王都包囲戦 10話
4日目の朝が来た。
まだ少し暗いが、当番兵が早めに起こしに来た。
俺は良く眠れた。今日は決戦の日だ。
昨日俺は決意を固めた。その気持ちは、揺らいでいない。
朝食を食べて、革鎧など防具を身に着ける。
慣れていないので、なかなかうまく装備出来ない。
盾役のクロードが迎えに来てくれて、防具を身に着けるのを手伝ってくれた。
「じゃあ、あっちゃん、井ノ口さん、終わったらまた風呂に入りましょう」
「いいですね! ソウマさん、頼みましたよ」
「ソウマ君、仕上げは任せるからね」
俺は一足先にクロードと部屋を出た。
クロードの案内で配置場所に向かう。
すれ違う人の表情はみな引き締まっている。
やるぞ! っと言う雰囲気だ。
クロードが教えてくれた。
「ソウマ様の組手を見た兵士達が、すごい異人がやって来た! ってみんなに話したんですよ。それでみんな、勝てるんじゃないかって気分になってるんです」
それで、不安そうな顔の人がいないんだ。
ご期待に応えられるかな?
いや、気持ちを強く持とう。
期待に応える! だ。
しばらく歩いて配置についた。
内門の上の通路、少し広くなった所が俺の配置場所だ。
ここからなら外門もその周りも良く見える。
フラッシュオーバーをどこにでも撃てそうだ。
ここに配置されたのは6人だ。
左から、男性の魔法使い、執事さん、俺、の並び、その前に盾役の兵士が3人並ぶ。
城壁が内門の左右に続いている。
左側の城壁の上にあっちゃんがいた。
盾役の兵士と配置についていた。
あれ? あっちゃんの盾役は・・・女性兵士だね・・・。
あっちゃんは、少し楽しそうに盾役の女性兵士と話している。
少し緊張が和らいだみたいだ。
内門の下には、ファイヤー隊がスタンバっている。
左側にダイドウとヒロユキがいる。井ノ口さんは右側で俺の下の方だ。
ダイドウの盾役は・・・、無茶苦茶イカツイおっさん兵士だな!
顔に傷はあるし、持っている武器は・・・、あれ斧だよな?
バトルアックスってヤツか!
あんなイカツイのと組まされたら、ダイドウは何も言えないだろう。
あー、そうか、これは執事さんの手配なんだろうな。
うまいな。
城外の敵兵に目を向けると、まだ寝ている兵士もいれば、たき火で朝食を作っている兵士もいる。
俺は緊張をほぐす為に、小さな声で口に出してみた。
「敵はのんびりしてるな」
クロードが答えてくれた。
「まだこちらの動きに気が付いてないですね」
皆息を殺して、静かに攻撃開始の合図を待つ。
敵兵の声だけが聞こえる。
まだか?
自分の呼吸する音が聞こえる。
まだなのか?
自分の脈打つ音が聞こえる。
血管に血が流れる音まで聞こえてきそうだ。
突然、ラッパの音が響き渡った。
「始めよー!」
後ろの方から大声が聞こえた。
その瞬間、左右の城壁上の魔法使いが立ち上がって、一斉にファイヤーボールを撃ち始めた。
左右と下の方から、興奮した声が聞こえてきた。
「っしゃー!」
「いけいけ!」
耳の中が音で一杯になった。
火球の臭いと共に、肉を焼く臭いがして来た。
その臭いの意味が分かった時、俺は吐きそうになった。
なんとかこらえて、周りを見る様にした。
気を紛らわせる為だ。
俺は意識して、目に入った物を観察する様にした。
右側で女性の魔法使いが、ファイヤーボールを撃っている。
その魔法使いの髪の中に、白髪を見つけた。
大丈夫だ、俺は冷静に見る事が出来ている。
左側を見ると、あっちゃんがファイヤーボールを打っている。
あっちゃんは、撃った後コントロールはしないみたいで、撃つとすぐ盾の後ろに隠れる様にしている。
あれなら、そうそう死ぬ事はないだろう。
ちょっと安心した。
盾役の女性兵士にあっちゃんが何か怒られている。
ご褒美プレイですね~。
あっちゃん、良かったね~。
なんとなく、俺もいつもの調子が出てきた気がする。
執事が声を掛けて来た。
「さすがソウマ様。いつもと同じで、落ち着いてらっしゃいますね」
「相手が執事さんじゃないから楽勝ですよ!」
周りで小さな笑い声が聞こえる。
安堵の笑いかな?
