第7話 お昼ご飯はチャーハンがいいな
「さて、俺は帰るとするよ」
「んだよ。もっと周りの奴らと話していかないのか?特に朝霧さんとか」
総司よ。お前は単に朝霧と話したいだけなんじゃないのか?一人で行くのが寂しいから俺たちを連れて行こうってことか?勝手に一人で行け。
「じゃあ僕も帰ろうかな」
さすが彦摩呂だ。アホ総司とは違って話が分かる。
俺と彦摩呂が席を立って帰ろうとすると、総司もそれに続いてついてきた。
「おいイケメン。お前は朝霧に話しかけてくるんじゃないのか?そんでもってお前がついてくると、お前のファンがすごい睨みきかせてくるんだ。なんとかしろ。はっきり言って超怖い」
「だからイケメンってやめろって。あと視線は我慢してくれ。そんでもって朝霧さんに話しかけるのは今日じゃなくてもいいし」
その言葉に納得しつつ(視線には本当に困ってるんだけど)俺たち3人は教室を出た。その時に「桜井君!」と、女性の声が聞こえた気がするが無視しといた。
生徒玄関で靴を履いて外に出てみれば、部活の勧誘が盛んに行われていた。野球、サッカー、バスケ、バレー、バトミントン、卓球、テニス、柔道、剣道、どこの学校にでもありそうな部活ばかりだ。探せば珍しい部活もあるかもしれないが、面倒だから駐輪場へ直行。しようと思ったのだが・・・・
「お前らどうやって登校してる?」
また総司か。お前よくしゃべるなぁ。
「僕は徒歩だね」
「自転車」
「俺も徒歩だ。まあそこはなんでもいいんだけど、途中まで一緒に帰ろうぜ」
(なんでもいいんだったら聞くなよ)
「じゃあ自転車持ってくっから、ちょと待ってろ」
そういって、俺は駐輪場に自転車を取りに行った。
俺たちの帰る方向はおおよそ同じだったみたいだ。俺と総司が少し遠回りになるけど、それくらい全く問題ないだろう。
「おいイケメン。お前はキャッキャした女は嫌いだと言ったが、お前も結構チャラ男なんじゃないのか」
俺は教室での会話で思ったことを聞いてみた。
「いやいや、俺だって一人の男なんだから朝霧さんみたいな可愛い子には興味あるさ。他の男子もそうだっただろ?むしろお前らが興味なさすぎなんだよ」
「ところで彦摩呂。お前の名前長いって話したけど、彦摩呂も十分ながくね?」
「え?俺の話は無視か?お前から質問しといて?」
「そうかな?じゃ何か呼びやすいあだ名を考えてよ」
「おい彦摩呂。お前も無視するのか。お前もそういうキャラだったのか?」
「ヒコ・・・ダメだな。う~ん・・・ヒロ・・・ヒーロー?」
ダメだ。特に思いつかん。ヒロと言うのは彦摩呂の最初と最後の文字をとっただけだ。ヒロは発音しにくいから伸ばしてみた。でもやっぱ彦摩呂のままでいいや。
「え?・・・僕が・・HERO?・・・秋人くん。褒めたって何もでないよ~」
彦摩呂のキャラが崩壊した気がする。いや、もともとこういうキャラなのだろう。だって、知り合いになってからまだ30分なんだぜ?それくらいの時間でキャラを固定させちゃダメだろ。うん。
「お?ヒーローが気にいったのか?じゃあそれでいいんじゃね?」
総司も賛成の様子だった。
「よし!じゃあこれから僕のことはHEROって呼んでよ!」
「おいおい待てって。適当に考えたあだ名だぞ。ホントにいいのかよ?」
「実は僕HEROに憧れてたんだ。仮面ライダーとか戦隊ヒーローが大好きなんだよ」
本人が気に入ったなら別にいいか。
「じゃあ、たぶん俺こっちだから。そろそろ行くわ」
「オイ秋人。たぶんってなんだよ」
「俺こっちに引っ越してきたばかりで地理わかんねぇんだよ。だから道覚えながら帰らなきゃならん」
「ふーん。気になる話だが、また明日だな。気をつけて帰れよ」
「お前らもな~」
俺は自転車に乗って、二人に背を向けたまま手を振った。彦摩呂と総司の帰り道はまだ同じ方向らしい。
(11時30分か・・・凪沙もう帰ってるかな?)
