落ちた先
少し長めになりました。
本日二話目。
その日は、いつもと変わり映えしない日だった。
いつものように寝て、起きて、食べて、暇を潰して、疲れたらまた寝て。
そんな毎日を過ごしている。
自由だと思うだろうか?
最初は、辛いこともあった。どう生活をすれば良いのか、悩んだりもした。
だけどしばらく経つといろいろな柵から解放されたと思って安堵に包まれた。
この小さな世界で生きていくしかない。どの道、帰る方法などない。
しかし、ここはここでなかなか良い場所だった。とても綺麗で、素敵で、神秘的な場所だ。自分にまとわりつく物から解き放たれた気がした。警戒する必要もない。信頼する人など元からいない。
故に、自由。
自分はもう、自由だ、と。そう思った。
初めてがたくさんでおもしろいとも楽しいとも思った。
またしばらく日が経つと、……飽きた。
発見がない。楽しみもない。閉鎖的な空間なのだ。さすがに飽きがくる。
綺麗な場所も慣れれば普通になる。
さらに、ずっと1人でいるのだ。そうなるのも当然だと言える。
外に出たいと思った。
だけど、出れる方法がまったく持って見つからない。
せめて、何かをしようと出れる糸口を探そうと魔法を使い続けた。
そうして結局なにも見つからずに時が過ぎたのだ。1年もの間、ずっと1人で。
その日は、いつもと変わり映えしない日だった。
目の前の少し行ったところに、大きな湖がある。壁の幾つかの穴から水が出てこの湖を作っているのだ。
綺麗な湖で不思議な水だ。中には魚もいる。
後ろには、ちょっとした森がある。そんなに広い森ではなく誰でも迷わないようなもの。森と呼んでも良いものかも悩むところだけれど、それは自己の判断だ。そのさらに向こうには小さな山がある。
そして、全てを囲むように壁がある閉鎖的な空間。
ふと、上を向けばこちらを照らす不思議な天井がある。あれは夜になれば光が収まってくるのだ。だが、湖の真上には直径3メートルぐらいの穴が空いている。
そう言えばあそこから来たなと思う。
しかし、そんな場所から突如途轍もない速度で2つの物体が降ってきた。昔の自分を見ているようだと、笑ってしまう。
それは、1年ぶりに見る同族の男女。
その同族は、互いに抱き合いながらも目を瞑り、目の端には少しだけ涙らしきものも溜まっているがその表情は覚悟は決まっていると言わんばかりの表情をしている。
そんな彼らを見て。自分は驚いた。それはそうだろう、ずっと1人だと思っていたのだから。だけど、嬉しくもあった。1人ではなくなると思ったから……。
それに、雰囲気は優しくて良い人そうだとなんとなくそう思った。
そして、口元が少し緩んだのを自覚する。自分も1年前はあんな感じだったのだろうと思い、迎えに行く。
希望を感じずにはいられなかったのだろう。
今日、いつもと変わり映えしない日は大きく変わった日だった。
そして、わたし、ソウ・ブランカが1人じゃなくなった日でもある。
「……よろしく、ね?」
小さくそう呟き、彼らの元へたどり着く。
自然と出た言葉だった。
彼らに希望を抱きながらもやはり、信頼できる人になってほしいとも思う。
彼らが湖にバッシャーンと音を立ててから少しが経ち湖から上がってくる彼らをジッと待ちそして、
「……大丈、夫?」
無難に声をかけるのだった。
★
ものすごい勢いで俺とルアは落ちていた。
死ぬ瞬間など見たくもないから互いに目を瞑った。するとなんとなく周りが明るくなった気がしたが確認をしようとした瞬間とんでもない衝撃が走った。
痛みは一瞬、それからは若干の万能感と息苦しさを感じた。
そうか……これは三途の川って奴か……。
随分と流れが緩やかな気がするがそういうことなのだろう……。
