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異世界移転者の凡常  作者: 北澤
第3話 異世界移転者の平凡な日常
22/49

初日 下 ノ ウエ

初日概要:テンプレ上の仕様通り! (ドヤッ

次回更新分からはきっとサクサクしてます。

 目を開けるとホームの広間に立っていた。


 背中越しに、窓から街のざわめきが聞こえる。子供の笑う声、通りを行き交う人々の喧騒。平和そうな音。

 今度こそ本当に足から力が抜けて、その場に崩れ落ちた。床に座り込んでため息を付く。良かった……。本当に良かった。生きていて本当に良かった……! 手のひらで覆った顔が熱い。目に涙が滲むのが分って、堪えた。

 大きく息を吸って、吐く。思考のまとまらない頭で天井に目を向けた。


 高い天井は組木造りで、節目のない板が張られている。視線を落とすと、部屋の中央に階段状の四角い窪みがあり、そこがソファになっていることに気付いた。先に転移していた里香ちゃんとトウセが、そのソファにぐったりと座り込んでいる。

 虚ろな目の里香ちゃんが、俺たちが到着したのを見てまた涙を零す。そのまま目を閉じて静かに泣きだした。泣き続ける里香ちゃんの横で、ぼんやりとトウセが呆けていた。


「みんな……本当に無事でよかった」


 疲れた身体が重いのだろうか。カインが怠そうに窪みの階段に足を下ろして腰を落ち着けると、深いため息のような言葉を吐いた。鼻頭を指先で揉むカインの仕草を俺は何とはなしに目で追って、俺はようやくカインの顔に血の気が足りないことに気付いた。

 カインの中の人――篠甫しのりくんが、まだ22歳だった事を遅まきながら思い出す。ギルドマスターとしての責任を果たすために気を張っていたのだろう。ホームに戻って来たことで、ようやく張りつめていたものが解けたらしい。カインは額を押えて深呼吸を繰り返している。


「もうしばらく何もしたくないわ……」


 掠れた声でバルサが呟いて、壁を埋めるように設置された大きなソファに身を投げだし背を預けた。その隣に、欠伸をしたティーがソファ積まれたクッションを抱えて寝転がる。疲れて眠いのかティーはクッションに頬を擦り付けて目を閉じ、また欠伸を繰り返した。ほむが寝ころんだティーに苦笑して、ティーの頭の隣に座る。


「確かお茶セット備え付けられてるハズなんだよネー、この部屋のオブジェ。ほむちょっと探しといてくんない? あとお湯な。俺ちょっくら他の部屋でも探索してくるわー」

「アイサー」


 まったく疲れた様子のないヒヨさんが部屋の隅に設置されているミニキッチンを指さし、扉を開けて広間を出ていく。返事を返したほむがソファーから立ち上がった。そのまま軽い足取りでソファとは逆位置にあるミニキッチンへ向かって、設置された棚を漁りだした。


「調味料っぽいのとか、酒とかもあるなぁ。お、……へー水出んだ。上下水ちゃんと整備されてら。ゲームと一緒だ、コレ」


 見つけたケトルに水を注ぎながらほむが呟いた。シンクに水が流れて排水されている。ほむは蛇口を下ろして水を止めると、シンク脇にある五徳にケトルを置いた。


「うわー! これガス? ガスだよこれ。マジ配管どうなってんだろ? これも魔法? あのさゼロス、ガスって火力強いから中華調理旨くなるって本当? 俺さ、油淋鶏ユウリンチー 好きなんだけど、夕食にいいんじゃん? てかもう腹減ったよね? やっぱさっきの鶏、狩って来て良かったとマジで思わない?」

「……それは。今から、俺に、作れ、ってお前は言ってるのか……」


 ほむが目を輝かしながら頷いて俺を見る。お腹が減っているのは本当なのだろう、楽しそうに笑う口元が微妙に濡れている。もう俺腹減った。と言って、ほむが涎を飲み込んだのが分った。

 俺はそのほむの台詞に頭を抱えた。バルサの言葉通り、今日はもう何もしたくない。疲れている。俺は疲れている。はっきり言って、あんな経験をした後で食事をしたいとも思っていない。特に、肉は……。


 文字通り"ミンチ"になるまで蠢き続けていた魔術師の体を思い出す。攻撃に自動回復が追い付かなくなって、それでも肉が泡立ち、盛り上がり、血を吹き出しながら脈動し続けていた。

 あの状態でも意識はあったのだろうか? ……いや。多分あったのだろう。ゲームシステムでは絶対に成し得なかった行為、ヒヨさんがシステム外攻撃で強引に奪い取った魔術師の杖。その先端に付いていたオーブは、細切れになった肉片がピクリとも動かなくなるまで、まるで心臓の鼓動を表す様に点滅をしていたのだから。

