7 今日から平民
コノコ、平民になりました。
「というわけだから、よろしくねコノコちゃん♪」
「よろしくお願いしやーす……」
あたし、土田彩絵。じゃなくて、今はコノコ・トアル。……でもなく、コノコ・ニコニコになりました。
名前がふざけているようにしか思えへんよね! やんね! なんやねん、ニコニコって! ふざけてんの!? ありえへんやろ!
そして、今日からお世話になる独り暮らしで平民のニコル・ニコニコ。2525番地に住む女性。うん、なんかもう、ツッコむ気も失せるわ……。
「それにしても、姫を預かるなんて初めて! 楽しそうだなってずっと思ってたの♪」
「姫って楽しそうだなって思えるくらい簡単に預かれんの……?」
姫を預かることに緊張するどころか、ニコルは楽しそうだった。
楽しそうだなって思ってたって、姫って預からせてもらったりするの超絶レアじゃないん? そういうこと、よくあんの?
異世界って、よくわからない。もうなんか、うん。疲れたわ、あたし……。
「それで、コノコちゃんってなんで追放されたの?」
「追放?」
え、あたし追放されたん? つーか、そういうこと普通に聞いちゃう感じなん? ニコルって、というか異世界の住人、デリカシー全然ないな。
「口悪くからちゃう?」
「あぁ~」
「いや、納得できんの!?」
口悪いから追放されたってそれ、理由になってんの!? ニコル、本気で納得してる!? 何その顔、意味分からん!
彼女はあたしの顔をじろじろ見てからにやにや笑った。し、失礼やなこやつ……。おとなしそうな顔して、実は性格悪いんか。あたしは一応元姫やで。
「ま、私の家に来たんだから、私の言うことはちゃんと聞いてね♪ 元姫っていう言い訳はできないから要注意♪ そんじゃあ、今日からよろしくねっ♪」
「音符つけんのやめてくれへん? 超イライラするんやけど」
ほんまイライラする。いちいち語尾のトーンあげるなっての。うっとうしいねん。
つーか、ニコルさん超上から目線やん。ま、もうあたしは姫じゃないからいいのか。
てゆーか、どうやって自力で姫になんの? まさか血のつながった兄と結婚ってわけにはいかへんやろうし……。
でも、こういうのってなんかわくわくする。これぞ、RPGって感じやね!
え、それとはちゃうって? まーまー、細かいことは気にせんと気楽にいこうや。スマイル大事やで!
「まあまあ、そうカリカリしないでよ! 大丈夫大丈夫! きっとコノコちゃん姫の素質あるだろうから、姫になれるよ!」
「ビックリマークもうっとうしいなあ……」
音符つけへんかったらいいってもんちゃうねんけど。なんなんこの人。つか何歳?
精神年齢はかなり低めやな。あたしの精神年齢は死んだときの年齢を足して20歳くらいとすると、この人は……うん、幼稚園児レベルって言っていいんちゃうかな?
「もう、コノコちゃんってツンデレ? そーゆーのマジかわいい!」
この人のテンション、うざいんやけど……。
そういうわけで、あたし、コノコ・ニコニコは、姫になるために修業を積みます!
……って、なんであたし姫にならなあかんの?