四章(4)
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「おい、見ろよ。あいつら」
エイのような形の補助飛行機体に乗った金髪の男が、視線だけで連れのピンク髪の女に地上を示した。
「……見覚えがある。あっちの茶髪、アタシの攻撃を素手で受け止めた奴だ」
背中に飛行機の主翼のようなものを背負った女が犬歯を剥き出しにして笑みを浮かべた。
「野蛮人め」
女からの返答はなかった。茶髪の少年の蹴りを受けて、地面に落下したのだ。
それを冷ややかに見届けると、翼を生やした黒髪の少年の銃撃をよけるために、男は左斜め前へ体を倒した。すぐに回転して、さっきまでとは立ち位置が逆になった少年を見上げる。
「オレは戦士『幼天使』の和泉翼。お前らをぶっ飛ばしに来た!」
「お前たちに関して情報は少ない。だが、俺の邪魔をするならば、排除するだけだ!」
男は右手を少年に向けた。
「我が身をもとに、百千の槍を呼び起こす(セルビヤ・エルス・アーメリア・ブレイムズ)!」
人差し指と薬指の先、そして手の平に穴が空き、白みを帯びた光線が発射された。
少年はとっさに避けたようだが、意外だとでも言いたげに顔を歪めた。
「アーメリア・プレイシス一等訓練士、いざ罷り越す!」
「あー、いってえ」
大きな穴をあけたビルの五階の壁から離れていきながら、ピンクの髪の女は手を振った。
足の跳躍だけで自分より体一つ分、上空に現れた茶髪の少年の蹴りを受けて、ビルに激突したのだ。
「やっぱお前すげえな! マジすっげえ!」
女がぶつかったビルの向かいにある少し低いビルの屋上に降り立ちながら、少年は言った、新しいおもちゃを見つけたような笑顔をしている。
「そりゃどうも」
女は軽口を装ったが、内心では感心していた。
(意識してるかどうかは知らないけど、ずいぶんうまくできた奇襲だな。異常な白い翼に、殺傷力の高い銃。どうしてもあっちの黒髪にこちらの注意は向いてしまう。その隙にこいつはあのスピードでアタシの死角をつき、この鉄よりも固い高機動エンジン搭載補助飛行体・モデルエール型を破壊しようとしたってワケか。実際にはできなかったとはいえ、なるほど?)
そして女はニッと唇を吊り上げた。少年と同じような、新しく面白いものを見つけたような顔だった。
「なんだか、ちょっと見ない間に成長したようじゃん」
背中の飛行体は大きくへこみ、時折プスンプスンとイヤな音を立てているが、それはそれで仕方ない。なってしまったのだから。
「もう一度アンタとは戦ってみたかったんだけど、残念ながらアタシには大事な任務がある。だから……止められるもんなら止めてみな。それが目的でここにいるんだろ?」
少年は女を見上げ、助走を開始しながら答えた。
「そうだ! おれは戦士『不知火』の相川奉助。よろしく!」
「和の心を以てこの世に大樹と成らん(グレイカム・オン・オラクル・ダライア)!」
女の両腕、両足が黒く変色していく。
「オラクル・ジート一等訓練士だ。容赦はしないぞ?」
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