ルアとと共に川から出ようとして思う。
「随分と綺麗な所だな。ここが天国、か……」
「辛いこともいろいろあったけど、最後にリューキに会えて良かったと思う。ありがとう」
「う、うぅ……ルア! 俺もだよ!」
そんなことをしてた俺たちの元に誰かがやってきた。そして、
「……大丈、夫?」
「め、女神様……」
「へ?」
「ルア! 女神様がいるぞ!」
そう。それはもう女神様としか言い表しようのない人だった。
その白金の様な綺麗な銀髪はルアと同じで腰の辺りまで伸びている。
眼はどこか眠たげで垂れ目なのだが美しい赤だった。
ルアの碧眼とはまた違う綺麗な紅眼。
整った顔立ちは大人しそうな印象を与えてくれる。背丈もルアとそう変わらない。
ワンピースの様な白いローブを着ていてかなりの美脚をこれでもかと惜しげもなく晒している。
この子もまた、がっつりと俺の好みのタイプに当てはまるルア級の美少女だ。
顔は違うが2人はどこか対極で似ている気がする。まぁ、勝手なイメージだが……。
しばらく見ていたらルビーを思わせる燃える様な眼はこちらをどこか困った様子でこちらを向いていることに気がついた。
「どう……いたっ!」
どうしたのかと聞こうとしたら隣のルアに脇腹に肘打ちされた。
なぜか問うとルアは若干不機嫌そうに言う。
「落ち着いて。この人、女神じゃないよ。ここも天国でもないみたい」
「……なん、だと?」
こんなにも魅了されてしまう場所なのに?
だったらどこだというのだろうか?
その疑問は銀髪美少女が抑揚のない声で答えてくれた。
「……ここは、最弱のダンジョンの最下層……と言っても6階層」
「可笑しな話だね。あんなに落ちたのに6階層って」
ふむ、たしかにそうだね。
冒険者カードを見ても最下層の6階層って書いてあるししょうがないとも思うけどな。
「まあ、なんにせよ生きていることが重要だな。とりあえずここから出たいんだけど……銀髪美少女ちゃんの顔を見る限りじゃ知らなさそうだな」
俺が言うと彼女が少し不機嫌そうに口を尖らせた。
「むぅ……ソウ」
「ん?」
「ソウ・ブランカ、ソウって呼んでほしい」
どうやら銀髪美少女ちゃん……もとい、ソウは呼び方が気に入らなかったようだ。
「わかった。よろしくな、ソウ。俺はリューキ・カワノだ。好きに呼んでくれ」
「あたしは、ルア・プレッタ。よろしくね」
俺とルアの簡単な自己紹介を済ませるとソウは嬉しげに「ん!」と返す。
「で、話は戻すけどソウはここから出る方法は知らないよね?」
「ん、知らない」
やっぱりかぁ。
そんな気はしてたんだよね。
「今まで聞くかどうか迷ったんだけどさ、ソウはどのくらいここにいるの?」
「……1年くらい?」
「「…………」」
ある日、突然、強制ぼっち生活を強いられるとかこの世界ハードだよ!
こんなの耐えられないよ!
俺とルアは涙をグッと堪えて、ソウに歩み寄った。
そして、俺はソウの頭と肩にそれぞれ手を置き、ルアはソウの腕を掴んでいる。
「もう、大丈夫だからな! もう1人じゃないがらな゛ぁ!」
「これからは! あ、あたしたちがいるから! 3人でがんばっていこうね!」
「……う、ゔんっ!」
「ここから出る方法も3人ならなんとかなるかもしれないしな!」
「そうね!」
「が、頑張ろうね?」
なんか3人の結束が一瞬で高まった気がするよ。
まあ、それはそれで良いとして、これからどうするかだよなぁ。
しばらくはここで住むことにはなるのはもう覆せない訳だし、ここの案内はソウに任せて大丈夫だと思う。
しかし、ここで過ごすのかぁ。
落ち着いたいい雰囲気だとは思うけど……。
問題は、この俺の目の前で涙ぐんでいるルアとソウなんだよな。
なにが問題かって? わかるだろ?
