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異世界移転者の凡常  作者: 北澤
第3話 異世界移転者の平凡な日常
33/49

異世界礼賛 中 の 5

「――料理人をくそ呼ばわりとわね」


 醒めた口調で肩を竦めたライアンを見る。思わず聞いた。


「孤児院、風呂って無いのか?」

「設備ではなく、ここは大都市で、風呂に使うには薪が良い値段しますので。食べる物が不足しているぐらいなら、この季節に薪は買わないのでしょう。水浴びするにしても、昼間でないと冷た過ぎるかと思います。……こちらに来た時はまだ春先でしたから、本当にキツかった……」


 遠い目で呟くライアンに、移転当初のメグさん達ギルドメンバーの生活が垣間見えた。


「なるほどな……」

「それから。身綺麗に努めないのは、物乞いが清潔な格好していても、誰も何も恵んではくれないからでしょう」

「――ああ。確かに」


 酷く納得した。ここでは、身なりに気を使う余裕があるなら、腹はそれなりに満たされていると考えるのだろう。――そうだった。この異世界は、かつて俺たちが住んでいた日本と、常識もまた異なるのだ。


「その辺り、小綺麗にして排除されないよう気を使う日本の浮浪者と違うな」

「そうですね。――そう言えば、あちらの人達はゴミ捨て場で残飯を探した後は、きちんと掃除するらしいですね」

「あさったまま汚されっぱなしだと、商売に影響が出るからな。警察に通報しなきゃならないんだよ」

「なるほど。でしょうね」


 一応通報する前にあさられ防止用として、薄暗い中でも分かるように水に付けた煙草の吸い殻を上からかけて捨てておく。だが、余程の事がない限りそこまでしたくはしない。大抵は自治、あるいは余計なことをしでかす異分子として淘汰がなされ、後片付けしてくれるようになるからだ。


 欧州某国の経済破綻を皮切りに、各州の経済は亀裂が入り続けている。国民総中流家庭などと揶揄された日本州ですら、今や当たり前にストリートチルドレンが存在していた。

 低年齢者はID不登録かどうかの確認のため、定期的に政府の手が入る。保護後に施設に収容され、養子縁組みされる子供も多いが、それを嫌って逃げ出す者もまた多い。

 免許や学証、クレジットカードの取得にも使用され、人生の全てに紐付いているIDは、五大陸経済連合(Five-Continents Economic Federation)加盟国で生まれた人間なら誰しも持っている物だ。持っていないなら、それはもはや人間扱いされない「何ものか(unknown)」になる。出産直後に埋め込まれるナノチップと連動するIDは、その人物の人生を全て記録していると言っても過言ではない。

 彼ら「何ものか」と、年々数を増やし続けるホームレス達は、入地制限がある経済特区はまだマシだが、観光区などでは深刻な問題になっていた。



「この異世界が、いずれあちらの未来かと思う時があります。ただ、経済特区で働いている俺が言うのもなんですが、この世界の経済バランスを考えるならば、世界統一機関を気取る五大陸経済連合も形無しですね」

「そう言うものか……」


 正直俺は経済にはあまり詳しくはない。ライアン達ビジネスマンには、この世界が俺とはまた違った形で見えているのだろう。


「ゲームマネーと言う、世界共通通貨が存在しているんですよ、ここは! 数値上で取り引きされる現実世界などと比べものになりません。そもそも、どこの国がどうやって鋳造して提供しているかすら、分からないのですから」

「あー……」


 なにやら興奮しているらしいライアンを見て、こないだヒヨさん達が話していたことを唐突に思い出した。


「それならティーが……確か"神々が作りたもうた施設から、定期的に適量を各地の施設に自動で出荷している"らしい設定があると話していたな……うろ覚えだが」

「ぉお! 流石だウィキくん。歩く攻略ウィキだけのことはある。よくそこまで調べている。今度詳しく聞いて……あ、申し訳ありません」


 高揚するあまりにウィキ――歩く攻略ウィキだの、人間ウィキだの、あるいは人型攻略ウィキだの、ティーザラスに付けられた――そして本人が毛嫌いしているあだ名を口にした。

 不快さに眉を顰めた俺に気付き、ライアンが殊勝な顔で畏まって謝る。


「失言でした」

「――それ、本人の前で口にすると、ティーとほむの2人からまともに口をきいて貰えなくなるぞ」

「はい、指摘ありがとうございます。肝に免じます」


 そしてヒヨさんからも手痛い報復がくる……のだが、そう言ったところで一度も信じて貰えたことが無い。そんなわけで、そのままそっと胸に収めた。



 ライアンと2人、通りに出て店舗の側面――サロンへの入り口を確認する。一見、大きく張られたガラス向こうに優雅なサロンが存在しているかのように見えるが、あれはガラスに見せかけた別の物で、ポータルで移動した先の光景を映し出している。配膳室の壁にある鏡と同じ物だ。


