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八ツ色物語〜失われたヴァイス属性魔法を駆使して平和を掴み取ってみせる!〜  作者: 君影 ルナ
いっしょう

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1-51 色の変化

「いや、気のせいかもしれないんですけど……この間よりも少し色が濃くなって、水色から青色に近づいてきた、というか……?」


 毎日鏡は見ていたはずなんだけど、全くそのことに気がつかなかった。ずっと私達の様子を黙って見ていたクロユリさんにも意見を聞こうと振り返ってみると、クロユリさんも驚いた様子を見せていた。


「俺はエンレイと会う頻度が高かったからこそ気がつけなかったのかもしれないな……」


「なるほど、私も()()鏡を見ていたから、微細な変化に気がつけなかったのでしょうか。」


「そう、だな……エンレイ、何か違和感はないか?」


「い、いえ、全く。」


 クロユリさんに両頬を掴まれて、さらに至近距離でジーッと見つめられて、ジワジワと広がる羞恥心と異常な程早い心音に苛まれてしまう。なんとか返事はしたが、それだけで精一杯だった。


「あ、あの、一度ノコギリ荘で診てもらってはいかがでしょう?」


 薄紅さんの提案に、私とクロユリさんは声を揃えた。


「それだ!」


…………


 怪我は治したが一応診てもらった方がいいだろうということで、薄紅さんも一緒に、三人でノコギリ荘へと向かうことにした。


 扉を開けて中に入り、通りがかった職員さんに薄紅さんのことを伝えるとすぐに診てもらえることになった。


 薄紅さんとはそこで別れ、私も別の職員さんを探していると。聞き覚えのある声が耳をつんざいた。


「あ、またお前怪我でもしたのか馬鹿め! 自分で治せ馬鹿め!」


 はい、いつものようにラナンキュラス大先生が私を見つけては『馬鹿め』と連呼してきた。


「いえ、怪我は全くないです。」


「なら何で来た!」


「この目について、です。なんか色が変わってきたみたい、で?」


「目、だぁ?」


 ラナンキュラス大先生ら心底馬鹿にしたような声を上げるが、サッと下瞼を押さえペンライトのようなものを翳しながらマジマジと私の目を観察して──仮面を被っているから『多分』としか言えないが──、一つ頷いた。


「確かに言われてみれば変化はあるな。」


「やっぱりそうなんですね!」


「だが、目の色が変わるだなんて聞いたこと無いぞ? お前今度は何やらかしたんだ?」


「ラナンキュラス大先生酷い! そんな私がトラブルメーカーみたいな言い方して!」


「実際そんなモンだろ。」


「ムムム……」


 ラナンキュラス大先生にバッサリ言葉を切られ、鼻と眉間に皺が寄る。


「でもそれこそクロユリサマの方がこういうの、知ってそうだがな。」


「いや、俺も分からなくてね。」


「じゃあ呪い方面ではない、と……」


 フムフムとラナンキュラス大先生は頷き、そしてこっち来いと私達に向かって手招きした。それに二人ともついて行けば、このシンプルな建物の中で唯一装飾が施されている扉の中へと誘われた。


「そこの椅子に座れ。」


「は、はい。」


 扉は比較的豪華ではあったが、その中は至ってシンプルな診察室だった。壁に沿うように置かれた長テーブルの上にはカルテのようなものが、そして椅子も三脚ほどあった。


「ここは俺用の診察室だ。」


 キョロキョロ見回していたのがバレたのか、ラナンキュラス大先生は簡潔に教えてくれた。


「で、だ。ひとまずお前の体に異常がないか、調べさせてもらう。いいか?」


「勿論、お願いします。」


 なんだかんだ言ってラナンキュラス大先生は優しい。目の色が変わったことによって健康的に異常がないか調べてくれるんだもの。唾つけとけば治る、とか言われると思っていたし。


「おい、俺はそこまで非道じゃないぞ。」


「ちょっとラナンキュラス大先生、考えていることに返事しないでくれませんかね?」


「お前の顔を見ていればそれくらい読み取れるわい!」


「えぇー……」


「……エンレイは考えていることが全て顔に出るからね。」


 クロユリさんまでボソッとそう呟いた。そして小さな声だったはずなのにラナンキュラス大先生にも聞こえていたらしく、ウンウンとその言葉に頷いていた。解せぬ。


「はいはい、それは置いておいて。さっさと検査するぞー。」


 まだ釈然としない中、ラナンキュラス大先生の一声で検査が始まるのだった。


…………


 検査結果は異常なし。つまり、いたって健康体だと分かった。今現時点ではその結果を見て三人で首を傾げるしかできなくなった、ということでもある。


「ウーン、じゃあ何が原因でそうなっているのか……」


「そもそも『いつから』変化し始めたのか、だよなぁ。毎日のように会っていたからこそ気がつけなかった、ということは、相当な時間をかけてジワジワと変化していったことになるだろうし……」