 魔術師へと引き戻されるように動く杖に、ヒヨさんは引き摺られては肉塊を攻撃し、押し止めていた。


 再びせり上がってきた吐き気に慌てて口を押える。細くゆっくりと鼻で息をして吐き気を堪える。慎重に、何度も深呼吸して治めた。


「……ほむ、無理だ。他の材料もないだろうし……俺はもう気力がない。勘弁してくれ」

「マジでー……」


 ひもじいの最悪じゃん。俺、腹減ったの我慢すんの嫌なんだけどなぁ……。と、ほむがぼやいた。ほむは渋い表情で俺の前に茶櫃ちゃびつを持ってくる。四角い茶櫃は天井と同じ組木細工の創りで、色味の違う木を組み合わせた模様が美しかった。


「日本茶っぽい。俺淹れ方知らないから、ゼロスに任せた。あとよろしくー」

「……分った。茶は煎れてやるが、料理は無理だ。諦めてくれ」

「あー……、うん分かった……」


 不承不承ほむが頷いて、部屋の隅にある"ボックス"――倉庫へのアクセス用の長持ながもちだ――に近づくと、眉間に皺を寄せてさらに唸る。


「おー! ゼロス。俺さ、倉庫に葱っぽいのとトウガラシっぽい説明のアイテム持ってた。あとそうだ! このホームさ、裏庭に家庭菜園ある。だから明日でいいからさ、油淋鶏頼むね?」

「もう……。ほむ、そんなにお腹減ってんなら、そのアイテム食べてなさいよ……」


 うんざりした声でバルサがほむに言った。俺も同じことをほむに言いたい。……いや、食に括るのも、この状態で食欲旺盛なのも良いことだとは思う。思うが、作るのが俺だという事に納得がいかない。料理人の俺が作った方が良いことは分る。分るが……今日はもう勘弁してくれ。


「喰うよ? 取ってくるってさ。果物も生ってるみたいだ」

「……ヒヨシさんからですか? コールで?」

「そ」


 緩慢な動きで顔を上げてカインがほむに聞く。カインの問いに頷いて答えると、ほむは"ボックス"の前からまたキッチンへと戻る。お湯が沸いたことを確認して、俺の元へとケトルを運んできた。水が沸いて蓋がパカパカと浮くケトルを俺の目の前に置いた。


「床に置くなよ……」

「ゼロスがここに座り込んでんじゃん。じゃあソファに持って行く?」

「ああ、そっちの方が作業し易い。……鍋敷き無いのか? そのままテーブルに置いて跡が付くと悪い」

「あー。あったっぽい。ちょっと待って」


 ほむが鍋敷きを探しにケトルを片手に踵を返す。俺は怠い身体を奮い立たせて、気合を入れて立ち上がった。勝手にぐらつく体を宥めて、茶櫃を持ちバルサが座るソファへと向かった。

 テーブルに茶櫃を置いて、ソファに座ったとたん勝手にため息がこぼれた。精神的に疲れすぎていて、ひとつひとつの動作が重い。軋んだ腕を動かして蓋を開け、茶道具が揃っていることを確認する。微かに聞こえる寝息の元を見ると、ティーが寝こけていた。


「……ティーは寝てるのか」

「泣いてたし、疲れたんでしょ。中の人お子様だもの。仕方ないわ」

「そうだったな……。確か11歳だったな」


 抱えたクッションに頭を沈めて眠り込むティーに、目を向けたバルサが苦笑した。ティーはクッションに涎を零しながら呑気な顔で寝ていた。規則正しく上下する胸はとても11歳だと思えない程の体躯だ。――ティーのアバター20歳前の完成された体で、中の人とは完全に別物だった。

 もちろんアバターと別物なのはティーだけではない。俺たちギルメン全員が、現実の世界とは似ても似つかない外見をしていた。


「……このままだったら、親御さん心配するだろうな……」

「しないと思うけど? あとティーは12歳ね。――ほんとなら中学生? だったはず」

「そう言えばティーってガチな廃人よね? ……学校、やっぱり行ってなかったの?」


 ほむの言葉にバルサが怪訝そうな顔で聞いた。テーブルに鍋敷きとケトルを置いてほむがソファに座る。


「行ってないねー。制限時間いっぱいまでログインしてる。俺もだけどね」

「登校拒否、とか? そう言う――」

「拒否、ってか学校行かないだけで、カリキュラムは別に受けてるよ。……携帯端末でゲームしながら、だけど」

「どこまで廃人なんだ……。しかし親御さんは良くまあ許すな、そんなこと」


 俺はため息を吐いた。用意されていた日本茶が玉露だった為、湯呑に注いだお湯をまた湯冷ましに入れ直す。茶筒を開けると独特の香りがした。日本茶の香りは精神を落ち着ける効果があるとか、誰かがそんなことを言っていた気がする。それが本当なら今は有難い。


