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十二湖は、今日も蒼い ―八峰 遥の天運―  作者: 菜乃花 薫


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3/10

「十二湖は、今日も蒼い」2

淡々と車で走り、2時間ほどで十二湖駅に着く。


「新車だから、まだ足廻りとエンジンが渋いわね」

たかだか100km程度では、アタリすらつかない。


『おまけに君の運転は模範的だ。エンジンにやさしい運転をしているからだろう』


「あら、随分と褒めてくれるのね」


『ふむ、徐々にアタリを付けていく方法かな?』


「経験上、慣らしをきっちりしないと最新エンジンでも2,3万kmでヘタるからね

そのたびにエンジンばらすんじゃ、面倒でしょ?」


『まるで君自身がバラすような口ぶりだが?』


「やれるところはやるわよ。

最近は暇もないからやらないけど」


そう言いつつ、時間通りにやってきたリゾートしらかみを見る。


「あれは”橅”ね。あれもハイブリッドらしいわね」


『そうらしいな。同じハイブリッドでもまた違うものだ』


静かに走り行く橅を見送り、車を発進させようとすると


『せっかくだから、十二湖とやらに向かってみないか?

結構な坂なんだろう?登坂能力を把握したい』


「じゃあ、すぐ左ね」

そう言ってウインカーを出す。


「やっぱりこの車じゃ、道路が狭く見えるわね」

右へ左へと忙しいハンドルさばきに、時折出てくる狭隘箇所。


「よく観光バスでここを走れるわね。ドライバーさん凄腕過ぎない?」


『さすが専門職、と言ったところか。

私の認識でも広くはない。まあ、ミリ単位で幅寄せは出来るが』


「まあ、可愛くないこと」


そんなことを言っている間に、王池駐車場に到着する。


『突き当りまで行けば、もっと大きな駐車場があるだろう?何故ここに?』


「あそこ、お金取られるのよ?

その分、ソフトクリームでも食べた方がいいじゃない?

歩いたって大した距離でもないし」


『合理的というかケチ臭いというか。

12億持ってるとは思えないな』


エンジンを止めたから、タブレットから聞こえ始めた。


「あら?文句があるならこのまま置いていこうかしら?」


『なるほど、私が悪かった』


タブレットを手に持って歩くのも意外と面倒なものだ。

そう思って首から下げるストラップをくっつけてある。


『計算外だったが、君が歩くと思った以上に揺れるから、見える画像がダイナミックな動きをするものだな』


「酔ったりしないの?」


『酔いはしないが、センサー類の数値変化も凄く、処理が忙しい』


実感がこもってるが、確かに自分がスマホだったら歩く事自体がせわしない画像の動きとデータの常時変動になると考えたら、わからなくもない。


てくてく歩いていると、駐車場と物産館を横目に鶏頭場の池の横を歩く道に入っていく。


「なんで鶏頭場なのかしらね」


『なんでも鶏のとさかに似てるから、らしい』


「じゃあ、場の字が違うんじゃないの?」


なんて話をしていたら青池までたどり着く。


日が差して今日はまさに”青池”だ。

なんとも言えない蒼い水を湛えているのは好天でなければ見られない。


見ている間に観光バスが来たのだろう。

ガイドを伴った一団が来たので、デッキを奥へと入っていく。


『こっちもルートがあるみたいだが、どうする?』


「戻ったって人が多すぎるし、日が暮れるまではまだ時間があるから、散策路を歩きましょ」


そう言って歩き出した。


以前歩いたときは雨上がりで、道がぐちゃぐちゃだったが今日は歩きやすい。

一応、山なので肌が出ないようまくっていた袖を下ろす。


『こういったところはネットでは見つけられないものだ。ブナ林、と言うらしいが私には匂いなどが感じられないのは返す返すも残念だ』


「タブレットじゃしょうがないけど、本体なら匂いセンサーがついてるわけ?」


『ついてはいるが、君らが見たらあまり気持ちがいいものではないだろう』


「あ、なんとなく想像がついたから説明はいいわ」

思わずしかめ面をしてしまった


『察しが良くて助かる』


返事から想像通りなのだろう、とこれ以上考えるのを止めた。


わざと遠回りをして、あちこち散在している池が見えないかと歩きながら、道路まで戻った。


駐車場まで戻る道すがら、カールがこう言い出した。


『そういえば、日本キャニオンという看板があったし、情報も出てくるが実際にはどんなものなのかな』


「まあ、グランドキャニオンをイメージしてるなら大分スケールダウンしてる、んでしょうね。

グランドキャニオンを見てないから比較できないけど、まあ思ったよりは小さかったと思うわ。」


そう答える。


「見たいの?」


『せっかくだし、情報としては知っておきたい』


「じゃあ、少し歩きましょうか」


そう言ってまた歩き出した。


「ところで、バッテリーは大丈夫なの?」

結構な時間歩いているし、アプリも動いているのだから確認したほうがいいか。


しかし、返ってきた答えはこうだった。


『OSを全て書き換えて省エネを図り、バッテリー入出力も完全制御している。

普通に私が動いていても1週間は余裕で持つよ』


「車だけでなくタブレットもハッキングしたの?」


『そうだが?』


「……あんた、黙ってたら私のスマホ壊すところだったんじゃないの?」


『最適化するだけだが?』


「OS書き換えのどこが最適化よ!」


その辺の湖に捨てていこうかしら、こいつ。


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