 日が落ち始めた夕方のサロンには女性客はほとんど居ない。居たとしても、ひと目でプレイヤーと判る容姿端麗な人間ばかりの女性グループか、レストランでの本格的な食事ではなく、軽食をとって別のどこかに向かうだろうカップルばかりだ。

 王都らしく、ごく稀に水商売の――ほむが熱心に通うようなランクではなく、いわゆる流しの女性が相手を捜そうと窓際の席を陣取るが、その際は店員がさり気なく話しかけて邪魔をし、追い出すようにしていた。

 最初からカップルで入店するなら別だが、店を出会いの場として使われるのは御免だ。現実世界でのレストランの成り立ち――と言うのもおかしいが、かつてはその手の女性で有名になり、現在まで当時の代表格のレストランとして語り継がれている店もあることはあった。だが断じて俺はそれに習いたくはない。飲食店と色は相性が良すぎて、食い合わせがひたすら悪いのだ。――トラブルの匂いしかしない。


 よく磨かれた窓の外から明るく照らされたサロンをながめつつ、店舗の正面ファサードへとたどり着く。

 繁華街に近いだけあって通り自体には雑多な気配がするが、店舗の前は綺麗に清掃され、精一杯清潔にしてある。ホームの外観もあまり気取ったものでは無いが、正面の左手寄りにはレストランを案内する優美な看板を、これまた重厚な扉の横に打ち付けてあった。

 ここから扉を開けて一歩でも中に入れば、課金別荘の格のある豪華な室内だ。その印象の差は良いギャップとなって、レストランに期待させる効果的な演出になっていた。


 正面扉の右手端、隣の建物ぎりぎりの所に、複雑な模様のようなものが描かれたプレートと一見勝手口の様な質素な扉があった。これがプレイヤーしか通り抜けることのできない、2階のカフェとビストロへ行くための扉――ポータルだ。


 ――模様のようなものが描かれたプレート。

 少なくとも、こちらに転移されてきたプレイヤーが見たなら一目で理解できるだろう、日本語と国連公用6ヶ国語で書かれた案内板だ。


 この異世界。いや、かつてのMMORPGゲーム"Annals of Netzach Baroque"で共有文字として使用されているのはグラゴル文字とコプト文字だ。

 言語形態はティー曰く、OV型古代印欧語でラテン語ベースだろうと検証していたらしい。――ゲームでは、NPCの台詞には初期設定で選択した言語が字幕で出る仕様だったので、ティーのような検証マニアでない限り、大抵の人間は言語形態がどうのなんて気にすることはなかった。


 本来、字幕なしでは俺たちには理解できない文字と言語だったが、幸いな事にこの世界では自動翻訳される。不運にも異世界移転されて来た俺たちプレイヤーは、言語には不自由することはなかった。

 それでも、店の扉に現実の世界でしか存在しない言語をあえて使用するのは、同じ異世界転移に巻き込まれたプレイヤーのみに告知し、呼び集める為だった。


 "倉庫、24時間無料で使えます。使用の際にはアンケートにご協力ください。――また、元の世界の料理も提供できます"


 プレートにはそう書かれていた。

 店のオープン前には予告広告として、そして現在は看板として使われている。王都以外の他の都市にあるホームの扉もまた、同様のプレートが張られている。

 プレイヤーは俺たちの所有するホームから、24時間いつでも訪れることが可能だ。そして当然の事だが、どこの土地から来ても、来た時と同じ場所に戻れた。



 繁華街から少しだけ外れただけの、それなりの人数が行き交う通りをながめる。

 道並の建物はそれぞれ小綺麗な外装を施され、窓から植物のツタやら花等が典雅なランプに照らされていた。硝子越しに沸き上がったオレンジ色の朧火が、沈みかけた日に促されて通りに点々と灯りだす。水に滲んだかのような絵画的な情景を醸し出していた。

 物柔らかな光に道行く人々の姿が浮かび上がる。淡い光に雑多な気配がなりを潜め、ただ華やかな美しさだけを引き立てていた。


 時折、身なりが整った富裕層らしき人間が、迷いのない足取りで店の扉へと近づく。そして気取ったように、あるいは微笑みながら、サロンやらレストランの扉の奥へと吸い込まれていった。


「いい雰囲気ですね」

「ああ。やはりこのくらいの人通りでちょうど良いな」 


 感嘆するように言ったライアンに、俺も心の底から同意する。本当にいい場所で、良い店だ。


 集客だけを考えるなら、繁華街の似たような店構えが並んでいる店舗の方が、より気軽に入りやすいだろう。だが客が店を選ぶように、店側も客を選びたい。店の最終的な雰囲気は利用する客で決まるからだ。

