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付加勇者  作者: 河栗 凱浬
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説教とちょっとした過去

本日三話目!

 お仕置きと聞こえて俺は、ますます意味がわからなくなった。さすがに困惑する他ない。

 目を白黒させる俺に2人は詰め寄ってきた。


「……最後、逃げる気なかった……!」

「死んじゃったら意味ないでしょ!」

「いや、だって、あれは……あはは」

「うるさい!」

「……黙って!」

「はい……」


 確かに悪いとは思うけど、2人を逃がすためにはあれしかなかった訳でしてね、とか言えないなぁ。


「どうして1人でやろうとしたの?」

「2人を逃がすためには1人足止めしないといけないと思いました」

「協力しようとは思わなかったの?」

「難しいと思ったんだよ」


 あの空間では、いつ死んでもおかしくなかった。

 生き残れたのは運が良かったからだ、ピエロが遊んでいたから……。

 あそこでどうするべきかが正解だったかはわからないけど、俺は2人が生き残ることを第一に考えた結果があれだ。

 それに、協力していたらおそらくもっと時間が経ってた。


「1人でやろうとしたことは別にそんなに怒ってる訳じゃないからいいけど、その後が1番気に入らない!」


 ルアがそう怒鳴ると、隣にいたソウがその紅い眼を潤ませて俺の胸に飛び込んだ。


「……リューキが、死んじゃうかと思った」

「……ごめん」

「リューキは、なにがしたいの? あたし達すっごく心配した」


 なにがしたいかなんて、そんなの決まっている。

 ここに来た日に決めたんだ。


「2人を守りたいだけだよ」


 俺が答えると2人は顔を少ししかめた。

 そんなに嫌なことを言ったのだろうか。

 そんな疑問を浮かべてると、胸に顔を埋めてたソウが眼を細めて言う。


「……わたしは、そんなの望んでない」

「はは、これは、……手厳しいな」


 まさか、こんな風に拒絶されるとは思わなかった。今まで仲良くやれていた気がしたんだけどなぁ……、そんなことはなかったのかな?


