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1 拝啓

 拝啓お母さん。あたし、ちょっくら異世界行ってくるわ。

 ――――とは、直接お母さんには言えへんわけやけれども。


「手続きが出来ましたので、さっそくトアル国のキング王とクイン王妃の娘として生まれ変わっていただきます」

「オッケー!」


 つか、名前がそのまんまやな。なんやねん、クイン王妃って。

 まあまあ、どうでもええわ! とりあえず、異世界行ってどっかの王子と結婚すればええんやろ? 異世界転生ファンタジーってあんま興味なかったから設定知らんけど、適当にやってれば何とかなるやろ!


「それでは、よい人生を」

「はいよ!」


 よい人生ってなんじゃそりゃ、と思いながら目を閉じた。




 *




 転生するときってこんなんやねんな。一言で言うと、エレベーター乗ってるみたいな感じ? 重力がくるというか、なんというか。

 とりあえずまあ、あたし転生したみたいやわ。すげえすげえ。


「かわいいねえ」

「なんて名前なの?」


 あたしを囲むちびっ子たち。男の子、女の子、女の子、男の子……四人もおるんか。どの子もみんな、美形揃いやで!

 もしかしてこの子らみんなあたしのお兄ちゃんお姉ちゃん? あたしの方が精神年齢は高いけどな。

 にやにやしながらあたしの顔を覗きこむちびっ子たちを眺める。なんで異世界ってブスがおらんのやろうな。


「この子の名前はね、コノコよ」


 あたしの名前も、かなり適当やった。この子の名前はコノコって、ダジャレか。




 何年か経ったらしい。

 気づいたら歩いてた。すげえ! あたし歩いたで! 成長や!

 調子に乗って鏡を覘こうとする。そう、あたしはまだ転生後の自分を見たことないねん。

 みんなには可愛い可愛いって言われるけど、お世辞ってことも十分あるやん? だから、ちゃんと顔を見ときたいねん。


 よたよたとしながら重い頭を支えなんとか廊下にあるでっかい鏡の前まで来た。ここは前にも何回か通りかかったんやけど、抱っこしてくれてる人の肩やらが邪魔でまったく自分の顔が見えへんかってん。

 やっと自分の顔が見れる! そう思って覗き込むと。


「なっ、なんやこれえ!」


 まだ、この年の赤ちゃんってべらべらしゃべられへんのやろうな。驚いてお手伝いさんが駆け込んできた。

 それはおいといて自分の顔の評価をすると、星5。完璧や。

 金髪碧眼くっきり二重に白いすべすべの肌。ナルシストになってしまいそう。とにかく、美少女やんあたし!

 すごいでこれ。あたし超美少女やで。ヤバいわ。

 あたしお姫様やってのに、連れ去られたりしたらどうしてくれんねん。



「奥様、奥様!」


 あたしはお手伝いさんに抱えられてクイン王妃(あたしの今のお母さん)のところに連れられた。さっきのことやろなあ、と呑気に考える。

 大阪弁っぽかったから、余計に心配されたんかもしれへん。とりあえず、お手伝いさんが余計なこと言わんように願うだけや。


「コノコ様が、お話しになられました!」

「あら、そうなの!」


 どうやらお手伝いさん、あたしの口調のことに関しては別にどうでもよかったらしい。まったくそのことには触れないで、とにかくあたしがしゃべったってことを言っておりはった。

 そのあとクイン王妃に「お母様って呼んでごらんなさい」と指示されたから、望みどおりに「お母様」と言ったら、この子は天才だとかなんとか言って、二人はスキップしながらどこかへ行ってしまった。頭大丈夫かな。


 それにしても、異世界の親は親バカやねんな。うちのお母さん、あたしが中一の時まぐれでとった数学の100点のテスト見せても「へーすごいやん」ってだけやったもんな。普通、もっと褒めへん?

 だから、クイン王妃マジで親バカに見える。大丈夫かな、ほんと。

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