たぶん、執事さんと俺の組手を見てたのだろう。
クロードもニヤッと笑っている。
クロードの盾と城壁の隙間から、敵の様子が見える。
早朝の奇襲がうまくいってる。
火だるまになった敵兵士もいる。遠くの方では天幕が燃えている。
数は少ないみたいだけれど味方の弓隊も攻撃している。
敵に矢が突き刺さっているのが見えた。
騒ぎが大きくなってきた。
執事に大声で話しかける。
「ファイヤーボール攻撃が、きいてるみたいですね」
「早朝の奇襲がうまくいってます」
「敵の魔法使いは対応出来てないですね」
執事はニヤッと笑って答えた。
「どうせ寝てるんでしょう」
これはうまく行くかもしれない。
気持ちが高ぶっていくのを感じる。
左右のファイヤーボール隊も手応えを感じているみたいで、自信に満ちた顔でファイヤーボールを撃っている。
開戦から30分くらいが経過した。
下の方で大きな音がする。
内門が開いた。
同時に内門から橋に兵士が走り出した。
橋の欄干に盾を並べ、その後ろに魔法使いが走り込む。
あ、井ノ口さんだ!
ちょうど橋の真ん中あたりにポジションをとった。
しかし、このタイミングで良いのか?
昨日の打ち合わせよりも早いんじゃないだろうか?
「執事さん! タイミング早くないですか?」
「おそらく司令部の判断でしょう。敵に距離を取られては意味ないですから」
そうか、敵が城壁から安全な距離を取って包囲を続けられては困る。
囮を出して敵を引きつけなきゃならない。
橋の上のファイヤー部隊が、火炎放射攻撃を開始した。
外門の左右にいる敵は、ファイヤーボール隊とファイヤー隊の攻撃を正面と斜め横から受けている。
火炎放射の直撃を受けた敵兵が、火だるまになって堀に飛び込むのが見える。
敵兵は素肌の露出が多い。
毛皮を巻き付けただけ、素肌の上から革の胸当てをする蛮族の様なスタイルの兵士が多い。
素肌に直接火炎放射や火球を浴びる事になるのだから、ダメージは相当大きいだろう。
俺はジッと戦場を見ながら出番を待つ。
じれったいな。待つのはあまり得意でないかもしれない。
動いていた方が気が楽だ。
1時間くらい経過した。
クロードがボソッとつぶやく声が聞こえた。
「右手から増援ですね」
右手の奥の方から駆けつけてくる兵士が見える。
かなりの数だ。
城を右側から包囲していた部隊が、外門の正面に回り込もうとしているんだろう。
左側を見ると左の方からも増援部隊が見えた。
こちらの作戦と違ってきた。
こちらの作戦では、外門正面の敵部隊が、外門の左右に戦力を振り向ける。
そこで薄くなった正面中央を突破して、敵を分断、反包囲、フラシュオーバーで面攻撃の予定だけど・・・。
外門正面の部隊の厚みは変わらない気がする。
こちらの中央突破を読んでるのか?
外門が開くのを待ってるのか?
包囲軍全軍が外門付近に集まるとちょっとまずいんじゃないだろうか?
「執事さん! 増援を叩きましょうか?」
「・・・いや。司令部の指示を待ちましょう」
執事も少し迷ってるようだ。
外門の左右に水の壁が現れた。
敵の魔法使いがここで動き出した。
水の壁は、執事が俺との組手で見せた水の壁よりは、高さも低いし、厚みもない。
だが、こちらのファイヤーボールやファイヤーが、水の壁で消滅したり、威力を弱められたりしている。
水の壁の向こうで敵軍が動いてるのが見える。
敵は大盾を並べて防御陣形を取り出している。
あ、まずいな。
大盾に水をかけてるやつがいる。
あれで木の大盾でもある程度火炎攻撃を防げるだろう。
水の壁が消えた。
水の壁が火炎攻撃を防いでいる間に、外門の左右に木の大盾で防御陣地が作られてしまった。
そのかなり後ろに弓隊が見える。
橋の上のファイヤー隊に、敵の弓矢による攻撃が始まった。
何人か矢を受けた。
井ノ口さんを見ると味方の盾に隠れ、矢の雨からうまく逃れていた。
城内から大盾を持った2人組の兵士が次々に飛び出した。
2人組の兵士は、橋の上で矢を受けた味方の兵士や魔法使いを、引きずる様に城内に運び込む。
城内で待機していた魔法使いが、回復魔法をかけている。
2時間くらいたっただろうか?
