」


「た、高いね……」


「そりゃ物が物だからね。何と言っても宝石が希少だからね。マジックアイテムとしての効果も高いしね」


「確かに……」


「結婚する記念に贈るんだろう? ならケチっちゃいけないよ」


 颯真そうまはトーベの口車に乗せられている気もしたが、確かに結婚の記念にケチるのは余りにもセコイ気がした。トーベに相談にのって貰ったのを思い出し、トーベへの感謝の気持ちを込めて金貨二十枚で二つの指輪を購入する事にした。


「水龍の涙にイフリートの口づけ……、うん、宝石の名前もロマンティックな感じだし、結婚指輪はこれで良いな」


 颯真そうまは二つの指輪を受け取ると機嫌よくトーベの店を出た。

 そして、かえでとリナを連れて城の高いテラスに来た。テラスからは王都の街並みが、美しく見えた。

 颯真そうまは、なるたけ良い場所で二人に求婚しようと思ったが、王都をあまり知らないので、見晴らしの良いこの場所を選んだ。


 護衛の兵士は遠ざけて、三人だけになった。


「二人に大切な話があります」


「ご主人様、何でしょうか?」

「なぁに?」


「俺と結婚して下さい」


 かえでとリナは驚いた。

 かえでもリナも平民の家の出であり、さらにエクスピア王国民ではない。

 颯真そうまはエクスピア王国では英雄であり、貴族に列せられた。


 颯真そうまの事は二人とも好きだったが、二人がどうこう出来る様な立ち場の男ではなかった。

 だから颯真そうまから結婚の申し込みが来るとは、二人は思っていなかった。


 かえでは嬉しさと同時に不安を感じた。

 自分と颯真そうまとでは身分が違い過ぎるし、貴族の令嬢の様な振る舞いは自分は出来ない。

 今の様に従者として颯真そうまを支える方が良いのではないかとも考えた。一方で颯真そうまと一緒になれるなら、それは素晴らしい、幸せな事だと思えた。


 リナは素直に嬉しかった。

 颯真そうまとこれからずっと一緒に暮らしていけると思った。

 リナは颯真そうまが自分を選んだ理由を聞いてみたかった。


「どうして?」


 リナは颯真そうまの目を真っ直ぐ見て、今までにない真剣な表情で颯真そうまに聞いた。

 颯真そうまはリナの目をみて答えた。


「二人の事が好きで、二人とずっと一緒にいたいから」


 リナは颯真そうまの答えに満足した。自分が好きになった男が、自分を好きでいてくれた。

 リナは尻尾をゆらゆらとたのに揺らした。


 颯真そうまかえでの表情を見て、かえでが不安がっている事がわかった。

 颯真そうまは二人の手を握った。


かえでもリナもありがとう。違う世界から来た俺を支えて守ってくれた。俺は二人といて楽しかったし幸せだと思った。これからも二人と一緒にいたい。二人と幸せに楽しく過ごしたいんだ」


 かえでとリナは颯真そうまの手を握り返した。

 颯真そうまはリナでも分かる様に、なるたけシンプルに自分の気持ちや自分の置かれた状況を伝えようとした。


「だけど、俺は貴族になっちゃっただろ? そうすると今までみたいに二人と仲良くしちゃいけないらしいんだ。でも、結婚すればずっと一緒にいられる」


 颯真そうまは少しバツが悪そうに二人に続けて話した。


「あの……、本妻は貴族じゃないとダメらしいので、側室になるのだけれど、結婚してください」


 かえでが顔を赤くして颯真そうまに聞いた。


「ご主人様は……、私でよろしいのでしょうか?」


 颯真そうまはきっぱりと答えた。


かえでが良いし、リナが良い。二人と離れたくない。ずっと一緒にいてくれ」


「わかりました。お受けいたします。よろしくお願いします……」

「わたしもぉ~。颯真そうまぁと結婚するぅ~!」


 かえで颯真そうまの優しさが嬉しかった。

 颯真そうまはエクスピア王国で貴族で銀騎士で、かえで達の意思など気にせず命令出来る立場にあった。しかし、颯真そうまはきちんと求婚をしてくれた。

 従者でなく、一人の女として扱ってくれた事、自分を好いてくれた事が嬉しかった。

 側室とは言え、自分が颯真そうまの夫人が務まるとは思えなかったが、颯真そうまと一緒にいたいと思う気持ちの方が強かった。


 颯真そうまは、ホッとした。

 断られることはないだろうとは思っていたが、それでも緊張をしていた。


「ありがとう。それで、俺の国では結婚すると男は女に指輪を贈るんだ。かえでから良いかな?」


 颯真そうまは水龍の涙の指輪を取り出した。かえでの左手を取ると、指輪を薬指に通した。

 続いてリナの左手を取ると、イフリートの口づけの指輪を薬指に通した。


 二人は左手を上げ、マジマジと指輪を眺めた。

 やがて、リナがつぶやいた。


「いいのぉ? 貰って?」


「ああ、二人に貰ってほしいんだ。結婚の記念だから」


「ありがとう!」


 リナは颯真そうまに抱き着いた。

 かえで颯真そうまの手を、そっと握った。


「ありがとうございます。ご主人様」


 颯真そうまかえでに優しく微笑みながら告げた。


かえで、もう夫婦なんだから、颯真そうまで良いよ」


「はい、颯真そうま様」


「様はいらないよ」


「……颯真そうま


 三人はしばらくエクスピア王都を見下ろすテラスで幸せな時間を過ごした。


 *****


 三人は颯真そうまの執務室に戻った。

 颯真そうまは執務室の家令かれいアルフレッドと文官達に話した。


「えー、俺はかえでとリナと結婚しました。側室に二人を迎えましたので、よろしく」


 執務室で拍手が起きた。

 アルフレッドが手を叩きながら、嬉しそうに話し出した。


「うむ。めでたいのである! 主よ。これから毎日夫人に剣の稽古をつけてもらうのだ!」


「えっ?」


「主は魔法は王国一だが、剣の腕はまだまだと聞くぞ。先日の襲撃事件では両腕を切り落とされたと言うではないか」


「えーと、はい……」


「で、あればだ! 強い夫人二人がおるのだから、毎日稽古をつけてもらえ。夫人も従者でなくなったのだから、遠慮なく主を打ちのめす事が出来よう」


「の、脳筋かよ! なぜそうなる?」


「ん? 脳筋とはなんだ?」


「頭の中が筋肉で出来ているって意味だよ!」


「おお! 誉め言葉だな! かえで、リナ、主をしっかりと鍛えるのだぞ! 俺も時々顔を出してもんでやろう」


「はい!」

「はい!」


「……なぜだ」


 それから颯真そうまは毎朝夫人二人に稽古をつけて貰うのが日課となった。

 時にアルフレッドも混じり、壮絶な朝の日課になった。


※イーフリートか、イフリートか悩みましたが、wikiに従ってイフリートと記載しました。

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