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異世界召喚 魔法と剣の国エクスピア  作者: 武蔵野純平
王都包囲戦(1章)
3/75

国王との面会 3話

 建物を出て兵士の先導で場内を歩く。

 国王との謁見場に行くらしい。


 狭い通路もあったので、兵士、ダイドウ、ヒロユキ、アツシ、イノグチ、俺、執事の順番に1列で進む。


 そういえばさっきエクスピア王国と言っていたな。

 王国、だから王様がいる、それはわかるけど、立憲君主国なのか?

 それとも昔のヨーロッパみたいな絶対王政なのか?


 城内の様子を見ると、文化レベルはあまり高くないっぽい。

 すれ違う兵士の服装は、綿や麻製のシャツとズボンに革製の鎧だ。


 中世とか、ルネサンスとか、そんな感じ?

 とにかく現代的な雰囲気はない。

 そうやって考えてみると、絶対王政なのかもしれない。


 なら王様には丁寧に接して余計な事は言わないでおこう。

 機嫌を損ねて死刑とかにされたらたまらない。

 気を付けよう。


 しばらくすると、大きい通路を左に曲がり、建物の中に入る。


 ここが本丸かな?

 などと昔の日本の城と比較して考えてみた。


 しばらく大きい通路を歩くと、広間に出た。

 天井は高く、正面が一段高くなっている。


 そこに赤いやわらかそうな布地に金で飾りつけられた豪華な椅子が1脚だけ置かれ、後ろの壁には赤い布地が天井から垂れ下がっていた。

 左右の壁には、肖像画が沢山かけられていた。


 広間には他に何もなく、俺たちは歩いてきた順番、ダイドウ、ヒロユキ、アツシ、イノグチ、俺の順で左から並んだ。

 執事は俺の後ろの方で控えている様だ。


 右手奥の方から声が聞こえてきた。


「もう、来ておられるのか? おお! そうかそうか!」


 良く響く大きな元気な声とドスドスと大きな足音と共に王様が現れた。


「余がエクスピア王国国王のロデール・エクスピアじゃ!」


 王様は高いところから降りてきて、一人一人と握手をしたり、肩を叩いたりしながら話し出した。


「良く来られた! いや、ほんとに良く来られた! うーん、うん、うん、うん」


 随分とフランクな王様だな~。

 王様は見た感じ50才くらい。

 王様と言うよりも、人の良さそうな親戚のおじさんといった印象で、俺は親しみを持った。

 王様らしいのは、たっぷりとした体形だけ、かな。


「異人の皆さんは、色々不安がおありでしょうな。じゃが! ご安心下され! 余が保護するでな! うん、うん」


 と、王様は俺にハグしながら大きな声で話した。

 なんか話しぶりからすると、俺たちに敬意を払ってくれている様な感じがする。


「ありがとうございます」


 俺は礼を述べて、頭を少し下げた。

 なんかすごいホッとした。


「国王陛下にお願いがございます!」


 左端のダイドウが大きな声で、国王さんに呼びかけた。


「うむうむ、なんであろう?」


 国王さんが鷹揚に応じた。


「私を異人のリーダーに任命していただきたい」


「?」

「?」

「?」

「?」

「?」


 えっ! リーダー?

 どういう事?

 俺だけでなく、ダイドウ以外の異人、執事、国王さんも驚いている。


 ダイドウは構わず続ける。


「先ほど執事殿より説明を受けましたが、貴国では私たち異人の力が必要だそうですね。で、あれば、異人を取りまとめる人間が必要でしょう。私が喜んでその任に当たりましょう」


 ええええ~。

 なんかいきなりリーダーとかポスト・役職の話をしだすとは……。


 こんな異国、異世界まで来て、リーダーもへったくれもないだろう。

 どこでも自分が偉くないと気に入らない人なのかな……。


 しばらくの沈黙の後、国王さんが話し出した。


「うーん、そうか、いや、そう言った事は、どうだったかの? 執事よ」


「はい。陛下。異人のみなさま方は、騎士団に仮所属となります。騎士団には騎士団長がおりますので、リーダーは不要かと存じます」


 執事さんの答えを聞いて、ダイドウは憮然としている。

 こいつ憮然としてばっかりだな。


「という事であるからの。まずは騎士団でしっかりとやってくれ! おー、そうそう、この絵じゃ!」


 国王さんが強引に話を変えて、壁に飾られている一枚の絵の前に立った。

 俺たちを手招きした。


 その絵は、他の飾られている絵よりも、一回り大きかった。

 東洋人が描かれていた。

 誰だろう?

 日本人?