 誰もが気軽に利用できる店も当然良いものだが、それなら最初からもっと庶民的で価格の安い店を作る。"プレイヤー及び、富裕層で下級貴族程度"の店を俺が最初から目指したのは、煩雑な雰囲気を排除し、余計な揉め事を避けたかったからだ。


 "Annals of Netzach Baroque"でゲームマネーを稼ぐには、ひたすら戦闘して素材を集めて売る必要があった。課金と併用しないと金策に忙しいゲームなのだ。

 また、ゲーム内に無数に存在するクエストは、発注するような個人――つまりNPCは、そこそこ金を持った富裕層の人間か商人ばかりだった。そして、クエスト報酬としてゲームマネーが支払われることはあまりなく、大抵は次のクエストの為のキーアイテムや、キーキャラへの紹介状と情報――聞くことでフラグが立つ――が与えられた。もちろん子供などの庶民設定されたNPCからの依頼もあったが、クエスト報酬は純粋な金銭価値が薄い物ばかりだった。


 冒険者である俺たちにある程度馴染みがある中流層を対象にしたのは、そう言った心理的な面も大きい。――もっとも、異世界用に多少アレンジしたとしても、俺が作るようなある意味技巧が凝らされた現代料理が、この世界の一般庶民に馴染みがないだろうと言うこともまた大きい。

 馴染みのある材料を使用されてはいるが、出来上がった見た目からして未知の料理と称しても過言ではないだろう。それを「美味いから黙って喰って、そして金を払え」という商売が通用するのは、食を探求出来る生活余裕がある人間だけだ。必然的に経済基盤のしっかりした中流層以上が対象になる。


 ひとしきり通りと店の外観をながめて満足し、同じように観察していたライアンに目を向けた。


「うん、いいな。そろそろ中に戻るか」

「カフェに顔を出しますか?」

「そうだな、せっかくだし行ってみるか。カフェは気楽に話が出来るし……何か変わった話題が聞けるといいな」

「そうですね」


 基本的に料理を作る人間は客席に顔を出さない。窓から覗いて、味わう客を確認することはあるが、席まで行って味はどうだったかと直接聞くのも客側には気詰まりだろう。感想を言いたがる客は、別に料理人相手でなくても給仕に直接伝えてくる。

 どうしてもと求められた場合は、その日の盛り付け担当が代わりに行って対応していた。盛り付け担当になれるのは、調理担当のなかでも単身で仕事を任せられる人間だけだったからだ。


 裏口に戻り、ポータルを"跳んで"配膳室に戻る。扉を開けた瞬間、配膳室が一種異様な緊張感に包まれていることに気付いた。


 メグさんが待ちかまえる横で、ボナパルトンが真剣な面持ちでディシャップテーブルの上に料理を出し入れしては、皿の上にごく少量を盛り付けていた。

 皿に描いたソースの模様の上に、そっと息を止めながら小さく切った肉を乗せる。さらにその横に、高さを出すように付け合わせ(ガルニチュール)用の野菜を配置している。


「……どうしたんだ? 一体」

「ただいま戻りました。ギル――メグさん」

「あらぁ! おかえりなさい、ライアン。ゼロス、外はどうだったかしら?」


 相変わらずギルマスと呼びかけそうになるライアンをメグさんが笑う。俺もなんとはなしに微笑んで、そして答えた。


「変わらずいい感じでしたよ。ところでボナパルトン、それ……デギュスタシオン用か? ……まさか」

「そうなの、ヒヨコちゃん達3人が下に来ているのよ~」


 またか。

 胃が小さくなったとの言い訳で量を食べないヒヨさんは、こうして店に来ると必ずデギュスタシオン(味見)用のコースを取る。あまり選ぶ人間がいないコースなので、デギュスタシオン=(イコール)ヒヨさんだったりする。


 何とも言えないため息を吐いた俺の内心を知らず、メグさんが嬉しそうに顔に笑みを浮かべて報告してくれる。


「雰囲気も良くて、素敵なレストランになったって褒めてくれたわ~! 嬉しいわねぇ!」

「そうですか……それなら良かった……。が、今日夜にまた絶対追加で何か言われるな……」


 メグさんの言うとおり、確かにありがたい。ありがたいのだが、それでも俺的には気が重い。

 レストランに食べに来る分には、たとえヒヨさんと言えど金を支払って貰う。ギルメン用の食事を食べずにわざわざレストランに食事しに来たのは、ティーとほむの食事マナー訓練のためと――店の視察を兼ねている。


