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『黒王雪姫の楽園』

動揺すると「ますです」が出る蛍ちゃん。


さぁ、私は生き返ったですよ!書くぞーたくさん書くぞー

「じゃあ、この名前で決定ですねー、ボク的には気恥ずかしいのですけど」

「仕方ねーだろ、多数決なんだからよ……それよりオレの案が結局混ざった事の方が最悪だぜ……」

「お兄ちゃんの案、可愛かったよ?」

「……ちっ、嬉しくなんてねーからな、恥ずかしいんだからな」

名前は『黒王雪姫の(ブラックスノー)楽園(ガーデン)』。ユニオンマスターは蛍、サブマスターは虚。


「思ったより早く決まったな、俺はてっきり半日くらいかかるかと思った」

「俺もそう思っていた、本当に意外と言わざるを得ない」

「蛍ちゃんと虚君を前面に押し出すのは決まってましたからね、頼れる二人が居ると押し付け易くていいですね」

「二人には悪いけどイチに同意かな、アタシらは年齢が少し上でも世渡りが上手なわけじゃないから」

集団の頂点に立つという事は、色々な人を相手にしなければいけない。イチは割と短気な部分もあるし、ハナはそもそも言葉遣いなども含めてそういうのに向いていないのだ。元々集団のリーダー的な立ち位置だったが……結果的に、人を騙すのが得意な虚と人によく好かれる蛍は目立つ場所に居ることに向いている。


「何はともあれ今後は『黒王雪姫の楽園』としてウチらは頑張って行けばいいッスね」

「ええ、そういうことになるわ……ただ、私たちギルドも出来る限りの支援はするわよ?」

本来であれば装備を整えたりなどの補助もするのだが、今回召喚された『黒王雪姫の楽園』の面々は固有装備を備えた状態で召喚されている。

 固有装備自体が極端に珍しいわけではないが、全員が固有装備を初期から持っている状態且つこの人数で召喚された事は今までに無い。


「そういえば、皆が召喚された時に装備していたそれらは『固有装備』という物でね、服を脱ぐイメージをしながら『換装』と言えば換装出来る様になってるのよ……でも今それをすると全裸になっちゃうからそっちの部屋で換装するといいわ、着替えは用意して置いてあるから」

ミーシャはそう告げるが、疑問を持った蛍が慌ててミーシャの近くに寄り小声で聞き返した。


「あの、他の皆と違って、ボクは自分の身体の事とかも変わったばっかりでよくわかってないのです、その服のサイズとか……し、下着の付け方とか」

「あぁ……サイズとかは自動調整されるけど確かにそうよね、セリスに手伝わせるから教えてもらってね、ごめんね気が利かなくて……」

ピクリとどこかの巻角野郎が反応したが、ミーシャは無視して答える。「チッ、自動調整だと数値の情報を手に入れるのは無理か、今度調べておかないとな」なんて言葉は聞こえていないったら聞こえていないのだ。


「あ、これがそうですかね」

セリスと共に蛍が個室に入るとそこには籠の中に入った服があり、ひょいとそれを持ち上げて絶句した。


「こ、これを着るのですか……」

この衣装を唐突に着ることになったが、それ自体は吝かではないのだ、が、明らかにこれは何かしらの意図が働いたとしか思えない。

「まあ、確かにこれならお話に聞いていた通りですわね、お似合いだと思いますよ、ホタル様」

「そ、そうですか? 虚、喜んでくれますです?」

「えぇ、それはもう、大変喜ばれるかと」

「じゃ、じゃあ頑張りますです、急で恥ずかしいですけど」

意を決したかのように息を吸い込み、固有装備を外す。


「『換装』」

 言葉が響くと同時に一糸纏わぬ姿になった蛍は、恥ずかしそうにはにかみながら。

「えと、下着とか、服の着方教えてくださいです」

そうセリスに告げ。

「かしこまりました、ホタル様」

そう言いメイドは可愛らしい少女に手取り足取り優しく教え込んでいく。


 十五分程度経過し、ホールには各々着替えた面々が集っていた。

「お、セリス、蛍はどうした?」

「その、恥ずかしいと仰っていましたが、そろそろお部屋からお出でになるかと存じます……」

苦笑しながら虚に答えたセリスは、ちらりと扉をうかがうと少し開いた扉から、こちらを覗いている瞳を確認した。

 その視線を追った虚も気付き、仕方がないなと言わんばかりに肩を竦めると、それを見ていた瞳が揺れ、決心したかのように扉が少しずつ開く。


「……」

「……虚?」

蛍は言葉を失った虚の目の前に行き「似合ってますか?」と問う。


「凄い似合ってる、って言うとなんか俺が変態みたいだけど、本当に似合ってる、凄く、可愛い」

出てきた蛍はクラシックなメイド服を着ていた。主従を示すその服は、元の世界から繋ぐ二人の絆を示す物でもあった。

「本当ですか? 嬉しいです……」

胸元で手を合わせて喜ぶ蛍は、全てを包み込んでくれるかのような柔らかなオーラを纏っていた。

 それは虚に向けての感情が成せる神聖さではあったが、周りから見てもそれは確かなものであり、皆が動きを止めて蛍に視線を向けている。


 その視線の中で黒雪院の皆が感じた気持ちはもっと感慨深いものであった。黒雪院のメンバーは二人との付き合いは長いし、勿論二人の気持ちも知っていた。主従関係の中に見える確かな愛情は、見ていてもとても苦しいものだった。

 それがどうだ、今の二人を前の世界に見せつけてやりたい。


「虚、あのですね――」

「蛍」

これからも変わらずお傍に置いてください、そう続けようとした言の葉は虚に止められる。

「な、なんですか?」


 穏やかに心が繋がっている。拙い愛情表現を受け入れあっている。


「こういうのは、男からしっかりするものだと思うんだ」

「……え?」

「いや、向こうでは早々口に出せるものでもなかったしな」

主従を示すその服を、喜色満面で着ているのだから、それはきっとそういうことなのだ。


 穏やかな視線に囲まれ、憚ることなく触れ合っている。思い描いた、夢のようではないだろうか。


「これからもずっと、俺の傍に居てくれないか」

「……っ」

息を呑み、目を見開き、その瞳にはジワリと涙を浮かべ始める少女。


「泣くなよ、そんなに嫌か?」

首を横に振る少女。

「じゃあ、答えてくれないか」

穏やかな笑みを浮かべる少年。


「居ります、ずっと、貴方の傍に、どうか、居させてください!」

泣きながら、花開くような笑みを浮かべ少女は少年へと抱き着いた。


「ああ、ずっと一緒だ」

しっかりと抱き留め、笑みを強くする少年。


 その場面を見た者は総じて感じたのだ、穢せず、壊せず、それでも守らなければいけない。そんなモノが今、目の前にあるのだと。

 幸せが続いていく物語が、今ここから始まったのだと。

でも眠いのよ、いえーい☆

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