「ティーの親、ティーに興味ないし。ネグレイト? ってーの? そんな感じ。ってかさ、そんな親でもないと、ネトゲで知り合っただけの赤の他人の俺らに保護者代理なんてさせないだろ?」

「……それは」


 急須に湯冷ましからお湯を注ぐ。重い体の奥に苦いものが溜まるのが分った。そして、オフ会でティー本人に会った時の事を思い出した。


 当たり前だが、成人――18歳未満のティーが単身で夜10時以降に外出することは法律で禁止されている。オフ会会場だった居酒屋に13歳以下の子供が立ち入ること自体、もっての外だ。オフ会の日程調整中に、ティーが行けるかどうか微妙だとは聞いていた。だがまさかティーがこんな子供で、年齢の所為で参加が難しかったとは誰も思わなかった。


 俺の都合で夜7時から始まったオフ会にティーが現れた時、その場に居た全員の血の気が引いた。目の前に居るのはどう見積もっても到底成人しているとは言えない少年で、俺たちは全員、責任を持つべき正真正銘の大人だったからだ。

 居酒屋どころか酒の席に同伴させるには保護者本人の了承が必要だ。責任を問われて逮捕される、そんな最悪なことが頭に浮かんだ。それでもその時店が通報しなかったのは、保護者からの委任をほむが――畝村ほむらが受けていたからだった。

 オフ会でのあの出来事は本当に忘れ難い。ほむのリアルでの容姿にも驚いたが、ティーの年齢には負ける。

 あの時幹事だったメグさんはほむに、保護者委任を受けているなら前もって幹事の自分に伝えるべき、と随分お冠だった。当然の怒りだ。それにほむに保護者委任する前に、幹事に対しても保護者本人からの連絡が当然あるべきで、その連絡すらなかったことを知って俺は驚いた。

 それ以降ティーの親に対して微妙な気持ちにはなっていたが、まさか。


「まぁ、ティーの親金持ちだし? 飢えたり殴られたりする様な事はないんだし、好きにやれていーんじゃん?」

「そう言う問題でもないと思うが……。よそのご家庭のことに関しては……何とも言い難いな」

「悪いけど、最悪な親だと思うわ。生んどいて親の責任放棄してるって、最低」

「――良いご家庭で育ったのな、真美ちゃんは」


 吐き捨てたバルサに、扉から顔をのぞかせたヒヨさんが言った。両手に果物を満載したボウルを抱えている。


「……別に良くもないわよ。うちは普通の家庭」

「そのフツーってのが、俺的には珍しくも貴重なもんだと思ってるんだけども。ほらよ、ほむ。グレープフルーツにオレンジ、林檎に洋ナシ。葡萄に杏子かな? これは。全部それ"らしい"ものだけど、インベントリに入れた時の解説で喰えるってあるし、大丈夫だろ」


 あとこっちはゴミ入れね。そう言って、ヒヨさんはカインたちの前と、俺たちのソファのテーブルにボウルを置いた。ほむがさっそくオレンジの皮を剥いて、まるのまま齧り付く。正しくオレンジな柑橘系の香りが漂う。手を果実の汁で濡らしながら食べるほむに、ヒヨさんが笑った。手拭が要るなぁ、そう言ってヒヨさんはキッチンに向かった。

 これ以上個人的な話題を続けたくなくて、俺はヒヨさんの果実の話題に乗る。


「……果実食べられるんですね、アバターなのに。それにしてもいろんな種類生えてましたね。季節がめちゃくちゃだ」

「美味いよ? 現実と同じ味がする」

「よかったな、ほむ。種類に関しては、実にゲーム世界だぁね。そうそう。1階の厨房に一通りのものが揃ってるから、ゼロスの好きに使ってネー。料理とか作ってもいいのよ?」


 棚から取り出したタオルを水で濡らす。タオルを絞りながらにこやかに笑うヒヨさんの言葉を受けて、俺はぐったりとソファに寄りかかった。


「……ヒヨさんもまたそう言うか……」


 脱力した俺にヒヨさんは困ったような表情を向けた。


「食事と睡眠は人間の基本よ? 精神的にヘバるなら、そこだけは押えとかないとねー。まぁ、今日は果物でも喰っておけばいいんじゃね?」

「……つまり、明日からは俺に作れ、と?」

「もちろん俺も手伝うよ? つうかね、このホームと通行人見る限りこの街は上下水整備されてるみたいなんだけども――あ、トイレも風呂もちゃんと使用できたわ。それでも外で食事したくないのよ、俺」


