3 米食べたい
「米食べたい!」
「コノコ様、どうかされましたか?」
5歳になったばかりの、あたくしコノコ。元の名前は土田彩絵。
米が食べたい元日本人でございます。
ま、そんな言葉遣いほとんどできへんけどな!
「コノコ様、米、とはどのようなお召し物なのですか?」
どうやら、このメイドさんはあたしが通う幼稚園……いや、アレは幼稚園ちゃうわ。まあ、そういう感じのところで教わったと思ってはるらしい。アホかい。
メイドさんが知らんもんを幼稚園が教えるか。
いや、それよりも、幼稚園のことについて説明。
あの幼稚園は、幼稚園とは呼べない。給食はステーキやらソテーやら、ようわからんのがぼんぼんでてきよる。制服のスカートはフリルがふりふりで、もう、なんかロリータかって感じ。
みんな車で通うし(ただし外車に限る)時と場合と人によっては、自家用ヘリコプターで飛んでくる。遠くで飛んでいるのを見るならいいけど、近いと音がうるさいから迷惑だ。
意味わからへんこの幼稚園に、あたしは通わされている。英語とかもやらされんねんけど、一応14年間日本で生きとったから、軽くは英語できるで。そんなにあたしはアホちゃう。
メイドさんが米について話してほしいらしいから、あたしは幼稚園で教わったことにして米のことを話した。……メイドさん、タイ米みたいなやつのことも知らへんの?
「米はな、洗って機械に入れてスイッチ入れたら、ほかほかになってめっちゃおいしいねん! ……じゃなくて、おいしいんだよ!」
うわああ、標準語喋ってるあたし超キモイ! なんやねん、おいしいんだよって! 気持ち悪っ!
あたし、やっぱ標準語似合わんわ。気持ち悪いし、違和感感じるだけやん。無駄や。
「そうなのですか。コノコ様は物知りですね」
あなたが世間知らずなだけだと思いますよ。
あたしは、クイン王妃からタイ米のことを聞いたんだけどなあ。キング王と話してたのを盗み聞きした。そんで、実物をこっそり見た。
名前はタイ米じゃなくって、インディカ米? ちゃうな、これ地球にあるやつや。マイ米か。またそのまんま。
みためはタイ米にそっくりやねんで! ま、日本米じゃなくてそれでもいいけど。タイ米、じゃなくてマイ米食べたことないし。もしかしたらおいしいかもやしな。
「お母様が知ってるはずやから、聞きにいこ!」
もう、大阪弁は隠さない。仕方ないねん、あたし、標準語似合わんから。
あたしは、メイドさんの手を引っ張ってクイン王妃の寝室に向かった。あの方は、めっちゃお寝坊さんやねん。