「それでも取り敢えずは合格が貰えたか……」

「ほむくんの報告書、毎回恐ろしいですからね……。私は客席にほむくんの姿が見えると、そのまま逃げ帰ってしまいたくなります……」


 窓を覗いてそれぞれの客席をチェックしながら、ヤマーダさんが沈んだ声で呟く。背中に暗雲を背負っているようだ。その気持ちは痛い程よくわかる。

 ほむからの報告書――と言う名目で、その実ヒヨさんからの多分な苦言が書かれたレポートは、店の欠点を余すところなく指摘したものだ。覆面調査官も真っ青な、容赦のない追求は本当に有り難いのだが、それでも同時に激しく胃を攻撃する。

 ヒヨさんから見れば、ここはレストランではなく街の単なる食堂レベルなのだ。そして残念ながら、俺もヒヨさんのその見解に同意できてしまっていた。


「ほむさんはオーナー代理。ある意味俺たちを監督する立場ですからね」


 課金別荘に引っ越した時の契約云々で、充分すぎるほどのやりとりをしたらしいライアンは、当たり前の顔で頷く。


「そしてレポートのお陰で、素人ギャルソンがなんとか取り繕えている。こうした歯に衣着せない意見は、ビジネス的に見ても正しい浄化作用になっていますよ。――的外れな意見ではありませんしね」


 客から苦言が来た時は、既に手遅れですから。とライアンが冷静に返してきた。

 ライアンの言う通りだ。言う通りだし、俺の胃が痛む気がするのもそれは仕方ないことだ。


 しかし、2,3日前にも店に来たばかりなのだが、前回指摘した部分が改善されたかどうかを、さっそく確認しに来たのだろうか? いや、それ自体は構わないし有難い事だ。だが稀に、ギルメン用の定食に嫌いな物を出されたティーが嫌がった、という理由で来店する場合があった。

 大抵の食わず嫌い品はヒヨさんが食べさせて解決するが、なかにはどうしても口にしたがらない物があった。その場合、ヒヨさんはその一品だけを残させるのではなく、他に好物があっても最初から定食全てに手を付けさせなかった。


 ギルメンへの食事も俺がメニューを考えているが、最近はそのうち2品ほど調理メンバーに任せていた。どれも俺が監督しているので、メニューのバランスは充分考慮されている。

 しかしティーの嫌いな物までは頭を回していなかった。ギルメンそれぞれの好き嫌いまで考えるとキリがないからだ。アレルギー以外は特別配慮していない。


 ――今日の定食に、ティーの嫌いの物が入っていたのか?


 ギルド共通タブを参照してメニューを確認する。定食にはティーが嫌いそうな物は見当たらないが……。

 そう思ってタブのリストをスクロールした瞬間、鳥肌が立った。


「……誰だ、納豆をギルド共通タブに入れた奴ぁ……ッ!?」


 思わず吐くように唸った俺に、隣に居たライアンが目を見開いて驚いている。……いかん、落ち着け。


「あ、あらぁ……ゼロスごめんなさいね。納豆は、以前朝食に出で美味しかったから何時でも食べられるように追加しちゃったの。ごめんなさい、確かにゼロスの許可を貰ってない物を勝手に追加しちゃ駄目よね……」


 慌てて説明したメグさんに、俺はただ力なく頭を振った。

 ご丁寧に「1日1人2個まで。好きな時に食べてね~!」と言うメモ付きだ。――間違いなくほむが喰い付いただろう。そして夕食に早速食べようとした筈だ。よりによってヒヨさんの大嫌いな納豆を、しかもわざわざヒヨさんの隣で。


 なるほど……それで店に来たのか……。


 これは確実にとばっちりだ。間違いない。

 デギュスタシオン用コースはそれなりの値段はするが、それ以上に店側の手間がかかる。確かに視察として店の味を確認するのに適切なメニューなのだが、それ以上にヒヨさんの納豆回避に巻き込まれた脱力感が強い。

 早朝から働きづくめだった体に、どっと疲れが出た。


「あー……一応、俺の許可は取ってください。頼むから……」

「はい。ごめんなさいね。……もしかして、ゼロスって納豆嫌だったのかしら?」

「俺じゃない、俺じゃないさ……。取り敢えず直ぐに、ほむが食べるのは禁止、と注釈を入れてくれ」

「ほむさんですか……? もしかしてアレルギーで食べてはいけないとか?」


 意外そうな顔でライアンが聞いた。

 暴食人間のほむが、自分のアレルギー食品すら我慢できずに食べると解釈されたようだ。ある意味あたりだが、実際は別の拒絶反応が巻き起こる。ライアンの解釈は、それでも俺にとって都合のよい誤解なので、ただ黙って肯くにとどめた。


 慌てた様子でメグさんが説明文に注釈を追加する。

 俺は追記文を確認してようやく安堵の溜息を吐けた。知らずに籠もっていた力を抜き、握りしめた手のひらを開く。短く切りそろえていたのにも関わらず、手のひらにはくっきりとした爪の跡が刻まれていた。


 ……俺はあんな騒動、もう2度と御免なのだ。


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