周囲は完全に明るくなった。
橋の上のファイヤー隊には、矢の攻撃が続いでいる。
ダイドウがイカツイ兵士に襟首をつかまれて、盾の下に潜り込まされている。
城内に運び込まれた兵士や魔法使いは回復魔法を受けて、橋の上の戦列に復帰しているが、城内に運び込まれる人数が増えている。
「弓矢の攻撃がきつくなってませんか?」
執事が苦り切った顔をして答える。
「そうですね。橋の上のファイヤー隊の攻撃は機能していません。囮としての役割は果たせていますが・・・」
城壁上のファイヤーボール隊の攻撃は、敵の魔法使いの魔法防御に防がれている。
「執事さん、こちらの魔法が防がれてます」
「まずいですね・・・。こちらの予想より敵の魔法使いが多いです。逆にこちらの方が魔力切れを起こしています」
左右の城壁の上では、魔力切れになり青白い顔をした味方魔法使いがチラホラと見える。
「魔法戦で負けてると?」
「はい。作戦失敗です」
橋の上から悲鳴が聞こえた。
負傷者が増えて、盾の列に穴が開いた。
そこに獣人2人が外門の左右から、堀を飛び越えて強引に侵入してきた。
すぐに剣や槍を持った歩兵が獣人を取り囲み攻撃するが、獣人は強い。
「あ!」
右の城壁で短い悲鳴が聞こえた。
女性の魔法使いが投げ槍を左肩に食らって倒れていた。
さっき見つけた、白髪が赤く染まっていくのが見えた。
回復役が慌てて駆けつける。
あっちゃんは、無事なのか?
左を見るとあっちゃんは顔に火傷している。
左側は敵にファイヤーボールを撃ち返されている。
劣勢だ。
橋の方に目を戻すと、犠牲者が増えていた。
橋の上は地獄絵図だ。
たった2人の獣人が暴れまわっているだけだが、その力が強すぎる。
矢の攻撃は止まっているが、暴れる獣人に倒された味方兵士や魔法使いが血を流し倒れている。
負傷者を城内へ運び込んでいるが追いついていない。
井ノ口さんや生き残った魔法使いが、至近距離で獣人に火炎放射するが、動きが早くて当たらない。
このままじゃまずいだろう!
外門が橋の上の獣人に開けられてしまうのも時間の問題だ。
外門が開けられれば、敵兵が城内に雪崩込んで来る。
敵の数が多いのだから、みんな殺される。
下の方で音がした。
怒鳴り声が聞こえる。
城内を見ると、血を流した兵士2人が、士官につかみかかっている。
「まだ味方がいるんだぞ!」
「内門を開けろ! 味方を収容する!」
士官が恐怖にひきつった顔で答えた。
「無理だ!あの獣人を止められんだろう! もう、橋はあきらめろ」
内門を閉じたらしい。
橋の上に目を戻す。
内門の扉を必死に叩き、開けろ、と叫ぶ兵士や獣人と戦う兵士や魔法使い達が見える。
まずい、井ノ口さんが取り残されてる。
井ノ口さんは斬られた様で、橋の欄干に寄りかかり血まみれで腹を手で押さえている。
クロードが泣きそうな声を出した。
「そんな……、まだ味方がいるのに」
俺は決断した。
このまま撤収になるのだろう。
なら、俺がここで勝手に動いても文句は出ないだろう。
俺は執事に冷静な声で告げた。
「執事さん、俺がやります。いいですね?」
俺の声は聞いた事がない様な、ぞっとする様な冷たい声だった。
執事はハッとした様な表情の後、深々と頭を下げた。
「お願いいたします。防御はお任せを」
俺は立ち上がると、橋の上の獣人を睨みつけた。
両手を頭の上で合わせて、ゆっくりと左右に開いた。
手のひらからファイヤーボールを大量に生成する。
「下がれーーーー!」
俺は、橋の上の味方に大声で告げると、頭上のファイヤーボールを獣人二人に投げつけた。
無数のファイヤーボールが、高速で獣人二人に向かう。
