マイオフィス マイダーリン(17話)
主人公視点に戻ります。
「ご主人様!朝ごはんですよ!ご主人様!」
「うおっ!おお・・・。」
俺は楓の声で目が覚めた。
「ふう~。」
俺は楓に抱きついき、大きな胸に顔を埋めて、甘えた声を出した。
楓は、やさしく抱き返して、頭をなでてくれた。
「ものすごいぐっすりお休みでしたよ。」
「楓がそばに居て安心した。」
楓の柔らかい胸と匂いを楽しんだ。
「さあ、起きてお支度してください。お城に行かなくては・・・。」
「ああ、起きるよ。」
俺は楓に手を引かれて一階へ降りた。
テーブルには、トーストとハムエッグが用意されていた。
「美味しそう。いただくよ。」
俺は楓も一緒に食べるように促して、二人で朝食を食べた。
食べると頭が回って来て、昨晩の事を思い出した。
俺は楓を抱いた。
楓は従順に俺の要求に応えた。
食事をする楓の動く口元を見て、また昨晩の様に楓の口を蹂躙したい欲求にかられた。
食事が終わったら、また楓としよう。
それから城に行こう。
*************
城に着いた。
執事とあっちゃんが内門の前で待っている。
まずい、楓とした分だけ遅くなってしまった。
「すいません!遅くなりました!」
「颯真様、今朝はごゆっくりでございますね。」
「あれ~?颯真さん、今朝はどういった理由でごゆっくりだんですか?」
あっちゃんが、楽しそうに聞いてきた。
オマエ、絶対わかって聞いてるだろう。
「ちょっと馬が言う事を聞かなくて・・・。すいません。」
楓が真っ赤な顔で俯いてる。
ちょっと楓に悪いな、流れをぶった切ろう。
「執事さん!今日の予定は?」
「今日は、まずお二方に用意したお部屋をご覧いただきます。こちらへ。」
執事が歩き出した。
俺達4人が執事の後をついて歩いた。
執事は、謁見の間の手前で左に曲がって階段を上った。
上の階に着くと通路を進み角をいくつか曲がって、城の西側の部屋に入った。
「こちらが敦様の執務室でございます。」
「え?執務室?僕のですか?」
あっちゃん嬉しそうだな。
「はい。お二方には、なるたけ城に来て頂ければありがたいです。そこで、執務室をご用意いたしました。」
しかし、広い部屋だ15、6畳はあると思う。
あっちゃんが話しかけて来た。
「僕、就職決まらなくて、派遣で働いてたんですよ。だから、自分のオフィス持てるのすごく嬉しいです。」
あっちゃんは、しみじみと言う感じで話し終わると、窓から外の風景を眺めた。
知らなかった、あっちゃん前の世界では結構大変だったんだな。
それなら執務室は嬉しいだろうな。
「颯真様の執務室は、お隣です。」
執事が隣の部屋に案内した。
「な!何これ!」
俺の執務室は、あっちゃんの部屋よりも更に広かった。
家具が入ってないせいもあるだろうけど、ちょっとした会社くらいの広さがある。
「颯真様はシルバーナイトになられますので、貴族の来客を受付可能な広さをご用意いたしました。」
「うわ!颯真さんの個室広いですね!ベッドを置けばいいじゃないですか。」
え?!ベッド?!
それは、あっちゃん、ここで俺に何しろって意味よ。
「えーと、敦くーん。なんで執務室にベッドを置くのかな?」
「颯真さんが魔力切れ起こしそうになったら、ベッドで寝て休めば良くないですか?」
「ああ!仮眠室的な話ね!」
「颯真さん、今、絶対、違う事考えてましたよね。仕事中ですよ。」
もう、本当にすいません。
違う事考えてました。
「いやー!立派なお部屋でございますな。颯真様、敦様、おめでとうございます。」
商人のブリューナが揉み手+営業スマイルで現れた。
こいつどこから俺達が個室をもらった事を嗅ぎつけたんだ?
油断ならん。
「ブリューナ、昨日は色々手配ありがとう。いくらだ?」
「お一人銀貨10枚お願いいたします。」
俺とあっちゃんは、ジャグラールの腕輪から銀貨を取り出してブリューナに渡した。
「颯真様、敦様、こちらのお部屋の家具なども、私が手配いたしましょう。」
あ、そうか、ブリューナに頼む手もあるか。
これだけ広いと自分で机や椅子を揃えるのも大変だ。店も知らないし。
「いくらくらいだ?」
「そうですね。颯真様が金貨2枚、敦様が金貨1枚、でいかがでしょうか?」
なんか高くないか?
