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異世界召喚 魔法と剣の国エクスピア  作者: 武蔵野純平
新生活と新たな出会い(2章)

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シュレさんのククリナイフ(20話)

最後は、シュレさんの試合だ。

俺はかえでとリナにサンドイッチにされながら観戦する事になった。

今日の昼飯はサンドイッチ以外にして欲しいな。


シュレさんは革のヘルメットに革の胴前、左手に四角い盾、盾には、金属板で補強が入ってる。

ゴールドメダルのベテランらしく、手堅く装備をきっちり身にけている。


右手に大き目のナイフ・・・。

ちょっと待て!

あのナイフは何だ?!


ナイフにしてはデカい。どちらかというとナタに近い。

くの字に曲がったやいば、先端の方がずんぐりと大きくふくらんだ独特のフォルム・・・。

わかった、あれは、ククリナイフだ。前の世界で近接戦闘最強のグルカ兵が使ってた武器だ。


しかし、あのナイフはどうなんだ?

ナイフにしては重いだろうし、形が独特だから、癖がありそうだ。

実戦で使いこなせる物なんだろうか?


シュレさんの相手は、パワータイプの戦士で右手にバトルアックスを持ち、左手に金属製の丸い盾を持ってる。


「シュレさーん!ファイトー!」


あっちゃんが声援を送る。

いい奴だよな。


シュレさんがこちらを見てニコリと笑って盾を持ってる手を挙げて声援に応えた。

あっちゃんがソワソワしながら聞いてきた。


「どうですかね?」


俺は率直に答えた。


「相性はあまり良くないかな・・・。」


「え?」


「相手はパワータイプの戦士だよね。シュレさんもパワーがありそうだけど、小柄だから力ではかなわないと思う。上からあのバトルアックスで、ぶっ叩かれるとシンドイと思う。」


「それはそうですよね。」


「かといって、リナの様に、力をスピードで凌駕する戦い方は、シュレさんには出来ないと思う。」


「なるほど・・・。」


「どう戦うかがキーになる。シュレさんの実力が良くわかる一戦だよ。」


執事もかえでも、俺の言葉にコクリとうなずいた。

良かった、的外れな事を言ってなかったんだ。

ちょっと安心した。


「はじめ!」


執事の声がかかると同時に、戦士がバトルアックスでシュレさんを上からガンガン叩き出した。

シュレさんは、盾で防御している。


リナやかえで程ではないけど、スピードは結構ある。

時々体重を乗せた重い一撃を織り交ぜてくる。


あっちゃんが心配そうに聞いてきた。


「ああ、どうしよう。シュレさん押されてますよね?」


そうね、そう見えるよね。

でも、意外とそうでもない。


「いや、シュレさんうまいよ。」


執事とかえでが、俺の言葉に頷いた。


「え?シュレさんやられてますよね。」


「盾をうまく使って、攻撃をいなしてるんだ。」


執事が言葉を引き継いだ。


「バトルアックスを正面から受け止めたら、数発であの盾が壊れてしまいます。しかし、バトルアックスの力のかかる方向を少しずらす様に、自分から盾をバトルアックスに当てに行ってるんです。」


「へえ・・・。」


かえでが口を開いた。


「うまい防御です。左手一本であの重いバトルアックスの攻撃をそらして、時々混ざる重い一撃は、体の位置をずらす事で、いなしています。でも、そろそろ動くと思いますよ。」


