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9 働くで!

 ニコルは、まだ寝ている。

 あたしはこっそりと家を抜けだし、靴を履いて町の中心へと走り出した。


「さー、仕事探すで!」


 あたしは早朝に一人で、この街のギルド的なところに向かった。

 さすが異世界、ギルドとかあるんやってさ。ほんまゲームみたいやな。


 ギルドに入って掲示板みたいなところに貼り付けられているチラシを一つ一つ見ていく。


 ――――


・バナナの収穫(銀貨3枚)

・サルの捕獲または討伐(銀貨5枚)

・オオカミの食事の用意(銀貨10枚)


 ――――


「オオカミ、の食事?」


 あたしがまじまじと見たそのチラシには、紛れもなく『オオカミの食事の用意』と書かれていた。




「なんでダメなん!?」

「だってあなた、まだ小さいじゃない。親の許可もなしに、それも身分証も何もないのに働かせたりなんてできないわよ」


 さっそくチラシを持って受付のところに向かったが、受付嬢に笑顔で追い返された。ちっさいってうたってなぁ、あたしこれでも前世で生きとったらもう20歳やで? 立派な大人やん!

 ……と言っても、この受付嬢には通じへんわけであって。


「だーっ! 年齢があたしの邪魔をするっ!!」


 ほんまうっとうしい! どうせ異世界なんやったら、大きくなれる薬とかないんかい!

 ま、あったとしても買うお金はないけどな!


 ……悲しすぎるやろ、なんやねんほんま。異世界生活、憧れてたんと全然ちゃうやん。

 あたし、どうなんの? 今日も明日もあの取り立て屋くんねんやろ?

 今度こそ、あいつらに連れて行かれるんとちゃうん? あたし、殺される? それとも、奴隷として売買される?


「ぎゃー怖い!」


 あたしは、我慢できんくなって、街中で叫んだ。視線が痛いが気にしない。怖すぎるわ。

 異世界来てやっと意識がはっきりしてきたっていうかいろいろできるようになったってゆーのに、んなところで奴隷売買にかけられてたまるか。というか、異世界では奴隷制度あるんかな?

 どうでもいいけど、とりあえず取り立て屋に連れてかれるのだけは勘弁! イカツイ人、というかああいうガラの悪い人、あたし嫌いやねんからな! あーゆーの見てると、心の底からキモいって思う。


 色々考えながら歩いていると、ニコルの家に到着した。

 家に入ると、どたばたという大きな足音が聞こえてくる。


「こ、こ、コノコちゃんっ!! どこ行ってたの!? 心配したじゃない!」

「え、えぇええぇ? ご、ごめん?」


 ニコルは盛大に取り乱していた。もうちょっと大人の余裕というやつを持っといてほしい。というか、ニコルは実際問題何歳なんやねん?



「ギルド!?」


 あたしが先ほどのことを説明すると、彼女はとても驚いていた。目を丸くして、もう、目ん玉飛び出してきそうな勢いやわ。

 ……うん、グロいな。


「そんなところ行って、連れ去られたりしたらどうするつもりだったの!?」

「え、そんときは殴るんちゃう?」


 殴られた。

 ひどいな! あたし、お父さんに殴られたこともないのに……いや、あったな。殴るどころか、何度もぶっ飛ばされたわ。

 つか、あたし今殴られるようなこと言った? なんかニコル、凶暴やない?


「殴るってねぇ! そんなの、小さいコノコちゃんがしたって無駄なのよ? 危険なだけじゃない!」


 ニコルは、もう、なんかとりあえずすごかった。なんというか、あの、愛を感じたわ。うん。

 さっき殴ってきたのやって、きっと愛のむちってやつやね。うん、きっとそうやわ。間違いない。


「……ごめん」


 素直に謝ると、抱きしめられた。あのさー、言っていい?

 苦しいんやけどー。

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