凪沙side
「ーーーーで、あるらしてーー」
他の学校はそうでもないみたいだけど、私の学校の校長先生の話はすごく短い。だからあの校長先生は生徒・・・・・いや、児童だったかな?秋人さんが小学生はまだ児童だって言ってた気がする。私は知らずに、いままで自分たちのことを生徒と言っていた。今思い返せば、私たち児童の中の偉い人たちの集まりは児童会という名前だったはずだ。・・・に人気がある。運動会などにも積極的に種目に参加するようなとてもフレンドリーな校長先生だ。周りには居眠りをしている者は一人もいない。これも校長先生の話が短いおかげだろう。でも、新入生はその短い間でもじっと座っていられないようでごそごそとしている。私も1年生の時はあんな感じだったのだろうか。
そんなことを考えていると、校長先生の話は知らない内に終わっていて、司会の先生が閉会の言葉を言うと1年生は退場していった。私たち6年生は体育館の片づけだ。それが終われば、それぞれの児童が入学式前に発表されたクラスの教室へと向かった。
私の小学校は3組に分かれていて、私は1組だ。教室についたら、すでに数人いて「また一緒だね」と、話している。一人で席に座っている子は知り合いがいなかったのかな?
「凪沙ちゃん。また一緒のクラスだね」
自分の席で周りを観察していていたら、一人の女の子が話しかけてきた。この子は去年一緒のクラスだった子で、仲のいい友達だ。周りをもう一度見渡してみれば、去年も一緒だった子がちらほらと確認できる。気のせいかこっちを見てる男子が多い気がする・・・
「凪沙ちゃん。春休み何してたの?電話しても出ないし家に行っても誰もいなかったし」
「えっと、引っ越しをしたの。電話番号は明日教えるね」
「引っ越し?なんで?」
「ちょっと・・・いろいろあって・・・」
そう、私の両親は春休み中に死んでしまった。だから伯父さんさんに引き取られて、同じく伯父さんに引き取られている秋人さんと一緒に暮らすことになった。知らない人と一緒に暮らすのは不安があったけど、この小学校から転校しなくてすんだし、秋人さんはとても優しい人だった。家事は全部してもらっているし、いつも気を使っていくれているから、私もしっかりしなきゃと思ってる。
「はいはーい。みんな席に戻って~」
ここで先生が教室に入ってきた。なんだかこっちの事情を聞かれそうだったから先生の登場はかなり助かる。
「知ってる人もいると思うけど、私がこのクラスの担任になった綾野圭子です。みなさん、1年間よろしくお願いします」
とても普通な自己紹介だった。ちなみに、去年も綾野先生だった。
その後は、みんな名前を言うだけの簡単な自己紹介が始まった。私は知らない人の名前をちゃんと覚えようと聞いていながらも、頭の隅で昼ご飯をどうしようか迷っていた。
食事はいつも秋人さんが作ってくれるし、いつも「何がいい?なんでもいいぞ?・・・・・やっぱ難しすぎるのは勘弁」と言ってくれている。その度に私は気を使って「なんでもいい」と答えているのだが、秋人さんは逆に困ったような顔をする。だから、今日こそはちゃんと希望を言うつもりだ。今のところはチャーハンがいいなと思っている。あの人の作るチャーハンは、お母さんほどではないけど、とてもおいしい。私はあの人の作るチャーハンが大好きだい。いや、別にチャーハンだけがおいしいというわけじゃなくて、あの人の作る料理はみんなおいしい。秋人さんは料理が上手だ。でも今日のお昼ご飯はチャーハンにしてもらおう
私たちの自己紹介が終わったら先生からの連絡事項を聞いた後、通学団会をするためにそれぞれの教室に移動するけど、私だけ先生に呼び止められた。内容は、今日の午後に保護者を連れてきて欲しい、とのことだった。なるほどって思ったけど、きてくれるかはどうかは秋人さん次第だ。先生にそれを伝えた後、みんなから少し送れて通学団会をする教室に到着した。
通学団会不審者対策のためにやっている。この会議で通学団長、1年生を迎えに行く子、並び順を決めて、交通ルールの復唱をしたら終わりだ。ちなみに私が通学団長になってしまいました。先生まで私を推薦する始末。別にいいんだけど。
「「「「さよーなら!」」」」
全校生徒で行う帰りの会が終わったら、校門にちかい通学団から帰って行った。
(11時40分・・・秋人さんもう帰ってるかな?)
凪沙の友達の名前考え中です。男子も女子もまだ考えてません。なんだったら募集してもいいくらいです。