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5 バナナの皮拾い

「はい、早く拾ってー」

「ほらほら、詰まってるからそっちから持ってきてー」


 あたし、唖然。

 目の前には、40代くらいのおばちゃんたちが大声で叫びながら、地面に落ちているバナナの皮を拾っては機械の中に入れていた。なんやこの光景。


「今日からコノコはここで働くのよ」

「これ、姫がする仕事!?」


 あたしは王妃の言葉に思わず叫んだ。なんでやねん。

 なんで、せっかく異世界で姫として生きれると思って楽しみにしとったのに、わざわざ異世界でバナナの皮拾わなあかんねん! 大阪でも、バナナの皮なんかリアルで落ちてへんわ!!


 なぜ、こんなにもバナナの皮が落ちているのか。それには、ちゃーんと理由があったらしいねん。

 まず、猿が大量発生しているということ。そして、すぐちかくのバナーナの木にできるバナナを食べて、皮をそこらへんに捨てている、と。

 それがじゃまやからとその周りの人たちは踏んだり蹴ったりしてどんどん街の方にバナナの皮が集まってくる。すると、あら不思議。

 足の踏み場もないほど、バナナの皮が住宅街に落ちてるねん。アホか。


 そんなわけで、この大量発生しているバナナの皮を拾うという仕事をしなければならないと。

 国の姫が。5歳の子が。

 バナナの皮を。猿の捨てたものを。

 拾う。捨てる。投げ飛ばす。


「なんでやねん!」


 叫ぶしかなかった。嘆くしかなかった。だってさ。


 ――――バナナの皮拾いやで?



あたしはため息をつきながら住宅街に散乱するバナナの皮を拾う。腰が痛い。あたしはばあさんか。

 拾う、袋に入れる。拾う、袋に入れる。拾う、袋に入れる……。


「疲れるわ~~~~!」


 あたしは叫んだ。なにが拾う、袋に入れるやねん。そんなんしてられっか。

 拾う、投げ飛ばす。拾う、投げ飛ばすや。

 あたしはバナナの皮を拾ってはそこらへんに投げた。

 拾う、投げ飛ばす。拾う、投げ飛ばす。


 数秒後、ナスみたいな顔したおばさんに頭ゴリゴリやられた。あたし、姫やで? オバサン、分かってる?


 仕方なくバナナの皮を拾っていく。なんやねん、どうせまた増えんねんから、拾ったって無駄やんか。いっそのこと、観光名所にすればええねん。バナナの皮が落ちてる住宅街なんて、世界中どこを行っても見られへんで?

 リアルでバナナの皮踏んですっ転ぶ人がおったら、おもろいやんか。なんで拾わなあかんねん。ええやん、これで。

 しかも時給少ないし。銅貨一枚ってようわからへんけど、なんか、200円ってことらしい。マジで?

 時給200円は、労働者組合が出動せなあかんのちゃう? あかんやろ、いろいろと。


 もやもやといろいろ考えていると、近くで叫び声が聞こえた。うるさいなあ。

 高い声出すなよ。うるさいねん。頭痛いわ。

 でも、その考えは、目の前に現れた毛むくじゃらによってかき消される。


「サルー!」


 どっかで、オバハンが叫んでる。そう、サルや。


 ――――どこが?

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