ここはダンジョンの最下層。最下層と言っても他の階層に比べれば小さいのだろうけどそれなりに広い。そんで、こっから出ることも、ここに来る人なんてほとんどいないだろ。
いたら最弱のダンジョンなんて呼ばれないと思う。
それを鑑みると、密室と言える。……大きな目で見れば言えると思う。
そんな密室でこの2人と……この可愛すぎる超好みの超絶美少女達と暮らすことになる。
俺は、今日からとんでもない状況下に置かれたも同然だ。凄まじい禁欲生活が待っているはず。
俺は、ゴクリと喉を鳴らす。
これは茨の道だ。
俺がもしも獣などになってしまったら死を覚悟しなければならないかもしれない。……そうなってしまっては修羅の道と言えるけど。
これは、意識したら負けだな。
ったく、どんな道でも来やがれ!
と、覚悟を決めていたらルアとソウがこちらを向いてきた。
「どした? ソウがここを案内してくれるの?」
「ん、それは後で、する」
「んー、それも良いんだけど、みんな今日、知り合って初対面だからやっぱり信頼性に欠けると思うんだよね。信用は、できそうなんだけどね」
「ああ、たしかに」
そう言えば今日知り合ったばっかの人だった。
ソウはともかくルアはなんか一緒に死を覚悟したからか、すっかり忘れてた。
「……え、初対面?」
ソウが不思議そうに俺達を見ながら言う。
たしかにそう思っちゃうよね。
「そうだよ。俺ら2人とも今日、冒険者になってここに来たんだよ。成り行きで一緒にダンジョンに行こうってなったんだ」
「ああ、だから最弱のダンジョンに来たんだ」
たしかにこんなダンジョンは初心者以外には来ないもんな。初心者でも来ないらしいけど……。
「そ! まあ、冒険者になって初日でこうなるとは思わなかったなあ」
「俺も旅の初日にこうなるとは思わなかったよ」
人生、山あり谷ありだな。
それにしても俺って本当に幸運100なんだろうか?
もはやマイナスじゃね?
良いことがなにも起きてない気が……。
いや、ルアとソウに会えた!
そう考えれば俺は幸運の持ち主だ。
疑っちゃいけないんだよ。例え、この世界に来て、いきなり恥ずかしい目に遭ってたとしても!
まあ、それはいいとして。
「それで? 信頼性がどうとかって言ってたけど」
「……ん、お互いのステータスを見せ合いたい」
「その方が信頼もしやすいと思うしね」
「んー……」
やっぱりか。
別に良いんだけど……。
さて、どうするか。
ステータスを見せるのは構わないんだけど。
そのステータスを隠蔽するかどうかだな。
いや、でもここで多分長い間住むことになるし、隠し続けるのも無理があるか?
俺も一応、速く強くなりたいとは思ってるからなぁ。
けど、称号はどうするかな。
恥ずかしいし突拍子も無い気がする。
でも、この世界で信頼の置ける人を作れるまたと無いチャンスでもある。それも2人も。
「わかった。俺も見せるよ」
「……ありがとう。じゃあ、まずはわたしから」
そう言ってソウはステータスを表示状態にした。
ソウ・ブランカ 15歳 女 Lv.7
体力 26/26
魔力 140/140
筋力 25
魔攻 54
防御 33
魔防 52
俊敏 19
持久 20
器用 37
幸運 40
称号
逃亡者、宝石、可憐なる者
スキル
火魔法Lv.8、風魔法Lv.4、水魔法Lv.3、土魔法Lv.6、魔力操作Lv.9、魔力回復速度上昇Lv.10、遠見Lv.4、生活魔法
ユニークスキル
状態異常無効、毒無効
状態
健康
なんか強くない? レベル7とは思えないんだけど。
「なんか……すごいね」
と言ってる割にはちょっと引き攣った顔をしているんだがなぜ?
