三人寄れば文殊の知恵、十二人寄れば?
家庭の事情でお引越し及び色々ごたついた挙句、書き溜めていたデータが入ったHDDがお亡くなりになりました、私を慰めてくれてもいいんだよ?ほら?早く!
もきゅもきゅもきゅもきゅ。
「というわけで、ユニオンとやらを作ろうと思う!」
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ。
「俺が考えるにユニオンマスターとサブマスターはもう決まっているような物だからな、当面の活動方針なんかもはっきりとしているし追加で考える物があるとすればユニオンの名くらいだろう」
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ。
「……うん、僕もそれは理解したし納得もしたんだけどね」
そう呟いたのは喜多 沙良、所謂男装の麗人と言われるようなキリッとした美貌を持つ女の子。
「僕」と言っている上に召還時の服装が軽装の騎士鎧の様な物でマントまでついている為、美男子と間違えてしまいかねないが、本人も「これはこれで都合が良いから」と腹黒い笑みを浮かべている辺りでこの集団の一員なのがよく分かる。
「貴方達はせめて蛍から視線を此方に向けて話すべきだと思うのですわ……」
ですわ、なんて今時お嬢様でも使わないような時代錯誤な口調を使っているのは美桜 有栖、別にお嬢様でもなんでもないのだが、昔読んだお姫様の絵本に憧れて口調を真似していたらしっかり染み付いてしまったという救えないおバカさんである。
注意すべきはドリルではない、という点だろう……おバカなお嬢様の代名詞のドリル、それがついていないのであればお嬢様もどきですらないのだ……もう一度述べるがドリルではないのである、非常に残念な所である、自らの個性を中途半端に留めてしまうその姿勢は凄く謙虚な物であるという好意的解釈をしてあげてほしい。
「まぁ仕方ないッス、ほたっちはそりゃもうキュートッスから!」
ッス、なんていかにも脇役っぽい口癖を伴っているのは朝飯 めだか、いかにも元気っ娘と言った感じではあるが有栖とは違い頭も良い、裏表が無いように振る舞い懐に入り込み弱みを握るなんて事を得意としており、彼女のメモ帳にはぎっしりと弱みが連ねられているとか……誰も彼女の真実を知らないので実際にあるかは別として、だが。
ただし身内に甘いのは他の皆と一緒であり、案外他の皆に何かがあった時の為だけに情報を集めているのかもしれない。
「別に、んなこたどーでもいーから早く済ませよーぜ、飛鳥が怖がってるしよ」
「お兄ちゃん、私は大丈夫だから……強面の人が多くてちょっと怖いけど、最初が肝心なんだし余計な事言っちゃだめだよ」
「わ、わかったから怒んなよ……でもぐだぐだしすぎてもしゃーねーだろ?」
「言い方の問題なの、そんなだから勘違いされちゃうんだから……」
「うっ……いや……わりぃ…………」
ふわふわとした雰囲気を纏った小柄な体躯の少女、妹である葛西 飛鳥に指摘され、しょんぼりとしている少し粗野な感じがする男が葛西 翔、義理の兄妹ではあるが非常に仲が良い、妹は外見そのままな所謂守ってあげたくなるタイプというやつだ、対して兄はぶっきらぼうというか粗野なイメージが似合う……悪く言えばヤンキーに見える。
ただ、翔は非常に優しい性格をしており趣味はガーデニングに家庭菜園である上に、手先も器用で小物作りや編み物なども頻繁に取り組んでいて、妹に手編みのマフラー・手袋・セーターとセットで送ったこともあるくらいだ。
飛鳥は非常にお淑やかな少女ではあるが本当に怒ったときには容赦の無い毒舌家になる、以前男子生徒十人の心をへし折った事件などもあった為、怒らせてはいけない人物としてこの集団の中でも認識されている。
「まぁ、皆の言うこともわかりますが……蛍ちゃんも一旦食べるのをやめなさい、虚君と蒼黄君が使い物になりませんからね」
「そうだぞ、変態二人にずっと見られてたいなら食っててもいいとアタシは思うが」
「ハナ、違いますよ、こう伝えるべきなんです、早いとこ真面目に話を進めようとしないと男達は顔面判別つかないくらいブチ転がしますよ?」
「イチ、あんまり脅しちゃダメだぞ……」
「え?脅しじゃなく本気で実行する気ですから大丈夫ですよ?」
「本気だともっとダメだかんなっ!?」
