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八ツ色物語〜失われたヴァイス属性魔法を駆使して平和を掴み取ってみせる!〜  作者: 君影 ルナ
いっしょう

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1-39 千年

 やはり私の見立て通り、リラ()属性以外のガイストには毒無効化魔法が通用しなかった。まあ、想定内ではあるので、リラ()属性のガイストが現れたらラッキーくらいに留めておいた方が良さそうだ。


 そしてリラ()以外の色のガイストが出たら黄色、つまり閃光魔法を使おうと試みるが、どうもコツが掴めず今のところ一度も成功していない。


 地道な練習あるのみ。そう己に言い聞かせて、焦らないように自分を律する。


「ああ、でも、暫く休んでいたから……ちょっと動きが鈍ったかもなぁ。」


 今までより数がこなせていない。これではカナカ軍の次期総指揮官を名乗るに値しない。もっと頑張らなければ。


 もっと、もっと、もっと……!


 目と鼻の先にいたブラオ()属性のガイスト三体に向けて閃光魔法を放……てない。どんなにマナを流しても、どんなにイメージしても、魔法として変換されることはなかった。


 それならと頭を切り替えて毒無効化魔法を一度使い、効果がないと分かれば短剣で突き刺して……


 一体片付けている間にもう二体から放たれるブラオ()属性魔法……つまり水の玉が鋭い槍のように変化して私を貫かんとする。それをギリギリで避け──至るところをかすった傷は無傷と同義だ──、もう一体を片付ける。


 その間にも、最後の一体から放たれる魔法を剣で切り裂きそのままの流れで刺し殺す。


 私の青魔法……つまり治癒魔法を使えば怪我なんてすぐに治るのだが、余計な労力を使いたくないという理由でかすり傷は放置、そしてなるべく怪我を負わないようにしている。


 どうせ死なないのだから、という今までの無鉄砲で自殺的な戦い方をしないのは、ちょっとだけ、この真っ白い制服を己の血で汚したくない、という新品に対する緊張感からの行動だった。


 まあ、それはともかく。


 鈍ったは鈍ったけれども、全く動けないわけではない。そう己を鼓舞し、次のガイストを求めて辺りを徘徊する。


…………


「次期総指揮官殿! お疲れ様です!」


 またガイストを求めて彷徨っていると、近くで戦っていた(見知らぬ)隊員さんに話しかけられた。彼らもまた制服を着て、任務の一環としてガイストの間引きに来ていたらしい。


「お疲れ様です。」


 カナカ軍の制服を着ているということは、顔は知らずとも同じ志を持つ崇高な仲間なのだろう。そう思って彼ら二人組に返事もするが、その隊員さんたちはどうも様子がおかしかった。


「あの時は遠目でしか見られなかったけれども、近くで見ると随分な美人じゃん。」


「そうだな。」


 ニヤニヤと嫌悪感満載な笑みをこちらに見せる。今まで忌み嫌われていたこの容姿を美しいだなんて言っちゃって。どうも感性の違いがあるみたいで、とても不思議な気持ちになった。


「俺らそろそろ昼食休みになるんで、一緒にランチにでも行きません?」


「……さっき朝食を摂ったばかりなので、遠慮します。」


「そう言わずにぃ。美味しいところ、俺ら、知ってるんで。」


 ……ハッ、もしかしてこれがヨウさんの言っていた『次期総指揮官に取り入って己の地位をウンヌン』というやつか!


 オーケー、完全に理解した。私に対して美人と言ったのも、おべっかを使って私の気分を上げさせて己の地位を(略)作戦だったのだろう! ああ、乗せられて道化師になる前に気付いて良かった。


「いえ、遠慮させていただきます。それよりも一体でも多くガイストを滅することこそが私の存在意義ですから。」


「随分ストイックなんですねぇ、次期総指揮官殿は。でも少しくらいガス抜きもしないと。ガイストとの戦いはこれからも一生続いていくんですから。」


「そうそう! どうせガイストを本当に殺し尽くすなんてこと、できないんだから!」


「何を考えて……いえ、頭ごなしに否定してはいけませんね。それはどういう意味で仰っているんですか?」


 にわかには信じがたいことを平気でペラペラ喋るこの二人に、私はそう聞き返してしまう。


 だって私達カナカ軍は、ガイストが現れてからずっと、ソレを殺し尽くすために尽力してきたはず。それなのに『どうせ殲滅はできない』と隊員の口から出るなんて思いもよらなかったのだ。


「次期総指揮官殿こそよく考えてみてくださいよ。ガイストが出現してから今日までいったい何年経ったと思っているんですか? 千年ですよ? 今バタバタと足掻いたからって千年続いた戦いが終わると本気で思っているんですか? それこそオメデタイ頭ですね?」


 言いたいことは分からないでもない。でも、私とはトコトン意見が合わないらしい。私は、きっといつかガイストを一体も残らず殲滅してみせると信じているから。


「……なるほど、そういう考え方もあるんですね。それなら貴方達はどうしてカナカ軍に所属しているんですか?」


「そんなの、羽振りがいいからに決まってる! 遠いところから魔法を使ってガイストを間引きするだけの簡単なお仕事、魔法の適正があるなら所属しない手はないでしょう!」


「それな!」


 なるほど。そういう方もいらっしゃるんですね。自分とは全く違う考え方を目の当たりにして、ある意味感心してしまった。


 でも……


「……千年起こらなかったことがこの間起こりましたし、これからも異常なことが起こらないとは言えません。もっと安全な仕事に転職することをお勧めしますよ。」


 なんたってこの間、ガイストの大群が押し寄せたんだ。今後もそういったことがないとは言い切れないから。もしかしたらこの方々は……


「何、崇高な志がないとカナカ軍にいちゃ駄目って言いたいの?」


「いえ、違……」


「違くないでしょ! だってあんたは……!」


 違う、そういうことを言いたいんじゃないの!


「あなた方はこの千年起きなかった『ガイストの大群』にこれからも襲われる可能性を考えられないんですか!? 今以上にその身が危険に晒されるかもしれないんですよ!?」


「え、だってそれは偶然でしょ? 俺達はその日非番で、終わった頃に現場に着いたから分からないけど、大したことはなかったんでしょ? 死者は出なかったって。」


「いえ、私が治療しなかったら危なかった方もたくさんいらっしゃいました。」


「ハッ、また自分のおかげで、って言いたいわけ? やっぱりランクが高い奴らは自尊心もお高いんですねぇ~。」


 ……何故分からない? 大群で襲ってきた。それが『これから戦いが激化する』可能性を示唆しているというのに。ガイスト狩りを簡単と言い放ってしまえる方々には、きっと……


「相討ちになってでもガイストを殺す、くらい言えない方が、これからの戦いについて行くことは難しいと思っています。」


「へぇ、じゃああんたはガイストと相討ちになっても良いと?」


「勿論。私が死んでも、ガイストは一体でも多く殺す。」


「っ……!」


 自分の役割を全うできるなら、この命惜しくはない。心からそう思っている。


 と言っても、私は自分が死ねない体質ではあるのだが。もしその体質を超えて死んでしまったとしても、ガイストを根絶やしにできるなら惜しくはない。そういう意味だ。


「っ、うっわ、本気になってやんの!」


「帰ろうぜ!」


 そんな私の執念とも取れる言葉に怖気づいたのか、二人組はサッサと逃げ出した。


 もう、そんなに怖がらなくてもいいのに。プクッと頬を膨らませてそう愚痴をもらしてしまうのも仕方ないだろう。


 でも、これからはああいった人には辛い現実が迫ってきていると私の直感が警鐘を鳴らしている。だから……

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