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ヤンデレ皇女と最弱ヴァンパイアと千年の恋  作者: 朽木昴


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再出発への足がかり

「脳筋の時代は終わったんだよ。これからは、お淑やかさが重要になってくるんだからっ」

「お淑やかさとか、お主とは縁もゆかりもない言葉じゃないか。お転婆の方がよく似合っていると思うがの?」

 いがみ合うリアとカーリア。熱い火花が飛び交い、お互いに一歩も譲らない。弱みを見せた時点で負けが確定する。

 相手の粗を探し出し、そこを攻めれば勝機はある。フル回転させた思考で、相手の弱点が何かを探し出そうとしていた。

「まったく、カーラは見る目がないね。魔族って、精霊の神聖さがまったくわかっていないよ」

「言うてくれるな、ユリア。そもそも、今のお主は精霊ではなかろう。妾の見た感じ──寿命のない人間と言ったところか」

「別にいいじゃないっ。寿命がなければ、ミシェルさんとずっと一緒にいられるんだからさっ」

 犬猿の仲、水と油のように、リアとカーリアは絶対に交わらない。反発し合うのが当たり前で、それは千年前と同じだった。いや、言い方を変えれば、千年経過しても、進歩していないというのが悲しい現実である。

 美しさ、強さ、品格、お互いが相手を上回っていると錯覚し、見えの張合いを繰り広げる。虚しい戦いに勝敗はつかず、和やかな睨み合いが続いた。

「ふたりとも落ち着いてください。せっかく平和を取り戻したのですから……」

 ミシェルが仲裁に入るも、状況の改善には至らず。リアとカーリアの視線が交差すると、同時にミシェルへと抱きつく始末。

 好転するどころか、状況はさらに悪化する。

 ふたりの戦いは激しさを増す。

 もちろんアリスが黙っているはずもなく、ミシェルを巡る争いは混迷を極めた。

「何度言えばわかるのかしら? ミシェルはわたしだけのものですわ。だいたい、本当のミシェルを引き出せるのは、わたくししかいませんし」

 戦いに参戦したアリスは真っ先にマウントを取った。ミシェルへの想いも負けるつもりないが、何より契約という見えない力で繋がっている。

 口だけではなく運命で結ばれているのはアリス。

 たとえそれが打算であったとしても、有利な立場はまったく変わらない。

 乙女たちの不毛な争いは終わりが見えず。安定の泥仕合へ突入する中、冷静に今後を考えていた者がただひとり。見兼ねたアーデルハイドは、この戦いに終止符を打とうとした。

「みなさん、今は争っている場合ではありません。ジュルニア帝国とグリトニア王国の戦争は終結しました。ですが、常闇の国の情勢は不安定のままなんです」

 婚約者という物理的に有利な立場。だからこその余裕なのか。祖国の危機に心を痛めるも、表情には一切出さず大人の女性そのものであった。

「何度でも言いますけど、ミシェルは常闇の国へは行かせませんわ」

「アリス殿、常闇の国が乱れれば、世界への影響は計り知れません。それに私はミシェル様の婚約者。ですが、正妻に拘るつもりはありませんし、側室でも私は満足ですから」

 アーデルハイドの言葉がアリスを動かす。これから迎える甘い生活に支障が出る可能性が高いからだ。

 大袈裟に話を盛っているかもしれない。

 それより気になるのは側室という不穏な言葉。

 独占したくても出来ないのが悲しい現実で、アーデルハイドのウソ偽りのない言葉はアリスの心を大きく揺さぶる。

 冷静に考えると、世界の均衡が崩れるのであれば、ミシェルとの甘い生活は水の泡となって消える。関わらなくても自らに影響が出るのは明らか。

 ならば迷う必要はない。

 不本意極まりないが、アーデルハイドに協力するしかない。

 ミシェルの力なら問題はすぐに解決するはず。甘い生活はその後でも一向に構わない。何よりも、ミシェルの奪い合いに味方は必要。

 側室は妥協できる限界点。

 本妻の座さえ守り切れれば、後はどうとでもなる。

 アリスはアーデルハイドを味方につけるのがベストだと考えた。

「あー、もぅ。常闇の国の問題を解決すればいいのですわね。ミシェルがいればきっとすぐに解決するわよ」

「もちろん私も行くからねっ。私だけ仲間はずれはなしだよっ」

「悪女リアまで……。こうなったら好きにすればいいわ。ミシェル、常闇の国の問題はすぐ解決するのですよ?」

 ミシェルを巡る戦いは一旦保留。甘い生活を手に入れるまでは我慢するしかない。ここで妥協しないと、話がさらにややこしくなる。

 しばらくの間──いや、ミシェルならすぐであろう。独占欲を抑え込み、アリスは常闇の国へ向かう事を決心した。


 最後に勝利するのは自分。

 今は耐える時期にすぎない。

 アリスの中で煌めく明るい未来への道が描かれた。


 ジュルニア帝国とグリトニア王国の戦争は終結した。だが、常闇の国の問題がまだ残っている。ミシェルたちは早急に解決するため、常闇の国を目指したのであった。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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