おっとりとした雰囲気で物騒なことを言うイチと呼ばれた男は田中 逸郎、クラスの担任をしている歴とした教師である、趣味は読書であったり如何にもな文系の青年だがやはりこの集団の一員なだけあり内面は腹黒い。
策謀などを張り巡らせるのも好んではいるが、少し自分にとって好みの展開ではなくなったり面倒になったりすると「ブチ転がす」という肉体言語での対話に突入する、危険極まりないタイプなのであるが身内の女性には非常に甘く、よく尻に敷かれている。
ハナと呼ばれたのは山田 華恋、クラスの副担任を務めており逸郎と恋人同士である。
粗野な感じがする喋り方とは裏腹に非常に乙女チックな思考の持ち主で、天然なのかは知らないがすぐに惚気を周囲に撒き散らかす砂糖空気製造機というなんとも独り身の方々を刺激する女性なのだ。
二人とも名前にちょっとコンプレックスを抱いており「イチ」「ハナ」と皆に呼ばせているし、学校では「イチ先生」「ハナ先生」と呼ばれないと生徒相手にはほぼ返事をしなかったりする似た物同士だ。
ただ教師としては優秀であり、生徒からの人気も非常に高い為、学校の特性及び勤務するにあたっての経緯――黒雪院出身者である事が関係している――を含めフランクなその姿勢は暗黙の了解を得た形になっている。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……ごくん。
「ご馳走様なのです」
「貴女がやっぱり一番マイペースなのね……」
ちょっと呆れながらも内心で可愛いわぁと思ってジッと見ていたミーシャも虚と蒼黄とあまり変わらないのだが、結局のところ話を進めるには蛍が必要らしく、仕方が無いとも言えるかもしれない。
「じゃあ名前の案がある人居ますでしょうか」
「蛍倶楽部」
「筋肉の集い」
「失楽園」
「百合の園」
上から順に虚、奏士、蒼黄、沙良。
「虚はボクをどうしたいんですか、奏士のそれは個人的趣味に走りすぎです、蒼黄はちょっと禁断風味が溢れすぎです、沙良のそれもある意味禁断というかちょっぴり洒落にならないです」
蛍からの一刀両断。当然ではあるけれども、碌な名前が出てこない面子である。
勿論奏士を除けば冗談である、恐らく、多分……もう一度言うならば奏士は至って真面目に意見しているという事は述べておく。
「どう考えてもそこの先生方か、ホタルちゃんかウツロ君がリーダーになるんだし、その辺りから取ったらどうかしら?」
「まぁ妥当ですわね……というより元々この中からまともな名前が出るとは思ってませんの」
呆れ顔のミーシャに有栖であるが、半ば予想していたものでもある。なんせ皆が自分勝手でマイペースなのだ、まともに進む可能性は極僅かと言っても生温い。
「あぁ、私は矢面に立つのは御免ですので、蛍ちゃんと虚君に任せます」
「アタシも辞退するよ、正直そういうのは向いてないし」
虚と蛍を信頼しているのもあるだろうが、教え子を生贄に捧げる鬼畜な先生方がここに居る。
「めんどくせーな、時間がかかりすぎだろーがよ……」
「文句言うならお兄ちゃんも案を出せばいいんじゃない?」
「……姫の楽園……とか……」
「……」
「……」
「……」
落ちる沈黙、居た堪れない空気、笑いを堪える虚に蒼黄、可愛いねと言い合う飛鳥と蛍。
言うならば、悲惨、ただその一言である。
「っざけんな!さっさと決めねーからだろーがよぉぉぉぉ!」
顔を赤くしながら「だから嫌だったのによぉ……」と項垂れる翔だが、名前が一向に決まる気配が見えない事による、必要な犠牲だったと割り切るべきなのかもしれない。
「ボクと虚が中心になるなら黒雪院みたいな名前でいいんじゃないですか?」
「ん、まぁそれもそうだな……でも院ではないよな」
「何にしろ早く決めた方が良さ気よね、アタシ達は長居しすぎたら迷惑でしょ」
ああでもない、こうでもないと騒いでいる自覚はあるのか蒼華は苦笑しながら促すが、厨二溢るるお年頃な集団はそこから名前を決めるまでの間に30分程度の時間がかかった事は言うまでも無い。
あえて一幕を挙げるとするならば。
「さっきの『姫の楽園』混ぜようぜ!」
「やめろやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
虚が黒歴史を掘り返し。こっそりとめだかがメモしていた、ということくらいだろう。
ちょっと細かに思いついた設定やら小話やらもぶっ飛んでしまったので覚えてるところを補足するのがちょっと大変。
でも更新再開して頑張るから応援してください、貶されても褒められても喜ぶから!ね!