第1話 冷蔵庫は空っぽ
初めてのオリジナル小説です。
駄文ですが読んで行ってください。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
目の前には、俺を怯えた目で見上げる一人の少女がいる。
(・・・・・どうしてこうなった・・・・・)
小学6年生の春。桜の木に蕾が膨らみ始めたある日の休日、家で留守番をしていたら急に伯母さんと伯父さんが家に来て「君の両親と弟さんは交通事故で死んでしまった」と告げられた。だけどそんな言葉を信じられるわけがなかった。何度も問いかけた。「嘘でしょ?嘘だよね?」ってさ。それでも、二人は決して首を縦に振ってはくれなかった。そりゃ泣いたさ。そしたら、急に足に力が入らなくなって膝から崩れたんだっけ。完璧な放心状態になってた。その後俺は、二人に促されるがままに外で待っていた車に乗って、そのまま遠く離れた二人の家まで運ばれた。気がつけばどこか知らない部屋にいて、2人に「今日からここがあなたの家よ」と言われた。きっと両親を失った俺をこの人たちが引き取ることになったんだろう。でも俺はその現実を受け止めることができず、数日間は放心状態にあった。
これは一見すれば、不幸な出来事に見舞われてしまった少年、に見えるだろう。だけど俺の考えは違う。これは決して不幸な出来事ではない。不幸で済むなら、そっちの方がよかった。
俺の家族は死んだらしい。
らしい、というのは、俺は両親と弟の死を確認していないからだ。俺は3人の死に顔を見たことがないし、葬式にも出席していない。そもそも、葬式が行われる、という情報すら聞いていない。もしかしたら、俺が放心状態にあったがために出席しなかっただけかもしれない。でもそれもおかしい。余程のことがないかぎり、実の息子が出席しない葬式なんてどこの世界にあるだろうか。
俺の家族は、本当は死んでないのではないだろうか。だとしたら、俺はなぜこの二人に引き取られたんだ?金の問題か?いや違う。俺の家は貧乏じゃなかったし、むしろ一般家庭よりは少し裕福で幸せな家庭だったはずだ。だとしたらなぜだ。
俺の脳が導き出した答えは一つ。
ーーーー家族に捨てられたーーーー
この答えにたどり着いたのは放心状態から回復してからすぐのことだ。普通に考えれば小学6年生にこの発想を
する者なんていないだろう。
俺は昔から頑張れる子だった。テストでいい点をとる度に、かけっこで一位をとる度に母さんと父さんは褒めてくれて、弟も羨ましがりながらも「すげぇよ兄ちゃん!」って言ってくれた。それが嬉しくて、もっと褒めてほしくて俺は頑張った。俺は頑張ったら結果を出せる子だった。だから学校では某国民的アニメのキャラクターから取って出来杉君とまでに呼ばれていた。さらには同じクラスのジャイアン的存在にも負けない喧嘩強さも持っていた。ついでに言わせてもらえれば、俺は出来杉君より出来るし、ジャイアンよりも強い。
ただ、俺は結果を出しすぎた。周りから少し突出していれば「天才」とはやし立てられるが、突出しすぎていると周りからは畏怖の感情をもたれるようになる。数の暴力で俺をいじめるようになった。返り討ちにすることもできたが、そうすれば俺が悪者扱いになって、俺が先生に怒られる。俺の唯一の救いだったのは家族だ。みんなが俺を恐れるのに対して、家族だけは俺を守ってくれた。だけど、俺の家族もいじめを受けるようになってきた。全ては俺のせいだ。俺を捨てなければ家族に幸せは訪れない。だから俺を捨てたのではないだろうか。
後日、家族と一緒に暮らしていた家に行ってみれば、案の定そこはすでにもぬけの殻。思い出の品なんて何一つない。俺の両親は4つ下の弟を引きつれて、俺のすべてを奪い去ってどこかへ消えてしまったのだ。いつもキャッチボールをしてくれる父さんが、いつも俺のことを見守ってくれてた母さんが、いつも俺を頼ってくれる弟が好きだった。。好きだったのに・・・・裏切られた。
小学6年生、わずか12歳という幼さでこの現実を突き付けられた。
不幸なんかではすまない残酷な出来事に見舞われた少年。それが俺だ。
そのせいで、ちょっとした人間不信に陥った。といっても、精々他人と仲良くなり過ぎないように気をつけてきただけだ。おかげで親友なんて物は一人もいなかった。勉強も運動も頑張る理由もないから俺の成績は落ちていったし、かけっこで1位をとることもなくなった。
俺を引き取ったのは、母さんの姉にあたる人とその夫。伯父さんのはとある会社の社長で、伯母さんが秘書。よって、俺が引き取られたのは裕福な家庭だった。富豪というやつである。