 絞ったタオルをボウルの傍に置いてヒヨさんが言うと、カインが眉を寄せて首をかしげた。ヒヨさんの言った事を俺も不思議に思う。

 そろそろ良い頃合いだろうと判断して、茶櫃の蓋の上に並べた湯呑にお茶を均等に廻し入れる。一瞬お茶を淹れる俺を横目で見て、そして眉を寄せたカインがヒヨさんに問う。


「……俺的にはゼロスさんに負担をかけるよりは、外食を推奨すべきだと思うが……ゲームでも食堂や屋台らしきものが存在してましたし。なにか懸念が?」

「ゲームの設定からすると、せいぜい16,7世紀の世界観なんだよねぇ、ココさ。街的にはイタリアメインのフランス混じりかね」

「それが、何の問題に? ……舌に合うかどうかは、確かに疑問がありますが。食べる気力があるなら外に出て食事を取った方がいいと思うが……」


 俺が潔癖気味なのかも知らんけど、さ。と、ヒヨさんが苦笑した。


「衛生観念ってどうなんだろね、ここ。後進国程度なのか、上下水道完備された近代ぐらいは有るのか、はたまた難民キャンプばりに危ういのか。いずれにしても旧日本ほどの清潔感はなさそうなんだよねー。ま、ほむは好きに外で食事して来いや」

「俺で試すの止めてくださいよ。腹壊すとほんと悲惨なんすから」

「お前なら屋台の良し悪し見極め出来んだろ? そこで普段の食い意地の悪さ発揮しとけよ。たとえハズレても、腹ぐらい回復魔法で治るんじゃね?」

「だから、俺で試さないでくださいよ」


 憮然としたほむがヒヨさんに文句を付けると、カインが何とも言い難い表情で考え込んだ。俺がお茶を淹れ終わると、ヒヨさんが立ち上がれない俺の代わりに湯呑を配ってくれた。


「……ああ。ヒヨさんすみません。ありがとうございます」

「ま、ゼロスもお疲れでしょ。今日のところはゆっくり休みな。でも明日からは食事の件よろしく」

「俺たちは生身でなく、アバターですから。……この世界に適応してると思うんですよ。多少衛生的に劣っていても、大丈夫では?」


 そう言って、湯呑を手のひらで包み込むようにそっと持ち上げると、カインがゆっくりお茶を飲み込む。そして深く溜息を吐いた。

 安堵するようなカインの溜息にヒヨさんは笑うと、泣き疲れてぐったりとした里香ちゃんの手に湯呑を持たせる。


「――飲んで。少し水分を取った方がいい。緊張すると脱水症状が起き易い。余計気分が酷くなる。トウセも、キツイのは分るが少し胃にものを入れろ」


 ヒヨさんはどこか呆けた風の里香ちゃんの口元に、持たせた湯飲みを当ててやる。里香ちゃんが少しだけお茶を口に含んで、飲み込んだ。肩が持ち上がってゆっくり落ちる。口から軽く息が抜けた。ついさっきまで焦点のぶれていた里香ちゃんの瞳が、じっと湯呑を見つめる。――良かった。心あらずだった様子が少しはましになったようだ。

 トウセもふらつきながら身を起こして、置かれた湯呑の中身を一気に飲み干した。


「……甘い」

「玉露な。ゼロスの淹れ方が上手いんだろう。ほれ、お替り」

「あ……。ありがと」


 ヒヨさんが自分の分の湯呑をトウセに渡す。トウセはきまり悪げに湯呑を受け取り、今度は少しずつ飲んだ。


「アバターの適応はさて置き。どちらかと言うと生理的な問題だと思うんだわ、コレは。俺ねぇ、パセリとかツマとか飾り物の使いまわしとか、マジ鳥肌立つのね。知らん人間との食器の共有とか無理だし。もちろん飢えてんなら気にしないけど、現状はまだそんなことはないわけで。これに限ってはエコとか死滅して欲しいのねー」

「……食器の共有というのは、自分専用の食器じゃないと食事が出来ないみたいな感じですか?」

「いや? 洗ってあるならいいのよ? フォークとかスプーンとか、洗浄してないものを何某さんと共有したりするのは御免だってこと。俺はマジ無理だわぁ」

「使い捨てカトラリーとかないにしても、屋台はともかく食堂なら大丈夫じゃないですか? いくらなんでも上下水道が存在するのに、洗い物しないなんてことないでしょう?」


 相変わらず、もってまわったあげく意味を取りづらいヒヨさんの言葉に、俺は内心うんざりしながら言った。非常時なのに何一つ変わらず動じないその性格が、ある意味羨ましい。

