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14.贖罪

男は立っていた。見慣れない風景だが、見覚えがある場所だ。


「私は神サマだ。」


背後から声が聞こえた。


「ふざけやがって。ミスズを、、、」


そう言って男が振り返ると、あの緑色の悪魔がそこに居た。


「致し方なかった。あの世界では、そこかしこで不老不死の魂が勝手に増え始めていた。制御不能だ。不老不死は真理に反する。神は現世での魂の活動に直接影響できないが、間接的な対処では到底間に合わん。同様の『対策』を、幾つかの世界で実施した。」


男はそれを聞き「やっぱりか」という顔で溜息をついた。


「それ以外の世界は?大丈夫なのか?」


「不老不死は同じ時代にせいぜい一人か二人。その程度なら増える可能性は低い。いずれ事故や病気で勝手に死んでくれる。」


「何故、俺たちの世界ばかりに、大勢送り込んだ?」


「対処した世界には、『色が判別しやすい魂』が自然と集まる場所が点在していた。色合わせを慎重にするあまり、送り込む先が意図せず偏った。『勘の良い魂』が集まる場所と同じような理屈があるはずだが、まだ解明はされていない。」


なんてことだ。「バグ」は二つあったのだ。


「何十億の魂が一斉にここに来たのか?」


「その通りだ。これまでにも同様の『対策』は度々実施されている。他の魂と何ら変わらん。滞りなく次に進んでいく。心配は要らない。」


「心配は要らないって。皆、あの世界で抱えていた人生があったんだよ。ひでぇことしやがる。」


それを聞いた神サマの顔が、悲しみを含んだように見えた。「少しは人の心があるのだろうか?」と男は思った。


「此度の『対策』の原因は神にある。お前たちにも余計な苦しみを与えた。『神の悪戯』の対象となった魂には、特別な計らいが与えられる。」


「特別な計らい?まさか、前の現世で『再開』してくれるとでも?」


「勘が良いな。若くして死んだ者には、それが一番よかろう。ただし、記憶は封印する。不老不死では困る。」


「同じ魂のままで生き返るのは、真理に反するって言ってなかったっけ?それに、記憶を封印したら『続き』にならないじゃないか。体は大人で頭脳は赤子じゃ困る。」


「不老不死に比べたら、生き返りなど些細な問題だ。それ以前に、お前は既に別の現世を生きてきたのだから問題ない。生き返る先での記憶はその世界のものだから、封印されることはない。なんだ?あまり嬉しそうではないな?あれほど戻りたいと騒いでいたのに。」


「不老不死とか、生き返りとか、この世界にはそぐわないなと思ってさ。人は必ず死ぬ。突然の別れも多い。それが当たり前なんだよ。」


「驚くほどの成長ぶりだな。しかし、この計らいはただ戻るだけではないぞ。『私』からの『詫び』が含まれている。下準備には本当に苦労した。お前はどうも私達をバカにしているようだから、神の真の力を見て驚き、感謝するがいい。」


「驚きたいけど、ここでの『思い出』は封印されちゃうよね。」


「いずれ『あの世』に行けば全て思い出す。そこで驚け。」


「まだまだあの世に行きたいとは微塵も思わないよ。気の長い話だ。」


神サマはニヤリと笑い、手を高く上げた。


「納得したなら、行ってくれ。神は忙しい。」


男は憎しみを込めて言った。


「自業自得だ。」


神サマが手を振り下ろすと、男は光よりも明るい何かに包み込まれた。その直後、彼は落ちていく感覚を覚えて意識が遠のいた。


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