2人にはできの悪い息子がいた。俺にとっては十分すぎる頭の良さを持っている人だったけど、英才教育を受けているわりに実力がつかない息子だったようだ。その息子の変わりに俺を立派に育てようとしていたらしい。でも、その時にはすでに俺の頭は中の上程度なっていたし、頑張ろうともしなかったからそんな教育についていけるわけがなく、すぐに諦めてくれた。二人とも最初は俺に何か期待してたみたいだけど、裏切られたかのように俺のことを放置するようになった。
学校では人並みの付き合い。家では食事の時以外は一人。そんな生活を続けてはや4年。俺は高校1年生になった。
俺が進学したのは伯母さんと伯父さんの家から遠く離れた隣の県にある私立学校。あの家からいち早く出たくてこんな遠くの私立学校に決めたのだ。必然的にアパート暮らしとなる。家賃も家具も食費も、お金の問題は一切なかった。なんたって富豪だからな。アパート暮らしすることに対しても二人は何も言わなかった。
アパートはインターネットを駆使して自力で探した。一人暮らしに十分なワンルームの部屋だ。キッチンも風呂もトイレもちゃんと完備されている。ちょっと家賃高め。
いざ引っ越し、と意気込んで引っ越し業者の車に乗って向かった先は俺の決めたアパートではなく、いかにも値段の高そうな高層マンションだった。わけがわからず目と口が丸くなっているであろう俺の事なんぞお構いなしに黙々と作業を始める引っ越し業者達。
すると急に後ろから声をかけられた。
「今日からお前はここに住むんだ」
振り返れば、そこには伯父さんがいた。見事にスーツを着こなすその姿はさすが社長と言わざるをえない。長い間「そうか」や「わかった」という会話ともいえない会話しかしていなかったから、その声を聞いたのはかなり久しぶりだ。
「ど、どういうことですか?」
「とある事情があってな。お前にはここに住んでもらうことになった。こっちだ。ついてきなさい」
といって歩き出す伯父さんの後を俺はあわてて追いかけた。あと、急な伯父さんの登場で気づかなかったが、後を追う俺と伯父さんのに間に一人の少女がいた。誰なんだ?
部屋につけばアパートに送っておいたはずの家具と、見覚えのない家具があった。そしてまたしても後ろから声をかけられる。
「お前には、この子と一緒に住んでもらう」
振り返った俺の前に現れたのはさっきの少女だった。
「この子は私の弟の娘だ。つい先日、両親をなくしてしまってな。私が引き取ることになった。偶然にもこの子の住んでいたのがこの付近でな。この子も友達とは離れ離れになりたくないだろうと考え、この子もここで暮らしてもらうことになった。すでにこの子の荷物も運び終わっている。お前が面倒を見てあげなさい。金の問題は心配するな。だが他の問題は自分で解決しろ。もしどうしてもわからないことがあったら電話をよこしなさい。じゃあ私は仕事があるから失礼する」
叔父さんは淡々と話し始めた。呆気にとられながらも勝手に話して勝手に帰ろうとする伯父さんに声をかける。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
しかし俺の引き止める声を無視して伯父さんは帰ってしまった。もっともらしいこと言ってるけど、ようするに俺に押し付けようってことだろ?高校生が小学生の世話なんてできるわけねぇだろ。どうすんだよもぉ・・・
取り残されたのは俺と目の前の少女のみ。そして現在に至る。
少女は怯えた目でこちらを見ているが、名前も何もかも全く知らない男のところに放り出されたのだ。しょうがないことだろう。
とりあえず黙っていても何も始まらない。
「・・・・・え、えっと・・・・名前は?」
「・・・・・新垣・・凪沙です」
「俺は桜井秋人だ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
自己紹介をした後でまた互いに黙り込んでしまった。しかし、その静寂を破ったのはーーー
グウゥ~
凪沙のお腹の音だった。凪沙は顔を真っ赤にして俯いた後、何か小さな声で呟いた。
「すいません・・・・朝から何も食べてないんです」
時刻はすでにに12時。俺も腹へったかな?
「とりあえずコンビニ行くか?」
「はい」
凪沙がコクンとうなづくと、俺は財布をもって一緒にコンビニに出かけた。
この先どうなることやら・・・・
いかがでしたでしょうか。
設定が無理矢理な感じがありますが・・・・ほのぼの系を目指しています。
少女のプロフィールなども少しづつ明かしていきます
タイトルの「冷蔵庫事情」というのは次の話から明らかになってくると思います。