20 サルの襲撃によるアレ
「ちょっと待ってやああああ!」
健全な女子中学生……ではなく、何故か異世界にボンされた死人のあたし。コノコ・ニコニコ。こっち来て6年目の5歳。頭はおかしくない。少し独り言が多くてぼっち・非リア。
異世界に飛ばされましたとか言っても絶対頭のおかしいイカれたやつやと思われそうやけど、違いますから。ちゃうから。ほんまに信じて。
あたしは、異世界にボンされてん。ほんまやねん。嘘ちゃうねん。
「って、どうでもいいけどほんまなんやこれえええええ!」
コノコ・ニコニコ緊急事態です。サルの大群に追われております。
事の発端は、あれや。バナナ拾っとったらサルが来てバナナ食い散らかすからイラついて殴ってん。したら仲間とか呼んでこられて、それで追われてるんやわ。うん。
アホやなあたし。いや、知ってんねんけどさ。頭のつくりがもともとアホやから、あたし。勉強できへん女の子やし。うん。
その割には元の世界では足が速くて、陸上部とか入っててんけど……。
「あたしは短距離専門やから! 長距離ダッシュはさすがに無理やで!」
叫んだら余計に体力を使うことは分かっている。でも、叫ばずにはいられへん。だってなんなん、ありえへんわ。
サルたちどんだけ体力あんの!? 10分くらいこの状態やから! あたし、体力ありすぎて「気持ち悪い」とか「地球外生命体」とかひっどいことよく言われとったけど、こっちのがよっぽど地球外生命体やわ!
あ、異世界って地球ちゃうから地球外生命体で正解か。っていうか、運動能力は前世からそのままやねんな。よかった。
……って。
「なにがよかったじゃああああ! よくねえわああああ!」
まったくなにもよくない。誰かほんま助けてください。無理です。もうこけます。食われます。死にます。
お母さんごめんな、あたし死神憑いてるみたいやわ……。10年も経ってへんうちに2回も死ぬとか、絶対死神かなんかろくでもないもん憑いてるで。あたし、分かるで。霊能力とかまったくないけど。
てか、もう、ほんま無理。食われる前に息できへんくなって死ぬかも。ニコル、あたしが死んだら骨はちゃんと拾ってな……。
「フレア!」
なんか声が聞こえた気がする。気付けばあたしは草むらに寝そべっていた。ああ~なんやこの草むらめっちゃ気持ちええや~ん。このまま死ねるわ。あとは周りにシロツメクサでもあれば完璧――――。
「大丈夫?」
「は?」
起き上がる気力なんてなかったはずやのに、びっくりしすぎて顔上げちゃったわ。そこにいたのは、まあ、予想通り。あの人。ある人。アルヒトぉぉぉ!
「うわ、うわ、うわ、なんでおんの? なんでおんの? きもっちわる! ピンチの時にやってくるヒーローキャラとかマジきもっちわる!」
「えっと、何言ってるか分からないんだけどとりあえず大丈夫ってことでいい?」
戸惑うアルヒトはほっといて、あたしは頭を下ろした。うつ伏せで顔ずっと上げてんのは疲れるしな。
というわけで、座った。あれ、体力回復すんの早っ。
「で、なんでこんなとこおんの?」
「え、ほら、ここってバナナの皮いっぱい落ちてるから」
「……ああ」
ところで、なんでサルが全滅してるのかな?(驚きすぎて標準語)




