旅立つヴェラとロングビルのまぐわい(第31話)
ナバール卿を見送ったロングビル子爵は、もう一人を見送る為に屋敷の裏へ向かった。
ちょうど獣人虎族の女戦士ヴェラが馬を引き、出発するところだった。
もう夜になるがヴェラには、問題にならない。
ある程度の夜目がきく上、誰かに襲われてもヴェラであれば楽に撃退できる。
それに、王都から虎族が、目立たず離れるには夜が良い。
「ヴェラ、頼むぞ。」
ロングビルは、淡々とヴェラに告げた。
「これを港で、お前の家の者に渡すんだな?。」
ヴェラは、ロングビルから預かった指示書を胸元から出して見せた。
「そうだ。船や陸路の手配はその者達が行う。遠回りになるが、我慢してくれ。」
ヴェラはロングビルの名代として、虎族の長との交渉に向かう。
虎族から借り受けた戦士は、王都防衛戦で颯真の火炎魔法に、皆焼かれてしまった。
虎族の長への詫びと死んだ戦士の遺族への見舞いとして、金貨を大量に持たせる。
そして新たに戦士を借り受ける為に、ワインと干し肉をさらに大量に持たせる。
金貨と荷は、西海岸のナバール家の港で荷積みし、ヴェラと共に船で南の国の港へ向かう。
そして、南の国から陸路で虎族の支配地域に向かう。
遠回りになるが、国王派に気付かれぬ様に、このルートをロングビルは選択した。
ヴェラは下を向いて考えていたが、言いずらそうに切り出した。
「私が、残って、そばにいた方が良いか?」
ヴェラはロングビルの身を案じていた。
王都防衛戦で見た颯真の大規模火炎魔法が、ヴェラの目には、あれがまだ焼き付いて離れない。
ロングビルの敵には、あれ、がいる。
あれ、は強い。
しかし、ロングビルは勘違いした。
ヴェラの申し出は、単純に自分のそばにいたいのだと。
ロングビルは、ヴェラとの猥雑な行為を思い出していた。
ロングビルは優しくヴェラに問いかけた。
「どうした?寂しいか?」
「寂しい。それに心配だ。」
ヴェラは、尻尾を下げ、泣きそうな顔で、弱い声で答えた。
ロングビルはヴェラの頬に手を当て、ゆっくり撫でながら、子供に諭すように話した。
「俺はお前を頼っているのだ。」
背の高いヴェラは、ひざまずいてロングビルの胸に甘えた。
「虎族の所に行ける者が、今、港にも王都にもおらん。だからお前に頼むのだ。」
「私は、あの魔法を見た。」
「異人たちは仲間に引き入れる。大丈夫だ。俺の周りに護衛も付ける。」
ヴェラはロングビルにキスをねだった。
ロングビルはヴェラのキスに応えながら、空いた手で乱暴にヴェラの胸や尻を掴んだ。
ヴェラの口から、甘い声が漏れた。
ロングビルは、服を着たままヴェラを抱いた。
小半刻の後、ヴェラは馬上にいた。
腿に流れるロングビルの残滓を感じながら、ヴェラは夜風を心地よいと感じた。
(早く戦士を連れて戻ってこよう。)
そこから、街ごとに馬を変え、昼夜走り続け、数日でヴェラはナバール家の港に着いた。
※小半刻 約30分。