いや、でも、この世界家具は職人が手作りだろうから、そんなもんなのか?
「あまり贅沢過ぎず、かといって貴族の方に見られても恥ずかしくない程度の調度品がよろしいですよね?」
「僕はブリューナさんにお願いします。」
「かしこまりました。ありがとうございます。」
あれ?なんかあっちゃんブリューナへの信頼度高いのかな?
じゃあ、俺も頼むか。
「ブリューナ、俺も頼む。仮眠用のベッドと布団も手配してくれ。」
「かしこまりました。お二方のご従者は何名いらっしゃいますか?」
「僕は一人です。」
「俺も一人だ。」
「え?颯真様ご従者はお一人ですか?」
「何か不都合があるか?」
「いや、不都合と言うか・・・。颯真様はシルバーナイトになられますよね?シルバーナイトは、名家の出か、戦で何年も活躍した騎士にしかなれない位です。そのお人の従者が一人と言うのは・・・。」
「そんなものか・・・。」
「はい。従者ではなく、他の使用人ですとか、専属の護衛や相談役ですとか、何人か引き連れているのが普通ですよ。」
「うーん・・・。」
どうやらシルバーナイトは俺が予想していたよりも、偉い立場らしい。
部課長クラスでなく、役員クラスなのか?
執事が珍しく渋い顔をして、口を開いた。
「颯真様。従者お一人では心もとないです。せめて、三、四人は連れて歩くようになさって下さい。」
そう言われてもな・・・。
前の世界でも営業で一人で動く事が多かったしな。
役職付いてなかったから、後輩はいても部下はいなかったんだよな~。
それが急に従者を三、四人とか言われても・・・。
「いや、執事さん。そう急に言われても、俺も人を使うのは慣れていないので、困ってしまいますよ。」
執事は顎に手を当てて、考えている。
「わかりました。それでは、せめて、もうお一人だけ雇ってください。そうすれば、私も安心ですし、城内で格好も付きます。」
「まあ、それなら・・・。」
「すぐにギルドに行って決めて来て下さい。」
「え?今すぐですか?」
「他の予定が立て込んでますし、近日中に騎士の叙任が行われます。」
「いや、でもですね。ここの家具とかが・・・。」
「ここの家具はブリューナ殿に任せておけば良いでしょう。」
「颯真様、こちらの家具類を揃えるのはお任せください。今日中に使える様に手配いたしましょう。」
ブリューナお前もか!
まあ、ここは前の世界じゃないからな。
偉いポジションについたら、それなりに人を引き連れて格好付けておく、ってのもある程度必要なのかもしれない。
あっちゃんが心配そうに、内緒話をして来た。
「楓さんとの事、どうするんですか?昨晩したんですよね。」
「いや、大丈夫。楓とはそう言う関係になったけど、次に雇う従者は当初の予定通り戦士タイプにするよ。用心棒って感じで。住むのも違う所にしてもらうよ。」
「ああ、それなら、ごちゃごちゃしないで、良いですね。僕も安心しました。」
そうだ、そうしよう。
頼もしい戦士タイプの人を従者で雇えばいいんだ。
だいたい、楓の様な可愛い子を戦場に出すのが間違ってる。
楓は俺専用癒し要員って事で良いんだ。
「執事さん、わかりました。それじゃあ、すぐに冒険者ギルドに行ってきます。ブリューナ金貨を渡しておくから、手配を頼む。」
俺はブリューナに金貨2枚を渡して、急いで部屋を出た。
予定が詰まってるらしいから、早いとこ決めてしまおう。
楓が後ろをついて来た。
「ご主人様、もう一人増えるのでしょうか?」
「うん、聞いた通りだ。すまんが、うまくやってくれ。」
「いえ、私は大丈夫です。それよりご主人様はシルバーナイトになられるのですね。凄いです!おめでとうございます!」
「ありがとう。でも、楓の一番のナイトでいるからさ。」
ああ、言ってから凄い恥ずかしくなって来た。
普段だったら絶対こんな事は言わない。
楓がどんな顔をしているか怖くて振り向けない。
やはりちょっと浮かれてる。
これはきっと楓効果だな。
冒険者ギルドに着くとロザリーが怪訝そうな目で俺達に駆け寄ってきた。
「颯真!楓!なんかあったの?」
「いや、大丈夫だよ、ロザリー。うまく行ってるよ。今日は別件で相談に来たんだ。」
「なんだ~、心配したよ~。ヤッホー!」
「ヤッホー!」
「ヤッホー!」
ロザリーのノリに楓も順応してしまったか・・・。
「んで、別件って何?」
「もう一人従者を雇わなきゃならなくなったんだ。誰か良い人いない?」
「え?昨日、楓を雇ったばっかじゃん。」
「いや、そうなんだけどさ。俺シルバーナイトになるのね。それで周りから従者が一人じゃおかしいから、せめて二人って事になって・・・。」
「シルバーナイト?マジ?すげーな颯真!そりゃ従者一人ってわねにはいかないね~。」
「予定が組まれちゃってるから、時間がないんだ。もう今日決めちゃいたい。誰かいない?」
ロザリーの顔つきがまじめになった。
何か考えてる。
「そう・・・ね。あーいる!イイのが、一人いる!」
「マジ?」
「マジよ~。豹族の若い奴!」
ひょ、ひょう?
