12 元姫、おばあちゃんやった。
「元姫、さん?」
あたしが遠慮がちに聞くと、そのおばあさんはゆっくりと頷いた。
えーーーー! そんなことってあんの?
いや、ありえへんことではないけど、でも。普通、元姫と言われておばあさんは想像せえへんやろ。
同い年くらいの子か、少なくともクイン王妃らへんの年くらい? おばあさん、世話されてへんと家出たらええやん。まあ、今さら出たら余計大変やけどな。
いつからここにおったんか、それが気になる。
「って……ニコル、なんで驚かへんの?」
あたしは、ふと隣にいるニコルの顔を見てそう思った。このおばあさんが元姫と分かっても、普通の顔をしている。え、まさか知ってたとか?
そうなんやったら、最初に教えてくれたらええのに。なんやねん、もう。
「なんでって……当たり前でしょ? 姫をやめさせられた子はね、1年経つとおばあさんになっちゃうのよ」
「どええええええ!」
頭が吹っ飛ぶかと思った。1年で、おばあさんになるん!? あたしも!?
ニコルの体を揺さぶりながら問い詰めると、ニコルはいろいろと説明をしてくれた。ただ、ニコル。
――――もうちょっとまとめて話してくれへん?
「えーとねー、なんかよく分かんないんだけど、とりあえず1年くらい経ったある朝、気付けばおばあさんになっちゃった~……みたいな? 私もそんなに知らないよ、姫じゃないもん」
ニコルはてへっみたいなポーズであっけらかんと言った。開いた口がふさがらない。
「じゃ、じゃああたしも?」
驚きながらそう尋ねると、彼女は笑顔でうなずいた。
「もちろん! 1年経ったらおばあさんになるよ」
「もっとはよ言ってや!!」
あたしは力の限り叫んだ。なんで、そんな大事なことを誰も教えてくれへんの!? ひどない!?
異世界、薄情者ばっかりやな! マジひどい、マジひどい!
「え、え、それって、おばあさんになったあと姫になってもあかんの?」
「うーんと、まず姫の適正年齢が15歳までで、16歳以上は受け付けてないんだって。16歳になった姫が、王妃になるみたいな感じ?」
ニコルはにこにこしながらそう答える。いやいやいやいや、それ、にこにこして言うことちゃうと思うねんけど。
「でも、見た目はおばあさんでも中身は6歳――――」
「この国は、見た目重視だから」
どんな国やねーん。棒読みでツッコんでみたけど、なんか寂しかった。
どうしよう、つまりはさ。タイムリミットあと一年ってことやん? それまでに姫にならんかったら、おばあさんになって一生そのままってわけやん? 姫にもなられへんくなるわけやん?
――――急げよ、あたし。