敵からもファイヤーボールや矢が飛んできた。
執事が水の盾でクロードが大盾で敵の俺への攻撃を防いでいる。
右の城壁から大盾を持った兵士が数人俺の方へ走ってきている。
もう、防御は気にしなくていいだろう。
俺は意識をファイヤーボールに集中する。
獣人の周りに50センチ四方の水の盾が出現した。
敵の魔法使いの防御だ。
だが、隙間が空いているし、足元と頭上はがら空きだ。
フォーク、カーブ、シュート、ホップ、俺は高速の火球を味方に当たらない様にコントロールしながら、獣人に叩きつけた。
次々と火球は獣人に着弾する。
獣人は火だるまになるが、下からも火球が着弾するので倒れる事が出来ない。
全ての火球が着弾すると、獣人二人は黒こげのオブジェになっていた。
黒焦げの両足が、炭が砕ける様に壊れた。
獣人の上半身も崩れ落ちた。
城壁の上の兵士達が城内に向けて大声で怒鳴った。
「橋の上の味方を収用しろ!」
「獣人は倒した!橋の上は安全だ!」
「門を開けて、怪我人を収用しろ!」
正門左右の敵は、あっけにとられて、固まっている。
曲がる火球を見た事がないんだろう。
そう、俺にとって水の盾なんて、何の意味もないんだよ。
城内から橋の上に兵士が出て来た。
怪我人を収用するのだろう。援護しなくちゃ。
俺は、クロード達に告げた。
「右! 撃つぞ!」
外門の右側の敵部隊に向けて右腕を伸ばす。
射線上にいた盾役の味方兵士が慌てて飛びのいた。
俺は、左手を肘にあてて魔力を集中する。
そう、イメージは執事との組手で使った、ドラゴン級のファイヤーだ。
「いっけー!」
一気に魔力を放出!点火した!
放射した火炎は3メートルを超えた太さで、外門の右側にいた敵兵を盾ごと一気に炎に飲み込んだ。
兵士達は、一瞬で消し炭になった。
外門が燃え出したが、俺は構わず右方向に火炎放射を続ける。
堀沿いに盾を構えている兵士や後ろの弓兵を一気に炎で焼き払う。
途中で水の盾が出現したが、俺の放つ火炎に飲み込まれて一瞬で蒸発した。
盾役のクロードが必死で俺の邪魔をしない様に、盾で俺を守ろうとしているのが見えた。
悪いなクロード、しばらく熱いぞ!
「おおおおおおお!!」
堀に沿って左から右へ、火炎を放射し続ける。
弓兵、兵士、獣人が、どんどん黒焦げになっていく。
右端まで焼き切った所で俺は、外門の左側に目を向けた。
橋の上では味方の収用作業が続いている。
援護が必要だ。
左側の敵も焼き切る事に決めた。
俺は右手を構え、魔力を集中した。
「左! 行きます!」
俺が声を掛けると執事が橋の上の兵士たちに大声で伝えた。
「頭を下げろー!」
俺は左側にもドラゴン級のファイヤーを発射した。
「せえええええええ!」
橋の上にいる射線上の味方兵士が必死で頭を下げているのが見える。
そのまま頭を下げてろ!
同じ様に堀に沿って炎を放射する。
盾も、水の盾も、この火炎放射には無意味だ。
堀沿いに黒い焦げの焼けカスが、次々と倒れていくのが見える。
黒焦げの地面に焼けた死体が重なると、地面なのか、死体なのか見分けがつかない。
左右の敵を全て焼き払った。
残りは外門前、正面の敵だ。数が多い。
だが、魔法防御はそれ程厚くないはずだ。
相手も魔力をここまでの攻防で、相当使っているだろう。
決めた!
中央の敵も一気に焼く!
フラッシュオーバーを最大範囲、最大火力でぶち込む。
もてよ、魔力。
俺は右手を握りジッと見つめ、魔力を右手に集めた。
全身の魔力が、右手に集まって凝縮されていくのを感じる。
右腕を振り上げ、外門前の敵の中央に向けて振り下ろした。
点火!