リナが俺にじゃれつきながら話した。


「相手のおじさんはぁ、疲れて来ちゃってまぁーす。チャンスチャンス~!」


シュレさんは、体裁たいさばきでバトルアックスを空振りをさせた。

右からバトルアックスを叩きつけた兵士の右側面、シュレさんから見て左側面に、シュレさんが回り込んだ。

シュレさんは、盾の広い面を相手のあごの辺りに押し付けて、体ごと下から押し上げる様に盾を叩きつけた。

攻撃後の無防備な右側面からの攻撃に、兵士の体が浮き上がり、バランスが崩れた。


シュレさんは、右手に持っている変則ナイフで突きを連続で繰り出し始めた。

兵士は、バランスを崩したところに、前からの攻撃が来た為、後ろに下がる事で対応した。


「なかなか頭脳的ですね。」


俺は感心してシュレさんの戦いを見ていた。

スピードはないけれど、技術と経験に裏打ちされた高度なディフェンスと大きな相手を崩して攻撃に転じる上手さ。

さすがはタイガーメダル、と考えていると、執事がつぶやいた。


「いや、彼はゴル族でしょう。ならば・・・。」


かえでも同意した。


「ええ、ここから凄い事になると思います。」


シュレさんが繰り出す突きの連続攻撃を、相手が丸い盾で、体の正面で受けようとする瞬間、シュレさんの動きが加速した。


ククリナイフを大きく振りかぶって、兵士の左腕に叩きつけた。

兵士の左腕がひじから切り落とされた。

兵士が叫び声を上げた瞬間、今度は左膝から下が切り落とされた。


兵士が地面に転がり、回復役が走り込む、シュレさんは次の攻撃のモーションに入っている。


「そこまで!」


執事の声が響いた。

シュレさんはモーションに入っていた上からの斬り下げを、体をずらすようにして空振りにした。

回復役がすぐに切断された手足の復旧に入った。


最後の攻撃が当たらなくて良かった。

シュレさんがギリギリで攻撃を外したから、大事にならなかった。


颯真そうまさん、今のは?」


あっちゃんが解説を求めて来たので俺は応じて、答えた。


「あの突きの連続攻撃は、相手を前からの攻撃に慣らす為だね。相手が前からの攻撃に慣れて防御しようとすると、今度は上から下への切り落とし。急に攻撃が縦に変化するから相手は対応出来ない。おまけにあの独特のナイフの重さが加わった強烈な一撃だった。」


あっちゃんがフンフンとうなずいている。

自分の従者の事だから、興味あるんだろうな。

いざとなれば一緒に戦う訳だし。


「そして、腕を切り落としても、足を切り落としても、勝負が終わるまで攻撃をやめない、・・・なんと言うか・・・最後は凄惨せいさんだったな・・・。」


執事が補足して解説をしてくれた。


「ゴル族は山岳地帯の少数民族です。目立った産業が特にない地域なので、男は出稼ぎに出ます。貴族や商人の護衛が多いと聞きます。ゴル族出身の兵士は、体が小さいですが、山岳地帯出身の為、足腰が強くて心肺機能が高い、おまけに・・・ご覧の通り、闘争心が強い。」


執事の表情は笑っているが、目は笑ってない。

ゴル族は有名なんだな。ギルドで聞いた、ロザリーの結構やる、は本当だったんだな。

俺は執事にもっと話を聞きたくなった。


「あのナイフは?」


「ゴル族が使う山刀です。厚みがあって重さがある。形が独特なので使い方によっては、意表を突いた剣筋をするそうです。」


やはり、ククリナイフと同じ特性だな。


「左手を切り落とした動きは、速度がかなり上がりましたよね?」


「恐らく闘気を操ったのでしょう。それ程大きくありませんが、あの展開であの箇所で使った冷静さが素晴らしいですねえ。」


確かにね~。

戦いの組み立て方がうまかった。

自分の持ってる力を見せつける様な戦いだった。

リナとかえでの戦いにあおられたかな?


執事が何か思い出した様だ。


「そういえば、半年前にゴル族の男が一人で護衛する商隊キャラバンが、40人の盗賊に襲われたそうです。」


「それでどうなったんですか?」


「40対1で大立ち回りを演じたそうです。結局、ゴル族の男は重傷。しかし、盗賊は28名が斬られて死亡、重症が10名、残り2名は恐怖でショック死したそうです。」


「・・・それはまた余程勇猛な戦いぶりだったのでしょうね。」


「その男はタイガーメダル、勇者が受け取る名誉のメダルを、その国の王から授与されたそうです。」


あっちゃんが胸を反らして誇らしげに宣言した。


「それはきっとシュレさんですよ!僕、シュレさんのタイガーメダル見せてもらいましたから!」


あっちゃんは凄惨なシーンを見て、固まってしまうかと思ったら、結構喜んでる。

シュレさんも、あっちゃんが喜んでいるのが嬉しそうだ。

あそこは、案外良いコンビなのかもしれないな。


「さ、ではお昼でも・・・。」


と俺は、訓練場を去ろうとした。


「じゃあぁ、やろっかぁ?」


「ええ、やりましょう。」


え、今の声は??

振り向くと、かえでとリナが訓練場の中央で向かい合ってる。

二人は恐ろしい顔で、にらみ合いながら、凄まじい殺気を周囲に放っている。


やばい!止めなきゃ!


「あの!もうお昼だし、今日は疲れているだろうから、やめた方が・・・。」


「黙ってて!」

「黙ってて!」



「・・・はい。」


二人はお互いから目をらさず、俺の方を見る事なく、俺の言葉を止めた。

いや、やめようよ。

君達の実力は良くわかった。

お昼ご飯にしよう!


「ほう・・・。」


執事の目がキラリと光った。

対戦相手だった兵士達が巻き添えを食わない様に、あわてて逃げ始めた。

シュレさんが防具をつけたまま執事の横に来た。


「あの二人やるんですか?」


「その様ですね。これは目が離せません。」


いや、おまえら止めろよ!

俺じゃ実力的に止められないんだよ。


「二人ともさっきはカウンター、相手の出方に合わせた戦い方でしたからね。」


「ふむ。すると今回はどちらか一方は必ず積極的に動かなくてはなりませんね。」


「両方、動くと面白いですが。」


面白くないよ!

怪我でもしたらどうしてくれるんだ!


かえで対リナの最強対決が始まる。

どんな結果になっても、俺は損しそうな気がする。


「では、両者、準備はよろしいか?」


二人が無言でうなずく。


「回復係、よろしいか?」


回復係が頷く。額に汗が見える。


「では・・・、はじめ!!」


右手と左手を書き間違えていた箇所があった為、修正いたしいました。2017/12/30

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