駆け引き恋ゲーム
紅桜です。
この小説は私が書かせていただきました。
お楽しみいただければなによりです。
セミが鳴き、太陽の照りつける夏。道を歩く一組の男女。
「暑い。」
「そりゃあ夏だもん、暑いでしょ。」
クスクスと笑う彼女は暑さなどまるで感じていないかのよう。ため息をつき道に顔を向けた彼は見つけた看板に目を輝かせた。
「俺ソフトクリーム買うけど、魅梨は?」
「うーん、私はいーや。」
「暑くねーの?」
「暑いか暑くないかと聞かれれば暑いけど。でも平気。」
「すげーな、お前。」
彼はソフトクリームを買い、歩きながら食べ始めた。ちょうど三分の一くらいがなくなったころ、彼女は彼が食べているそれを横から舐めた。
「なっ…!」
目を見開いた彼に彼女は笑って言う。
「一口だけ味見。」
全く悪びれる様子もない彼女に彼はにやりと笑った。彼女の肩に手をかけ、自分と向かい合わせる。そして彼は彼女の口元に顔を近づけ、ペロリと唇の横を舐めた。思わず息を飲んだ彼女に彼は笑う。
「ソフトクリーム付いてた。」
その甘い光景を目にした恋人たちが
「先輩、あの二人この暑い中お熱いっすね。」
「初恋したばっかりの私の目にはいっそ毒だわ。」
いつか、付き合ってもない彼らよりも甘くなれる日は来るのだろうか。
最初はただの好奇心、いつのまにか深みにはまっていく二人。恋は落ちた方が負け、なんて今更付きようのない勝ち負けをめぐり、
もう抜け出せない
駆け引き恋ゲーム