「このお方が、我が国エクスピアを建国なさった異人、イチロー・タナカ・シェイクスピア様じゃ」


「え ?田中ですか?」

「鈴木じゃないんだ……」

「シェイクスピアって、ないわ~」


 いやいや、笑ってはいけない。

 田中一郎さんは、この国を建国した偉い人らしいぞ。


「おお! そち達は、イチロー・タナカ様と同じ国かの?」


「はい。イチローさんは、僕らと同じ日本人だと思います。イチローは、一番目に生まれた男の子と言う意味です。タナカと言うのは、日本では良くある名前です」


 アツシが答えた。

 少し笑いをこらえてるかな。


「おお! そうか、そうか! それはすごい! イチロー・タナカ様と同じ国の異人であるか! 期待が持てる! のう? 執事よ!」


「はい。国王陛下。期待で胸がいっぱいでございます」


「うむ、うむ、それでは後は頼むぞ!」


 ドスドスドスと来た時と同じように、元気な足音を立てながら、国王さんが去って行った。


「いやあ、ようございました。さ、それではみなさま城内を案内いたします」


 何が良かったのか良くわからないけど。

 まあ、俺は国王さんに好印象を持ったよ。

 ダイドウって奴には、悪印象を持ったけど。


 執事に連れられて謁見の間を後にした。

 大きな通路を真っ直ぐ進んで、城壁の上の広くなっている場所に来た。


「ご覧ください。あちらがエクスピア王都市街です」


 そこからは街並みが一望できた。

 白壁とオレンジ色の屋根の美しい街並みだ。


 城は丘の上に立っていて、川と堀で城をぐるりと囲んでいる。

 正面の堀に橋があり、堀の手前と先の2か所に城門が設置されている。

 城門の先に広場があり、広場の先に碁盤の目状に街が広がっている。


 太陽が右手の方に見える。

 かなり低い。

 もうしばらくで、夕方になりそうだ。


「あれはなんですか?」


 アツシが不安そうな声で執事に質問した。

 アツシの指さした先には、蛮族、っといった感じの一団がたむろしていた。


「あれは南の国の軍勢です」


 俺が最初に全裸でいた所か。

 こうしてみると結構な人数がいる。

 みんな表情が硬くなっている。


「現在王都は南の国の軍勢5000に包囲されています」


 5000か!

 あれ? しかし、城攻めで5000って少ないんじゃないか?

 この城はかなり大きな城だし、堀もあれば城壁もある。

 俺は聞いてみた。


「5000だとこの城を攻めるのには、兵力不足では?」


 執事はニヤリと笑って答えた。


「左様でございます。5000程度では、この城は落ちません」


「こちらの守備兵力は?」


「3500です」


 5000対3500で城を守るなら、とりあえず楽勝だろう。


「あの、どういう事情か説明してもらえますか?」


 アツシが顔を真っ青にして執事に質問した。


「かしこまりました。一月ほど前、エクスピア北東地域に北方騎馬団が侵入したとの報告がありました。北方騎馬団の戦力は約5000。そこで、ナバール卿を大将にした遠征軍1万が討伐に向かいました」


「北東地域は、遠いのですか?」


「そうですね、片道約2か月です」


 執事は話を続けた。


「ナバール卿の軍が進発して一月が過ぎたところで、数日前ですが、突如南の国の軍勢が王都に出現しました。あわてて城門を閉じ守りを固めました。幸い、王都市民は森の方へ逃げられたようです」


「援軍は来るんですか?」


「はい。急ぎ馬を走らせました。あと一月もすれば、各地から数千の兵が集まるでしょう。ナバール卿の遠征軍にも引き返す様に馬を出しました」


 みんなほっとした表情をしている。


「ただ、南の国の包囲軍も少しづつ軍勢が増えている様です。今は、足の速い獣人や騎馬が中心でしょうが、これから攻城兵が来るかもしれません」


「獣人と言うのは?」


「あれです。あの毛皮をまいているのが獣人、あれは虎族ですね」


 執事の指さした先には、俺の前に立っていた女がいた。

 あれは獣人だったのか。


 言われてみればなるほど、一見すると人間と同じだけれど尻尾もあるし、耳もネコの様な立ち耳だ。体格が良いし、背も高い、いかにも戦闘力が高そうだ。


「問題は食料ですね。城内の食料はあと一月分しかございません」


 えーと、食料が一月分で援軍数千が来るのに必要な時間が一月……。


「食料切れまでに、援軍が間に合うかどうか、微妙ですね」


「そうです。敵軍は獣人も多いので、戦闘力は高いですから、同数ではこちらから打って出ても勝負になりません」


 そうか、敵軍は5000、仮に1月後に6000に増えたとする。

 こっちは3500+援軍が数千、仮に援軍3000来たならこっちが500多いけど、敵は獣人がいるから、数では劣るが質では上って事か。

 援軍が5000くらいいないとキツイかな?


「食料切れ、援軍、敵の増援軍、3つの要素があるのか。援軍を待てば待つほど、敵は増援で数が増える。かといって今打って出るにはこちらの戦力が足らない。籠城を続けて、ナバール卿の1万の遠征軍が引き返してくるのを待つには、食料が足らない。って事?」


「ソウマ様のおしゃる通りです」


「そこで俺達の力を借りたいと?」


「左様でございます。みなさまは高い魔力をお持ちですから、魔法を覚えていただき魔法で遠距離攻撃をお願いしたいのです」


「魔法はどのくらいで覚えられでしょうか?」


「10日もあれば、いけると思います」


 10日か。それぐらいで魔法を覚えられるなら、食料切れまでに間に合う……のか?


 アツシが不安そうに話し出した。


「僕らの国は戦争のない国だったんですよ。僕は戦争の経験がないんですが……」


「ご心配には及びません。城内から、盾の間から、魔法で攻撃するだけです。場外へ出て剣で戦うわけではありませんので、戦のご経験がなくても大丈夫です」


 みんな沈黙した。

 王様に会って、少し安心したのだけれど、包囲軍を見て戦う事を想像したら、みんな怖くなってきたんだろう。


 かといって、あんな獣人なんて話の通じなさそうな連中に降伏するのも怖い。

 逃げるにも包囲されいるから逃げられない。


「敵にも弱点があります。南の国、と言うのは、エクスピア南部の小国群を指しているのです。今、王都を包囲しているのは、いくつかの国の寄せ集めの軍です。こちらから攻撃をしてある程度戦力を削れば撤退するでしょう」


 なるほど、そう言われてみれば、包囲している軍の装備はバラバラだし、包囲も何か雑然とした感じだ。

 出まかせを言っているわけでは、なさそうだ。


「ご不安もおありでしょうが、大丈夫です。そうそう、イチロー・タナカ様からのお手紙がございますので、ご一読ください」


 えっ? 手紙? 田中一郎さんから?

2018/6/14 字下げ句点等を修正しました。

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