 ヒヨさんが可愛らしく頬に手をあてて、小首を傾げる。


「食材と残飯の扱いとかどうなってるんだろうね? そもそもごみ処理全般か。そこが判明しない限り、外食は勘弁。自炊するわぁ」

「残飯って、フランスみたいに宝石商とかそう言った話ですか?」

「そう、そこ気になるよねぇ。流石に元料理人だね、ゼロス」

「いや今も俺は料理人ですよ。単に入院中だから仕事休んでるだけで。――フランス料理かじってましたから、習いました」

「ゼロス、宝石商って?」


 カインが眉を寄せたまま俺に聞く。ヒヨさんに聞いてもらちが明かないことに気付いたのだろう。真剣な顔のカインに俺は苦笑する。


 ヒヨさんは論点をぼかす言い方しかしない。……多分。カインの真面目さは振り回しがいがあって、ヒヨさんは楽しいのだろう。

 要領が良い割にどこか真っ直ぐなカインに比べると、ほむはかなりいい加減な性格だ。要領以前に世慣れした感じが強い。同い年な所為か、余計に両者の性格の違いが目立った。あるいはまだ学生のカインと、社会人だったらしいほむの経験の差かもしれない。


宝石商ビジュティエは19世紀フランスであった、政府公認の残飯処理屋だよ。貴族の屋敷や高級レストランの残飯を安価で買い取って、市井の屋台や食堂に降ろす業者だ。……ああ、なるほど。そう考えると、確かにこの世界でも居そうですね、宝石商は」


 政府公認の残飯正規業者だった宝石商も凄いが、その宝石商ですら"商品外"と判断したモノを売る人間もいた。ミックスされた残飯の、まだらにな染まった色から"アルルカン(ピエロ)"と呼ばれた正規外の業者や、"残飯のさらに残飯の果て"売り業者の"石炭堀り"なども居たらしい。

 残飯まで行かなくても、例えば調理場で焼いて滴った"肉の脂"だとか、ソースの"元"になった"野菜"だとかを、料理人自らが業者に売り渡し、その業者が別の料理に加工するなんて時代もあった。正直俺たち日本人には理解できない食の惨状だが、果たしてこの世界ではどうなっているのか……。


「固形物なら口にする前に気付くと思うんだけど、混じってたらなぁ……食べ残しのスープとかさ、裏で鍋に戻されても解らんだろ? 第一食事のマナーとかどうなってんの、この世界」


 潔癖には不便な世の中なのねー。と、ヒヨさんがぼやいた。わざとらしく怯えた風のヒヨさんに、さすがに今度は俺も同意した。


「そう言うことを考えると、生理的な意味でかなり抵抗がありますね……。残飯を破棄するなんて当たり前の考え方、ここで通用するか分からないのか……。難儀だな」

「……それは。つまり、料理人は食事を作る前に手を洗っているかどうかレベルのことまで、最初から確認する必要があるってことか」


 きついな。そうカインが呟く。確かに厳しい。そして、ヒヨさんが俺に調理を強要しようとする理由もよく分かった。


 俺たちがホームもアイテムもゲームマネーも何も持たない状況だったのなら、残飯でも何でも食べられるものを口にしただろう。しかし、現状は調理する環境も食材も充分揃っている。これで街に食堂があるからと、安易に考えて外食した挙句、食ったものが人の残飯――まで行かなくても、許せる範囲外の"食品"だったと後で気付いたら……多分、吐くとかのレベルじゃない。

 調理するのが面倒臭いだとか、或いはグルメだとか、そう言って食べ歩くのはこの世界の衛生観念を確認してからでも遅くない。


 俺は溜息を吐き出す。正直気が重いが仕方ない。


「分かりました、しばらく料理は俺が作ります。ただ、手伝いだけはお願いしますよ。俺独りでは無理だ」

「当然。喜んでアシスタントしましょ。あとネー。外出もしばらく避けた方が良いかもねー。取り敢えずティーに関しては、現在保護者委任を受けてる俺が決めるが、外出も狩りもさせるつもりはない。もしどこかに行こうとしてたら止めてね? 嫌がって、スゲー暴れると思うけど」

「ヒヨさん。頼むから、結論だけじゃなく理由を説明してくださいよ。あとティーならほむと常に一緒なんだから。その手のティーの暴走、いつもほむが止めてるでしょう?」


 寝こけるティーに目を向けると、その隣でほむがリンゴを囓りながら肩をすくめた。山盛りだった果実をほむが1人で食い尽くしそうだ。食欲旺盛なほむに呆れた顔で、バルサが言った。