敵の中央に直径10メートルの円状に火柱が上がった。
火力が強いのか色が青い、炎の高さも家の屋根くらいの高さだ。
「おおおおおおおお!」
俺は火柱に意識を集中する。
そのまま炎を外側に走らせ、燃焼範囲を広げる。
火柱の勢いを弱めない様に魔力を注ぎ続ける。
火柱を囲む様に水の壁が出現した。
敵の魔法使いの防御だろう。
だが、水の壁は俺の青い炎には無力だった。
水の壁と青い炎の柱が激突したが、炎の柱が水の壁を飲み込んだ。
馬で逃げ出す兵士もいたが、馬が走るよりも、炎が広がる方が早く、馬ごと炎に飲み込まれた。
俺の炎は正面の敵軍全てを覆った。
青い炎の巨大ドームが目の前に広がっている。
誰かがつぶやいた。
「……ヘルファイヤ」
魔力を注ぎ込みながら、俺はその美しさに見とれていた。
「ソウマ様! もう十分です!」
俺は、執事の声で我に返った。
集中が切れた。
炎のドームが消えた。
なんだか頭が痛い。
酸欠か?
「あ、執事さん、ちょっと頭が痛いです」
「魔力切れを起こされています。そこに座って。誰か! 水を!」
ダメだ、立ってられない、気持ち悪い。
クロードに支えられて、なんとか座った。
ゆっくりと呼吸したが、息を吐くのも、吸うのも辛い。
水を差しだしながら、執事が心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
「顔が真っ青でございます。ソウマ様」
「かなり辛いですね。頭が痛いです。敵は?」
「ほぼ、全滅と思われます。生き残った者もいるでしょうが、数人でしょう」
差し出された水を飲み干した。
そうか全滅か。
城の後ろを包囲していた敵も、正面に回り込んで来てたのか。
「そりゃ良かった。しばらく休めますね。もう、魔力切れみたいで、一発も撃てません」
「ソウマ様、最後のあの大規模魔法は?」
「最後? 打ち合わせ通りフラシュオーバーですよ。最大規模で最大火力の」
執事がジッと俺を見つめていたが、しばらくして話し出した。
「ソウマ様の最後の魔法は、ヘルファイヤ、だと思います。イチロー・タナカ様が編み出し名付けた伝説級の火炎魔法です」
「そうなんですか?」
「私も書物で読んだだけですが、全てを焼き尽くす強烈な青い炎と広大な範囲の燃焼、逃げ場のない死のドームが敵軍を覆う、と書いてありました」
「そうか、こいつのおかげで出来たのかもしれないですね」
俺はポケットから守護石のクリスタルを出して執事に見せた。
「なるほど、守護石の加護がございましたか」
「はー、とにかくこれで一安心ですね」
「後の事は気にせず、ソウマ様はお部屋に戻ってお休みください」
「そうさせてもらいます」
俺はクロードに手を借りて立ち上がった。
壁に手をつきながら歩いた。
あっちゃんが、回復魔法を受けているのが目に入った。
城内に入ると、出て行く騎馬兵や城内に入る怪我人でごったがえしていた。
今、何時だろう?
まだ午前中のはずだ。
なのに眠い。
部屋に着くとベッドに倒れ込んだ。
革鎧を脱ぐのは後で良い。
今はとにかく眠りたい。
目をつむると、俺の意識が落ちた。
第一章はこれで最終話です。読んでいただいてありがとうございました!
第二章からは、王都での生活を描く予定でおります。
平和が訪れたエクスピア、ソウマ、あっちゃん達は、包囲戦の功績で報奨金などを受け取り、正式に騎士に叙任されます。家を借りる、馬に乗る練習、覚えてない魔法を覚え、従者を募集しと忙しくも楽しい新生活です。
しかし、平和な時ほど暗躍する者達がいます。ナバール卿、ロングビル子爵が、国王追い落としの為、蠢動します。
そして、ヒロイン「楓 かえで」が登場します。
次章もエクスピアをよろしくお願いいたします。
2018/6/14 字下げ句点等を修正しました。
ブックマークありがとうございます!
評価ポイントも、ぜひお願いいたします☆彡
評価ポイントは、最終話のページ下部から入れられます。