「大体、そんなことはここに来た1日目でわかってる」

「なん……そうか」


 今更、疑問に思う方がおかしいか。

 ルアは心読の固有スキルがあるのだから。

 彼女は、哀しそうな表情で、声を若干震わせながら訴える。


「あたし達は別に守られたくなんてない。気持ちは嬉しいけどそんなの嫌」

「そうは、言われてもな」

「……わたし達も、守る」

「は?」

「守り合う、関係は、不満?」

「あたし達はなんのために3人で頑張ってきたの? その為じゃないの?」


 その関係は、たしかに憧れるかもしれない。

 実際、2人とこれからパーティーを組みたいと思ってる俺としては、その形じゃなきゃいけないのか。

 互いに守り合う関係、一緒に強くなる関係。

 その可能性は、どこかで捨ててたような気がする。いや、思いつけなかった。

 今まで1人を守るためだけに頑張ろうとしてた故に。

 今ならそれができる、か……。


「そう、だね。ごめん、反省してる」

「……ん、許す」


 なんかあっさり許すんだな……。


「なんで、守りたいの?」

「理由は特にないよ。2人を失いたくないって思ったのかもね。ただ、強いて言えば、後悔を拭いたいのかもね」


 ルアは少し迷ったような素振りを見せた。

 まあ、大体なにを知りたいかは想像がつく。


「その、後悔について教えてくれないかな?」

「そうだね。いいよ」

「ありがとう」


 でも、だったら俺も知りたいことがある。

 そろそろ俺も知ってもいい頃だろう。


「でも、俺にも2人の逃亡者について教えて欲しい」


 これは譲れない。

 2人の顔が少し強張ったけど問題ないと了承してくれた。


「じゃあ、話すけどつまんない話だよ? 特に悲しい訳でもなく、感動もない。ただただ自己満足したかっただけの話」

「うん」

「……ん」

「じゃあ、どこから話そうかな」



 俺の小さい頃、俺と良く遊んでくれたのは母親だった。

 父親は、仕事で戻ってくるのはいつも夜。

 自然と遊ぶ相手が母親になるだろう。

 母親は、俺をとても大事にしてくれてたから俺も大好きだった。いつも笑顔で接してくれてていい母親だったと思う。

 でも、父親が来ると母親の笑顔は消える。

 理由は、単純に暴力を振るわれるからだ。

 でも、他所から聞くほどひどいものではなかったけど、それはたしかにDVだった。

 毎日、だったわけじゃないけど、頻繁にそれは行われていた。

 そんな、父親だったからもちろん好きになるはずもなく父親と話すことはほとんどなかった。

 母親に、なぜ別れないのかと聞くと、少し困ったような笑顔で今はできないって言われた。

 理由は、話してはくれなかったけど、今思うと母親は多分、俺を養うことができなくなるから、それができなかったんだろうと思う。

 せめて母親を殴るのを止めさせようと強くなろうと思った。

 でも、父親に殴られる覚悟もなきゃいけないのかと怖くなった。だから、体を鍛える踏ん切りがつかなかったな。

 本当に情けないな、弱いなってなんども思った……。対して母親は本当に強いって思ったよ、心が。

 でも結局体は鍛えることになった。

 きっかけは特に何かがあったわけじゃない。けど、ある日、強い雨の日に雨宿りをしてるおばあさんを見つけて、おばあさんに傘を渡す時にやたらと変な事を言ってそれを嘘って思われたくなくて走る次の日からは学校帰りなどは走って帰るようにした。いや、ただ適当な、なんでもなさそうな理由が欲しかったんだ。本当に我ながら馬鹿な奴だと思う。

 そこから意識が少し変わったんだと思う。

 体を鍛えるならまずは走りからとか思ってたからかひたすらに走る日々を続けた。

 その後は、若干、趣味っぽくなってた気がしないわけでもないけど思いつく限りの筋トレをした。

 それから、だいぶ経って父親が帰ってきた日に母親を殴る前に喧嘩を売った。

 母親に止められたけどここはしっかりと覚悟をしないといけないと思った。

 実際、力も強くなってたし、中学校に入ったばかりの頃だった。自信もあった。

 でも、所詮は子供って思い知らされた。

 大人の力はやっぱり違くて叶わないと思った。

 でも、その日、母親は殴られなかった。

 俺がボコボコにされて終わった。

 母親は、守ってくれてありがとうって言ってくれたけど、これは違うだろうにと納得できなかった。

 その時の件がきっかけだったのかは知らないが母親は離婚した。俺と一緒に家を出てった。

 そこから1年ぐらい後に別の人と再婚した。

 相手はすごく優しい人で、この人が本当の父親だったら良かったのにって思ったぐらいだ。

 その人にも、連れ子がいて、俺と同い年のとても可愛い女の子だった。

 その子に若干、避けられてるような気がしてたけど、俺のことは嫌ってないらしいと、父親に教えられた。それならまあいいか、と放っておいた。

 1年間ぐらい、4人で幸せに暮らした。

 父親もその娘も明るくて、強い人達だった。俺はなぜか自分の無力さを感じた。

 しばらくすると母親が倒れた。

 どうやら昔、殴られた時、内臓に傷ができてたらしい。

 もう、間に合わないとも言われた。

 その時ほど自分を責めた事はなかった。母親は俺は悪くないとか、ずっと私の支えだった、とかいろいろ言ってくれた。

 母親は最後、俺に強くなれ、まっすぐ生きろって言ってくれた。

 でも、周りを良く見ることが1番大事だ、とも、その中にきっと自分を支えてくれる人がいるからって、言っていた。

 母親が死んでからはもちろん悲しかったけど、今の父親と義理の妹は俺を本当の家族のように接してくれたからそんなに辛い思いをしなかったのは幸いだったと思う。




「と、言う訳で、母親を守れなかったから、大切な人を守れなかったから2人を守りたいって思った」

「……それってわたし達はリューキにとって大切?」

「まあ、そうだね」


 俺がそう答えると、そうは少し俯いて、嬉しそうに呟く。


「……嬉しい。でも、わたしもリューキが大切。だから、わたしも守る」

「わかったよ。本当に反省してるんだから」

「……ん」

「でも、最初の日にもう大切だったの?」

「どちらかと言うと、大切になるだろうなって感じかな。2人とも可愛いし性格も良さそうだったしね」


 そんな子と毎日一緒にいる事になるんだからそうもなるだろう。

 ルアも少し恥ずかしそうにしていたけど納得はしてくれた。


「……そっか。えへへ」

『ルア、今嬉しそう』

『それはいいから!』


 俺のつまらなくて大した話でも無い話は終わった。次は2人のなんて事の無い話を聞こう。


「まあ、そういう訳だ。次は2人の話も聞かせてくれ」

「わかってる」

「……ん。わかった」

いずれはもう少し整った過去話が書きたいですね。なんだかなぁ……。

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