「外出る気力なんて、当分ないわよ……」

「ゲームそのままの世界なんて、ティーには魅力的だろうからなぁ。目が覚めた後は分からんよ? 異世界移転な物語の主人公よろしく、この世界の常識も法律も何もかもをぶっ飛ばして無双しそうでなー。でもってさっきも言ったが、その手の主人公と自分を同一視して暴れるプレイヤーは必ず出てくるだろうと思うんだわ。自滅してもらう分には構わないんだが、そいつ等に巻き込まれるのも、同類視されるのもマズい」


 ヒヨさんの言葉にカインが肯く。


「あの"腕"の事もあるし、俺たち以外のプレイヤーが存在していると言う前提で動いた方が良いな。システムの把握は当然すべきことだが……。だからと言って閉じこもって居ても、この世界を調べようがない。ただ……、正直俺はヒヨシさんがそこまで慎重になる理由が分からない。基本的にゲームと同じ仕様のだと言うなら、よほど無茶しない限り高レベル帯の俺たちはある意味安全な気がしますが?」

「いや? むしろ何もかもリセットされてる方が、なんぼかマシだったんだけどねぇ。……まぁ金は多少必要か? ――どうかな、分からん。どうしたもんかな……」


 珍しく、――本当に珍しい真面目な表情で、ヒヨさんが考え込んだ。怪訝そうなカインと同じような顔を、今俺もしているだろう。何もかもリセットされてるなんて、このゲームではある意味地獄だ。そもそもそれなら、あの魔術師との戦闘中に殺されて終わることになる。……俺は、死にたくはない。


「死んだらログアウトになるのかね? 蘇生アイテムあるし試すか……。いや、ゲームでもペナルティ設定されていた以上、避けた方が賢明か。現実の体にどのくらい影響があるのか判らんしなぁ」

「欠損アバターの腕、実体化してたし。死の定義が違うんじゃないすかね?」

「だねぇ。ゲームだったら、HPがゼロの時点でアバター半透明になるだけだしねー。HPが無くなるのと、死ぬのは別なんだろうねぇ……。――さて、どうするかな」


 ヒヨさんの予想にほむが口を挿む。ヒヨさんは真剣な顔で頷いて、ティーの分の湯呑を取り上げてお茶を飲み干した。


「ま、検証はこれからのお楽しみにするか。寝て起きたらログアウトしてたり、夢だったりするかもしれないしな」

「……そうですね。取り敢えず、今日はもう休みませんか? こんな状態では頭が上手く働かない」

「そうだな。俺も寝たい。起きたら何か作るから、今日のところはお腹がすいても果物食べて我慢してくれ」


 カインの意見に俺も合意した。ぼんやりとしたままのトウセと、目を閉じたままの里香ちゃんをこのまま放置は出来ない。


「ヒヨシさん、このホームは全員分の部屋があるんですよね?」

「余るほどあるとも。3階の個室は基本的に作りが全部一緒だから、好きな部屋を選んでね。ホームの設定で人の出入りを禁止しておいたから、安心して休めるだろう?」

「ありがとうございます。さて……里香さん立てますか? 個室で休みましょう。寝て、きちんと体を休めた方が良い」


 カインが里香ちゃんの肩を抱いて立たせる。俺も立ち上がった。ただ緩慢にしか動かない怠い体を引きずって歩く。ぐったりして呆けるトウセを促して、個室へと向かうことにした。


「ほむ。4階のティーお気に入りの部屋に運んで一緒に居ろ。目ぇ離すなよ」

「アイサー」


 部屋を出る俺たちの後ろで、ほむがティーを肩に担いでいるのが見えた。だらりと体を弛緩させて、されるがままのティーが荷物のようだった。



 階段を下って、3階に降りる。口の形をしたこのホームは、4画目の下棒の位置に住居スペースがあった。渡り廊下の窓から中庭が見える。芝生が青々と生えテーブルがセットされていた庭は美しい。階段や廊下の大きな窓は出窓で、クッションが積まれて腰かけて休めるスペースが必ず在った。

 所々に間接照明や観葉植物が計算されたようにセットされていて、ヒヨさんのインテリアに対する括りが良くわかる。凝ったインテリアの殆どが課金アイテムのこのゲームで、どれだけ金を注ぎ込んだのか……。このホームだけならまだしも、各地に無数にあるホーム全てがその土地の風土に合わせてデザインされているらしいのだから、脱帽するしかない。


「あ……ここで……」


 カインの部屋の隣、緑のタペストリーと壁が落ち着いた色合いの部屋を里香ちゃんが選ぶ。震える指で扉を示す里香ちゃんの姿にカインが大きく頷いた。片言でも発言する気力が里香ちゃんに戻ったことを、俺は安堵した。