まあ、それはともかく本当にすごいな。
「ああ、どうしてこんなに?」
ソウは少し頬を赤く染めながら……。
「暇……だったから……。あと環境も良い」
「ソウ、ごめん! でもたしかにそれなら育つよな。環境もたしかに落ち着いた雰囲気だしな」
そうだよ。ソウはずっと1人だったんだから察してやれよ、俺。
「ん、でも、そうじゃない」
「どういうこと?」
「それは、また説明する」
「わかった。次は、あたしね」
ルア・プレッタ 15歳 女 Lv.3
体力 18/18
魔力 87/87
筋力 20
魔攻 21
防御 25
魔防 30
俊敏 15
持久 20
器用 34
幸運 60
称号
逃亡者、可憐なる者、視る者
スキル
氷魔法Lv.5、風魔法Lv.2、水魔法Lv.1、魔力操作Lv.4、魔力回復速度上昇Lv.4、生活魔法
固有スキル
心読
状態
健康
さっきから気になってたものがヤバイと思って聞かない方がいいと敬遠したものがまた出てきやがった。
いや、だって逃亡者とか聞けなくね?
道理で微妙な顔をするわけだ。
てことは、あれか?
ここに落ちる条件って称号に逃亡者がないとダメってことか?
「多分そう……」
まあ、そうだよな。
実際、落ちる時に穴が開いたのはルアのところだし。
まあ、だからと言って見捨てる道はなかったからしょうがないって割り切ろう。
逃亡者についても2人が言いたくなったらで良いや。
「ありがとう。ソウ、リューキが逃亡者については聞かないって。ありがとう、いつか必ず言うね」
「……ありがと」
うん。まあ、いいさ。
その称号は君らを信頼しない理由にはならいし。
うんうん…………。
「って心読むんじゃねえよ! いや、思考か?」
「やっと反応した。思考の方が合ってるかも。完璧に分かるわけじゃないけど」
「なるほどな。なんというかいろいろと納得した。妙にものわかりがいいと思ったよ」
「……ごめんなさい」
「なぜ謝る?」
「勝手に心を読んだから……」
「それはしょうがないだろ。初めて会う奴に心を開けって方が無理な話だと思うよ」
「ん、安心する、方法あるなら、迷わず使う」
ソウもいいやつだよな。
速く安心したいってのはわかるよ。
ルアはここに落ちてから不安そうな顔をしてなかった。不安じゃないはずが無いのにな。
「ぶ、不気味とか思わないの?」
「思わない、わたしもそのスキル欲しい……」
「思わないよ。ただ、そうだね。あんまり心を読まないで欲しいかな。いろいろ恥ずかしいし……」
恥ずかしいに決まってる。
今、思い出したけど初めて会った時とかありがとうって言われたよな?
あの時、ベタ褒めだったもんなぁ。さっきソウに会った時もなんだけどね。
それを思いっきり聞かれるのはさすがに恥ずかしい。
「わかった。……ありがとう」
「大丈夫、だよ?」
「それに、俺達にそのスキルを教えてくれたんだ。充分、信頼できると思うよ」
と言って笑いかける。
それにしてもこの2人、年も同じだしすぐ仲良くなりそうだよな。互いに素直そうだし。
2人を見てると妹を思い出すな。
妹は俺と同い年で義理の妹だけどね。今頃何してるのかね。
それはともかく……。
「……次は、俺だね」
リューキ・カワノ 16歳 男 Lv.5
体力 54/54
魔力 96/96
筋力 46
魔攻 43
防御 51
魔防 48
俊敏 49
持久 55
器用 39
幸運 100
称号
異世界人、勇者、パーフェクトボディ、羞恥を耐え忍ぶ者
スキル
鑑定Lv.10、雷魔法Lv.7、光魔法Lv.5、闇魔法Lv.5、魔力操作Lv.7、魔力回復速度上昇Lv.4、身体強化Lv.8、思考加速Lv.7、体力回復速度上昇Lv.9、体術Lv.3、剣術Lv.6、生活魔法、気配察知Lv.4
ユニークスキル
アイテムボックス、身体支配操作、完全隠蔽、秘密の会話、二刀流剣術Lv.6
固有スキル
物理操作
恩恵スキル
勇者の心意気、天賦の才能
状態
健康
結局、俺は隠さないことにした。
さて、これを見て2人の反応と言えば。
「「…………」」
黙ってしまった。そりゃそうか。
どうしたもんかと思っていると。
「異世界人? 勇者? なんかいろいろとすごいね」
「まあ、な。この前、王様に召喚された」
「なんか、そんな感じの噂を聞いたかも。近頃、勇者の召喚を行うだかなんだかって。村にいたからよくわからないけど……」
ルアは、なにから突っ込めばいいかわからない感じなのだろう。
俺も逆の立場だったらそうなるな。
一方、ソウはというと、眠そうな目でこちらをキラキラして見ている。ええ……?