あのネコ科の豹なのか?
「豹族?獣人?」
「そ!戦闘に関しちゃ人間よりも、はるかに強いよ。結構やるよ。」
でた!ロザリーの、結構やる。
でもな・・・。
獣人は橋の上の戦いで大暴れする虎族を見てるからな、トラウマが・・・。
「気性はどうなの?虎族はおっかないイメージが・・・。」
「あー、虎族は気性が荒いよね。豹族は、虎族よか大人しい、と言うより、猫みたいに気ままだね。」
「猫みたいに?」
「そう、だからあんまり細かく指示するお行儀の良い貴族様には向かないけど、颯真はそういうの気にしないだろう?」
「まあ、俺は平民だから。それより戦闘が強いのがいいね。」
「そりゃ強いよ。豹族は虎族より体は一回り小さいけれど、俊敏さじゃ上行くよ。それに耳が良いし、夜目がきくよ。」
耳が良い?夜目がきく?
それって従者に必要なのか?
「それってなんか良い事あるの?」
「耳が良いと敵の接近を早く気が付くだろ。夜目が効けば、夜の襲撃への対応もバッチリって訳よ。」
「なるほどね~。」
確かにな!
この世界は街灯がない。
月明りはあるけど、夜はかなり暗い。
夜目がきくなら夜間の移動や戦闘になったら頼りになるな。
「それに何より、その若いのは性格が良いんだ。まだ豹族の村から出てきてギルドに登録したばっかりだから、スレてない。だから、楓ともうまくやれると思うよ~。オススメするよ。」
素直な新卒社会人って感じか。
確かに変なクセが付いた奴より、使いやすいかもしれない。
楓とうまくやれそうなのもありがたい。
ロザリーは何気に見る目あるからな、ロザリーオススメなら間違いないだろう。
「月いくら?」
「そうだな、新人の相場は銀貨1枚と銅貨50枚ってとこだけど、そいつは豹族だからね、相場より上にしないと。」
まあ、それはそうだよな。
強さで考えたら、人間を数人雇うより、獣人を一人雇った方が安上がりだろうし。
「ん~、颯真の所だったら・・・、銀貨3枚・・・。そうだな、月に銀貨3枚を払ってやって!」
楓が銀貨4枚だから、3枚なら給料のバランス的にも問題ないだろう。
耳が良いのと夜目がきくのは、先々役に立ちそうだな。
「わかった。月に銀貨3枚でその豹族を雇うよ。」
「オッケー!じゃあ、宿から連れて来るから、そこで待ってて。」
ロザリーはギルドの外に出て行った。
泊まってる所を知ってるんだろ。
俺はカウンターの椅子に座って待つことにした。
「ご主人様、良かったですね。」
楓が横に立って話しかけて来た。
俺的には、楓は彼女みたいなつもりだから、横に座ってもらって構わないんだが、外にいる時は主人と従者で通さないと。
後で甘えさせてやろう。
「ごめんな、楓に相談しないで決めて。」
「いえ、良い選択だと思いますよ。豹族は私の故郷にも出稼ぎに来てましたが、強いですよ。」
豹族の評価が高いな~。
この世界だと遠隔攻撃は魔法使いが最強、近接戦闘は獣人が最強って事なんだろ。
うん、魔法使いの俺と豹族は、良い組み合わせかもしれない。
「颯真~!マジお待たせえ~!連れて来たよ~!」
振り向くとロザリーの後ろに荷物を抱えた黒髪ツインテールの美少女が立っていた。