 ずらりと並ぶ扉から、俺は自分の部屋を黄色のタペストリーが飾られた場所に決めた。適当に個室を挟んでバルサやトウセも自分の部屋を選ぶ。何となく誰がどの部屋に決めたのか確認して、それぞれが室内に入って行った。


 独りになったとたんに眠気が襲ってきた頭を宥めて、部屋を確認する。

 淡い落ち着いた黄色の壁。細かい細工の彫られた柱と黄色い壁紙――いや、壁紙ではなく織られた布が張られ、柱との境に平編みされた糸ブレードが打ちつけられている。凝った作りだ。

 ヒヨさんは個室と言っていたが、入ってすぐの応接室にベッドルーム、それとバスルームとヒデ付きのトイレもあった。かなりの広さだ。ベットルームには鏡と空の棚、それに椅子が置かれた小部屋もある。何に使うのかしばらく悩んだが、いわゆる衣裳部屋らしい。……懲りすぎだろう。

 馬鹿馬鹿しくなって、装備を解いてキングサイズの広いベッドへ飛び込んだ。眼鏡が鼻頭に当たって痛い。外した眼鏡を巨大なベッドの端に放り投げて、布団に潜り込む。もう風呂とかそういった雑事を考えるのは後でいい。ただ眠って休みたい。柔らかな布団――多分真綿だ。真綿の布団に体を埋める。目を閉じてゆっくりと呼吸をした。


 中庭に植えられた木の、梢が波のようにざわめいた音が僅かに聞こえる。寄せては返す波のような優しい音に耳をかたむける。疲れが体に染み込み、興奮とささくれた気持ちが少しずつ凪いていく。

 そうして。俺は完全に思考を放棄して、そのまま眠りに沈んだ。





 浮上した体に、囁きが響く。


 目を開けると薄暗い部屋がぼんやりと見えた。ベッドから体を起こす。窓の外、中庭から淡い光が漏れ挿している。窓を覗くと中庭に生えていた木の葉が朧に発光して照らしていた。

 緑の小さな光の粒が梢にまとわりつき、風にそよいで揺れている。水のせせらぎのような葉擦れの音が、囁き声のようだった。

 幻想的な光景だ。


 窓を開けると、少しだけひんやりとした風が部屋に入り込んできた。風に体を晒して眠気を飛ばす。しばらくそうして影を落とすほど強くない、儚い葉の光に見とれた。

 目にも柔らかな緑のイルミネーションが視界に広がり、ここが本当に現実ではないと――目が覚めてなお、"Annals of Netzach Baroque"という虚構の世界なのだと。そう実感せざるを得なかった。


 溜息を吐いた脳裏に、新規メッセージの着信マークが点滅していた。――ヒヨさんと、カインからのものだ。


 ヒヨさんからのメッセージは、ギルドの共通タブに飲料水と果物、それに野菜スープを入れたと書いてあった。野菜スープはどうやらヒヨさんが作ったらしい。説明欄に制作者名としてオフィーリアの名が記載されている。細切れの野菜が浮かぶ、湯気の立ったスープ。野菜スープが入った両手持ちのカップがアイコン表示されていた。

 インベントリに入れた時点では無変化保存されて、温度変化もなく熱いまま保たれるらしい。また、使用済みのアイテムをインベントリに収納する際は、必ず洗面台の上で行うこと。汚れが真下に落ちて残る。そう注意事項が添えられていた。同じ要領で、使用済みのタオルなどが疑似洗濯かつ乾燥までされる。とも書かれている。


 不思議な法則だ。カップに注いだスープをそのまま収納出来るのに、残った液体を汚れと判断する、その差は一体どこにあるのだろうか? 量なのか、温度の変化なのか……。洗い物に煩わせられる心配は無いとしても、これはこれで別の問題が出てきそうだ。後でヒヨさんに聞いておかなくてはいけない。


 ベッドの上であぐらをかくと、スープを取り出した。スプーンとカップを乗せるトレイはもちろん、ご丁寧なことにランチマットと手拭きも人数分あった。……水に濡れただけの布巾は収納できても、使った時点で汚れになるのだろうか? ヒヨさんの書き方だとそうとしか取れない。

 両手を拭いた後、窓の外に手を出して手拭きをインベントリに入れてみた。手の平に乗せた手拭きが消えた瞬間、指の間を水が伝って滴る。――インベントリから手拭きを取り出すと、乾いた手拭きになっていた。……なかなか微妙な法則だ。


 水で濡れた手を拭き直し、小さなカップの中に注がれたスープを観察する。肉を食べる気満々だったヒヨさんが作った割に、肉は入っていない。俺が肉を嫌がったせいか? それから野菜の種類は多いものの、やたらと具の量が少ない。人参と玉ねぎに黄色いパプリカ、そして緑のブロッコリーが小さく角切りにされて、黄金色のスープにわずかに沈んでいた。ほんの微かにニンニクの香りがする。食欲を刺激するその香りに誘われて、今日1日で酷使されただろう胃のためにもスープを飲むことにした。