「この俺でさえ、言われてマジマジと観察しなければ分からなかったくらいだからな。むしろ指摘してきた奴がよく気付いたよな、ってんだ。」


「それはそう。」


「でも薄紅さんが気付くぐらいなんですから、変化したのは大群襲来以降、ということでしょうか?」


 まあ、その前からも変化していた、という推論を否定するくらいの説得力はないけれども。でも確実性でいえば、まず一つの目安にはなるだろう。


「ウーン、ちょっと今日だけじゃあ原因までは分からないな。これは俺が調べてみるから、クロユリサマとお前はまず与えられた任務に集中してくれ。」


 ラナンキュラス大先生は『面倒くさいが、他の人間にも同じ症状が出ないと言い切れないからな、調べてやる』と上から目線なのはいつも通りだが、それ以上に頼もしいことを言ってくれる。


「分かった。頼む。」


「お願いします。」


「この俺が『分かりませんでした』なんて泣きつくわけがないからな、俺のことは気にしないで待っていろ。」


 尊大で、でも私を慮ってくれていることが分かる物言いは、それまで心の中にヒッソリと燻っていた不安を取り払ってくれた。


…………


 ノコギリ荘を後にしてクロユリさんとも別れ、特にすることもなかったから家に帰ってきた。まあ、白花家の書庫に行きたいという思惑もあったけれども。


 そういうわけで、書庫に入る許可をもらおうとツユクサさんの執務室を訪ねた。


「失礼します。」


「あらエンレイ、今日は帰ってくるのが早かったのね。おかえり。まぁ座って座って。」


「ただいま帰りました。」


 ツユクサさんに促されるままソファーに?座り、いつ用意したのか分からないくらいタイミングよくキンレンカさんがテーブルにお茶を置いてくれた。それを一口飲んで一息ついてから、口を開いた。


 森で進化系ガイストを探していたが、塔を探す方が確実性があると判断して探索していたこと、その塔の現れ方が魔法的だったこと、そういえば空色魔法を習得していないことに気がついたこと、そして最後に私の目の色が変わっていたからノコギリ荘で検査してもらったこと。それらを余すことなく話した。


「一日でたくさんのことが起きていたのね。……確かに言われてみたら目の色が濃くなっているかもしれないわ。検査してもらって異常なしと言われたのならひとまず安心していいとは思うけれども、何か身体的におかしいと思ったことがあればすぐに近くの人に言うこと。それは約束してちょうだいね。」


 あなたはガイスト殲滅に必要不可欠なのだから、己の体は大事にしなさい。


 そう言ってツユクサさんは私の頭をぎこちなく撫でた。


「約束します。だって討伐中に倒れでもしたら迷惑がかかってしまいますから。」


「ええ、そうしてちょうだい。……それで、空色魔法を教えていなかった、という話だけれども。」


「ああ、そうですそうです! 教えてください!」


「勿論ですとも。……ええと、確か空色魔法は、別名カゲロウ魔法とも言っていたはずね。」


「カゲロウ魔法……?」


「ええ。何やら幻を見せる、だとか……」


「ツユクサさん、それって……塔が一瞬のうちに現れた、ということに繋がってきそうなのですが。」


「……塔が幻だった、ということかしら? その後あなたは眠っていたと聞きますし。」


「ウーン、そこまではちょっと分からないですけど……習得してみれば、もしかしたら塔の謎も解けるかもしれません!」


「そうなったらいいわね。じゃあ今夜から教えて……と言いたいところなんだけれども、ちょっと私も最近ずっと忙しくて、あなたに付きっ切りで魔法を教える時間を作るのが難しそうなの。ごめんなさいね。」


「いえ! こうして話を聞いてくださるだけでも、頭が整理されるので!」


「そう言ってくれるとこちらも有難いわね。書庫は好き勝手に見てくれて構わないから。」


「ありがとうございます! では私は失礼して、さっそく書庫に向かうことにします!」


「ええ、そうしてちょうだい。」


 ツユクサさんの許可も貰ったし、さっそく書庫へ行くことにした。どんな本が読めるか楽しみ……いやいや、まずは空色のカゲロウ魔法について調べなければ。趣味として楽しむ読書はこれからいつでもできるのだから、と己を律しながら廊下を進んでいく。

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