「……リューキがいれば、退屈しなさそう」
「ソウって娯楽に飢えてそうだよな……」
ずっとここにいたし、という言葉は飲み込む。
「それより、物理操作って、なに?」
「物質を自由に操れるだけだよ」
それを聞いたソウは目をさらにキラキラさせる。
「あれをどうにかできるかも……。秘密の会話は?」
「ちょ、ソウ!」
ソウが秘密の会話について聞いてきてさすがにこれはとルアが止めに来た。……気持ちはわかるよ。俺も恥ずかしいし
「ルア、念話……気にならない?」
「ぅえ!? いや、気に、なるけど……」
おや? ルアの勢いがなくなったぞ? 顔を真っ赤にしてて可愛いけど、そろそろ止めないとな。
「ソウ。それに関しては、俺が恥ずか……んむぅっ!?」
「ソウ!? そ、ちょ、えぇ? 離れて!」
なんと、止めようとして肩を掴もうとしたらそのままソウにキスをされたのだ。
暖かい、柔らかいといろいろと快感が駆け巡る。顔もかなり熱い。
もう、最高だ! 初めてだったけどこんな美少女となら……っと、いけないいけない。落ち着け、俺。
これは驚いた。もう頭の中パニックだよ。
なにやらルアもいろいろとパニクってるみたいだけどソウを引き剥がしてくれた。
少し名残惜しく思うけどルアが少し睨んできた気がするので今の考えはなかったことに……。
さて。
「ソウ! なにやってるの?」
「キス」
「いや、わかってる。わかってるんだけどそうじゃなくて!」
ルアの声にソウは特に気にした風もなくこちらを見て、指を唇に当てながら頬を少し朱色に染めて……
「……スキルの実験、ね?」
と、のたまう。
ふと思う、いつフラグを立てたのやら、と。
多分、ソウは念話に心惹かれただけだろうと思う。
そう考えると少しの脱力感を味わう。
残念だけどまあいいか。
『ソウ、聞こえるか?』
『ん、これすごい』
「成功だな」
「ん、本当にすごい!」
少しテンションが上がっているソウを見てルアは少し疲れたように言う。
「なんかソウって少しズレてるというかよくわからないよ……」
「たしかにな」
「なんか少し嬉しそう」
ジト目でこっちを見るルアから目を逸らしてソウを見る。
「で、ソウは満足したか? そろそろ案内とかしてもらいたいんだけど……」
「ん、わかった。でも、その前に、これ見て?」
と、言ってソウが手渡してきたのは1つの石だ。
なんの変哲もない石に見える。
試しに鑑定を使う……うん、普通の小石だ。
それをしげしげと俺とルアが観察しながら話す。
「ねえ、ソウ。これ何かあるの?」
「鑑定しても普通の石だぞ?」
「普通の石? どうしてこんむっ!?」
「っ!?」
この時、俺とルアは心の中で叫んだ。
『『嵌められた!!』』
と。
ルアが普通の石かと尋ねた時に目が合った。その瞬間をソウに狙われてキスさせられた。
そして、ソウとはまた違う柔らかさが伝わってきて俺はもう、もう、固まった。
一方のルアは顔をこれでもかと赤くしている。ソウに怒りの矛先を向ける。
「ちょ、ちょちょっとソウ! なにするの!」
「……どうだった?」
「ちょっと良かっ、じゃなくて!」
「……実験」
「あなた、暴走しすぎじゃない?」
『ルア、聞こえる?』
「へ?」
『実験、成功……。ルア、嬉しかった?』
そう問われたルアはそっぽを向いて。
『……知らない』
そんな2人を眺めて、これから俺に訪れるであろう苦難の連続が怖くて仕方がない。
だって、ねえ? 2人の美少女としてしまったんだよ?
煩悩退散!!
ハァ、がんばろ……。
いろいろと強引ですかね?