召喚されたら全裸でした 1話
はじめて投稿します。よろしくお願いします。
俺は戦場にいた。
全裸で!
気づいたら俺は全裸で戦場に……。
これはどうなってるの?
俺の周りでは、手に剣を持った男たちが戦っていた。
金属と金属が強く叩き合わされ、鋭い音と共に火花が見える。
革の鎧姿の男もいれば、上半身裸で毛皮を羽織っただけの男もいる。
皆大声で、口々に何かを叫んでいる。
沢山の馬の走る響きが地面から伝わってくる。
混乱した。
俺は営業先から会社に戻る途中だったはずだ。
歩道を歩いていて、落ちる様な感覚があったのは覚えている。
その後は、記憶がない。
なぜ、こんなところにいるのか?
なぜ、裸なのか?
まったく理解が追い付かなかった。
一人の女兵士が俺の前に立った。
背の高い女で、革で出来た胸当てが左胸を守っているが、右胸は丸出しだ。
目鼻立ちのはっきりとした美人だった。
「オマエ、何者だ?」
女兵士が低い声で話しかけてきた。
右手には剣、その剣には血が付いていた。
ブーツを履いた足は、スポーツ選手の様に引き締まって見えた。
腰に毛皮の様なものを巻き付けただけで、下着は履いていない。
俺はまじまじと、こんな状況にも関わらず、見上げ……、見つめて……、ガン見してしまった。
「あの……、見えてますよ……」
俺は思わずつぶやいてしまった後、余計な事を言ってしまったと後悔した。
女は一瞬、何の事かわからないといった表情をした後、怒気を含んだ声を吐き出した。
「怪しいヤツめ!」
どうも、すいません。
ここは正座で謝った方が良いだろうか……、と考えていると、女兵士が質問してきた。
「ところで、オマエは、なぜ裸なのだ?」
それは俺の方が知りたいよ。
と、涙目になっていると、右肩に誰かがぶつかって来た。
首を切られた人間だった。
血が首から流れ出し、手が、こう、伸ばす様な、何かをつかむ様な動きをした。
それを見た瞬間自分の体がギュッと縮こまった。
動けない。
それから目をそらしたいが、そらせない。
動きたいが、動けない。
自分がまずい状況にある事は理解したが、とにかく体が動かない。
「異人殿! こちらへ!」
男の声が聞こえて、後ろからグッと強い力で引き寄せられた。
同時に、女兵士と俺の間に馬が強引に割り込んできた。
馬の上には、革鎧を着て槍を持った兵士が乗っていた。
「お早く! こちらです!」
男が俺を馬に押し上げながら叫んだ。
無理やり馬に乗せられた。
いや、乗せられたというよりは、馬にしがみ付かされた感じだ。
「異人殿を回収した! 下がれ! みな下がれ!」
俺の馬の男が大声で叫んだ。
俺がしがみ付いた馬は、くるっと馬首を返して走り出した。
俺は何かベルトの様な物をギュっと握って、落ちない様に必死に馬にしがみ付いた。
ずり落ちそうになると、誰かが手で引き上げてくれたり、棒でお尻を押してくれた。
後ろを見ると、女兵士と俺の間に割り込んだ兵士が、女兵士に切られていた。
俺は助かった。
2018/6/5 句点等を修正しました。