 湯気の立つ液体を慎重に啜る。鼻にニンニクと、玉ねぎの甘い香りが漂った。旨い。のどの奥を伝い、胃に落ちていく熱に気が休まる。ほっと息が抜けた。

 肉自体は入っていないし脂が表面に浮いているわけでも無いが、きちんと肉の出汁は出ていた。……コンソメの素でもあるのだろうか? 塩味も控えぎみだが、舌に優しくてかえってそれも有り難い。

 野菜もそれぞれが適切に熱が入り、どれも同じ固さになっていた。少し柔らかめにしたのだろう――噛むと言うより歯で押し潰す程度の触感で、食べる人間のコンディションが考慮してあった。料理人の俺から見てもレベルの高いスープの出来に思わず唸る。というか、ヒヨさんはここまで料理出来るのか……。意外だ。

 リアルのヒヨさんに会ったのは、俺たちギルメンだけで開いたオフ会の時だけだが、あまりそう言ったマメな印象がない。……いや、多分介添えの女性に俺は気を取られたのだろうが。


 "Annals of Netzach Baroque"で知り合ったメンバーで開いたオフ会は今までで10回ほどある。ゲームのメンテナンス日に合わせ、大抵はメグさん達ギルドと共同で開催するが、3度だけ俺たち8人だけでオフ会をしたこともあった。ヒヨさんは基本的にオフィーリアの中の人バレをしたくないと言って、メグさん達との共同オフ会には参加しないのだ。


 オフ会で会った時は、ヒヨさんは怪我をしてリハビリ通院中だったので車椅子で参加していた。――とびきり美人の介添え付きで。

 20代半ばだろうヒヨさんより年下の恋人。その美女に車で送迎されて居酒屋に現れると、ヒヨさんは自分の恋人を犬でも追い払うようにさっさと会場から追い出した。恋人に対するヒヨさんのそっけなさにも驚いたが、その女性が言われた通り黙って退出することにも驚愕した。

 その後もその女性は、オフ会が終わったとヒヨさんが連絡したとたん迎えに現れた。どうやらオフ会の間中、ずっと車で待機していたらしい。


 しかし本当に驚いたのはその半年後、2回目以降のオフ会だ。

 車椅子から松葉杖に変わってはいたが、両腕に杖を抱えたヒヨさんはやはり介添人と一緒に来た。20代半ば、年下の美女――ただし、前回とは別の女性。

 さらに3ヶ月後の3度目のオフ会にも、また別の女性と共に現れた。もうヒヨさんは片手でしか杖をついてなかったが、前回、前々回と同様に恋人を車中に待機させたまま、自分はオフ会を相変わらずの調子で堪能していた。

 リアルでも仲の良いらしいほむ曰く、ヒヨさんは普段からあんな調子なのであまり恋人と長続きしないらしい。里香ちゃんなんかは半目の無表情になってはいたが、同じ男としては……。短期間とは言え従順な恋人、しかも美女ばかり。……正直、羨ましい。


 この料理の腕といい、短期間で次の恋人を捕まえる手腕といい、マメじゃないと出来ない芸当なのだろうが……。それでも意外だ。今度女性を口説くコツを聞いてみようか……いや、俺はどちらかと言うと年が上の女性が好きだから、あまり参考にはならないか。――ではなくて。


 深く息を吐く。ろくでもない事しか頭に浮かばない。考えなくてはならない事があるのは分かっているのだが――。

 空になったカップをトレイに置く。慎重に呼吸をして吐き気が無いことを確かめた。……うかつに思考を回すと、またあの戦闘を思い出してしまう。俺は死にたくなかった。だから。……俺は。


 瞬間、扉を叩く音が聞こえて我に返った。


 この部屋の扉か? いや、でも……。つかの間迷った俺の思考に、"コール"が割り込む。ヒヨさんだ。あまりのタイミングの良さに、思わず苦い笑いが浮かんだ。


「なんかありましたか?」


 扉を開けてヒヨさんを迎えると、酒が入っているらしいずんぐりとした小瓶を俺に見せてヒヨさんが笑った。


「少し飲まないか? 5階の広間にバルサとほむ達も居る。余裕があるなら少し話しがしたいんだが」


 どうよ? と誘いをかけるヒヨさんに俺は逡巡して、そして肯いた。……これ以上、独りで居たら恐らく悪い方にしか考えがいかなくなる。もう一度寝るには頭も冴えすぎたし、みんなが居るならそれで気が紛れるだろう。


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