15 バナーナ拾い終了
「手伝ってくれてほんまありがとーなー! めっちゃ助かった!」
「うん、趣味だからいいよ」
バナナの皮拾いが趣味ってシュールすぎる。あんた、貴族ちゃうんか。
「報酬のお金、半分分けようか?」
といいつつ、アルヒトは多分あたし以上に働いたような気がする。3分の2くらいあげなきゃいけないかも。でも、そうしたらあたしの収入が減るし……。
どうしようかと迷っていたら、アルヒトが口を開いた。
「いいよ、気にしないで。僕も楽しかったから」
「お、おう……」
いや、だからバナナの皮拾いが楽しいってなんやの。ほんまなんやの。怖いねんけど。
まあ、お金いらんって言うんやったら別にあたしはいいんだけど。うん、貴族様やしな。そんな銅貨ちょろっとなんていらんよな。
「じゃあ、僕はこれで。またね、コノコ」
「うお、おお、おう……じゃーね」
アルヒトはあたしに手を振ってから背を向けると、消えてしまった。ファンタジーすぎてついていかれへんねんけど。
なんやねんあの人……。怖いわー。ほんま怖いわー。あたしを呼び捨てにしたことも含めて。
あたし、ああいうの慣れへんねんなー。恋愛とか全く興味ない人やから。
「……てか、これどうしよ」
あたしは、山積みにされたバナナの皮を見上げため息をついた。
結局、1時間ほど彷徨ってさっきのお店? にたどり着き、バナナの皮を集め終わったと伝えた。そしてもう一度さっきの場所に一緒に戻る。バナナの山は荒らされたりはしていなかった。
「おお、コノコちゃんよくやったねー」
ニコルがバナナの山を見上げて感嘆する。まあ、手伝ってもらったんだけどね。だけど、ややこしくなりそうだから黙っておいた。
「じゃあ、約束通り銅貨6枚渡すから、店に戻ろう」
おじさんがそう言って歩き始めた。あのさ、バナナの皮どうすんの?
後始末を誰がするのか気になったけど、みんななにも言わんから気にしないことにした。別にあたしは集めるだけでいいんやろうし、それ以上は求められないはず。
お店に戻ってお金を受け取り、ニコルと一緒に帰り道を歩く。ニコルはにこにこしながらあたしを見つめた。
「コノコちゃん、よかったねぇ。これで、一定の収入が得られるね。明日も、頑張ろうね」
「え゛っ」
明日も、ってことは、明日もバナナの皮拾いさせられるってこと!? いくら5歳やからって、もうちょっとマシな仕事ないんかい!
たしかにバナナの皮拾いが好きなアルヒトみたいな物好きもいないこともないらしいけど、でも、あたしはこんなん全然好きちゃう。
過疎地か、ここ、過疎地やからか! だから、全然仕事のレパートリーないんか!
「ニコル、他の仕事ないん?」
「残念だけどないかなあ」
眩しいほどの笑顔で返事をされ、あたしは肩を竦めた。そうですか、所詮あたしにはバナナの皮拾いがお似合いですってか。
てか、ニコルはなんの仕事してんねんやろ? まあ、借金なかなか返せてないみたいやし、言い方悪いけど家はボロいし、たいして収入にならんのやろーなあ。
そう思いながら、あたしはニコルに質問した。
「なーニコル」
「んー?」
「ニコルはなんの仕事してんの?」
「えー? それはねー……」
ニコルはにやにやしながら「ねー」の部分をのばしてもったいぶる。うぜえ。
すると彼女はあたしの心情を読み取ったのか、慌てて口を開いた。
「あの、村の役所の雑務やってるよ」
「……へえ」
「えっ、もうちょっと反応してくれてもいいよね!?」
そんなん言われても困る。だって別に、雑務って偉い役職じゃないやろうし。知らんけど。
「雑務って、なにすんの?」
そう訊いてみると、ニコルはなぜか誇らしげに胸を張り、笑顔を見せた。さらに腕を組み始める。
「それはねえ、みんなのご飯を買ってきたり、掃除したり、とにかくすっごい役職なの!」
「それ、ただの何でも屋やん」
悪く言えばパシリ? まあ、一応お金もらってるからパシリではないかな。
「えー何それコノコちゃんひどいー!」
「耳元でうるさいな」
まあ、とりあえずニコルは雑用係ってことやな。だから給料安くてなかなか借金返されへんねんやろ。もうちょっとまともな仕事すればええのに。
いや、でも役所務めって結構まともな仕事かもしれへん。うーん、ニコルってそういうタイプじゃないと思うんやけどなあ……。
そんな感じで、無事帰宅した。




