19 はい、次の日! 日にち変わったで!
「うおおおお!」
やべえ! これはかなりやべえ!
あたしは、目を覚まして起き上がった瞬間に体中に来た刺激を受け、大声を上げていた。そのあとニコルに怒られたのは言うまでもない。
いやいやいやいや、あたしの話聞けよニコル! これは、あれやで! 昨日バナナの皮拾いで屈んだ体勢をずっととっていた故に――――。
いや、難しい説明はやめよう。はっきり言うと、あれです。筋肉痛ってやつです。
太ももいてえ! なんじゃこりゃ! かなりやばいやつちゃうか、これ。今日はバナナの皮拾いできる自信がない……。
「ニコル、これは筋肉痛ってやつやで」
「仕事はちゃんとしてね」
笑顔で言うニコル。鬼やな、あんた。目が据わっているのが怖い。
この状態の、5歳の子どもに、仕事をさせるか? 普通。いや、普通やったら絶対させへん。普通やったら。そうつまり、ニコルは普通ではない。
まあ、普通やないよな! だって、どう考えたっておかしいやん、借金してる時点で! 借金して元姫であるあたしを預かっている時点で! 充分、普通じゃないわ!
「……ニコル、ちなみに仕事って」
「バナナの皮拾い以外にないから」
「ですよねー」
そんなわけで、コノコ・ニコニコ、5歳。今日も元気にバナナの皮拾いやってきます。
場所は、昨日と同じ。時間も、偶然同じくらい。だから、もしかしたらアルヒトに会えるかもしれない。別にあったところで何ってわけではないけど、また手伝ってもらえたらそれはそれで楽できるしな(悪だくみ)。
まるでいいいたずらを考え付いたような表情をしながら、あたしは昨日行ったあの場所へ向かっていた。……っていうかさ、もともとの原因であるサルをどうにかすればええんちゃうの?
だめなん? サルぶっ飛ばすのはだめなん? あたし、ぶっ飛ばせんで?
「まあ……これが仕事やしな」
昨日綺麗にしたばっかりのその場所は、サルのおかげでバナナの皮だらけだった。足の踏み場もないほどに散乱している。
なぜ。なぜたった一日でこんなに散らかすことができる? サル、おまいら……天才やな、ある意味。でも、その能力を発揮する場所、絶対間違ってる。現にあたしを困らせてる。
いやでも、拾うだけでお金もらえるからむしろラッキー? うーん、でも、やっぱりバナナの皮拾いはちょっと面倒やから嫌やな。結構レアな体験ではあると思うけど。
少なくとも、元いた世界ではこんな仕事できへんかったはず。というか、バナナの皮がそこら中に落ちてるとか、レアすぎる。超レア。
元の世界でこんなにバナナの皮落ちてたら、おそらく暇人が「くそわろた~」とか言ってツイートするんやろうな。暇人ニートめ、黙ってバナナの皮でも拾っとけ!
……って、だから一体あたしは誰になんの話してんねん。この世界に暇人ニートは多分おらへん。いても、別にあたしには関係ないし、っていうか元の世界にいたとしてもあたしに関係ない。
とりあえず、独り言多すぎて死にたい。なんなんあたし、めっちゃヤバい人やん。




