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ヤンデレ皇女と最弱ヴァンパイアと千年の恋  作者: 朽木昴


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因縁の対決

「やっと追いついたよ。カーラ、アナタ、絶対カーラだよねっ?」

 ティターニアに乗ったリアが上空で仮面の女と接触。疑う余地もなくカーラだと断定する。理由は自らの直感でしかないが、絶対的な自信があった。

「妾を呼び止めるのは誰じゃ。なぜに妾がカーラだと知っておる」

「やっぱりか。アリスちゃんに反転魔法かけたでしょ!」

「なんじゃ、誰かと思えばユリアの末裔と一緒にいた──いや、ユリア本人じゃな?」

 カーラ──もとい、カーリアの慧眼は本物。リアの正体を瞬時に見抜く。たった一度会った際に感じた違和感。そこから正解を導き出した。

 魂が惹かれ合ったからこその結果。

 最初こそ小さなものだった。

 二度目の邂逅で確信へと変わっただけ。たったそれだけの話だった。

「私の正体に気づくなんて。それよりも、質問に答えてよっ!」

「答える義理などない。しかしな、こうして再会できたのは運命のようだの」

「どういう意味なのかなっ?」

 口調は穏やかなものの、リアの内心は怒り心頭。精神すら壊しかねない魔法は危険そのもの。アリスが恋のライバルであろうとも、禁断とも言える魔法を使われ腹ただしかった。

 カーラとは因縁の関係。

 千年前、ミシェルを奪い合い戦った。

 リア自身は転生したものの、カーラがカーリアとして復活しているのは謎だった。

「そのままの意味じゃ。妾を邪神扱いにし、自らは聖女と名乗る。改ざんされた歴史を修正するチャンスということよ」

「そ、それは……。だいたい、歴史は勝者が決めるものなんだからねっ!」

 アーデルハイドの受け入りだが、リア自身も納得した理屈を返す。勝者こそが歴史を作り、都合のいいように修正する。これは特権であり、決して悪意ある改ざんではない。


 罪悪感に蝕まれるリア。

 何度も自らに言い聞かせ、罪の意識を軽減させる。

 正しいと信じつつも、心は大きく揺さぶられた。


「なるほどな。歴史は勝者のもの、か。そうかい、そうかい」

 口元の笑みから不気味さを感じる。カーリアの仮面の下はどうなっているのか。リアはなぜだか無性に知りたくなった。

「今の妾はカーリア。ユリア──もとい、リアよ。妾は帝国を潰し、新しい歴史で偽りの歴史を消し去る。そして、キサマに最大限の屈辱を与えてやるからの」

 怒りに満ちた声。爽やかな蒼空を暗雲が立ち込める。空気は重く、そして張り詰め痛みさえ感じた。

 カーリアから伝わる怨みは、リアの魂にまで深い爪痕を残す。千年という時間は思った以上に長い。偽りの伝承で傷つき、愛する者と引き裂かれる。憎しみは想像を絶するものとなっていた。

「昔を引きずるなんて、カーラは器が小さいね。だけど、平和に暮らしているひと達を危険にさらすのは見逃せない」

「諸悪の根源が血迷い事を。笑がこの千年もの間、どれほど苦しんだか。だが、それも今日ですべてが終わる。ジュリニア帝国とユリアを滅ぼしてな!」

 もはやこれ以上の言葉は不要だった。カーリアは冷暗より取り出したのは紫黒の大剣。放たれる禍々しさは尋常ではない。まるでカーリアの怨念が宿っているようにも見える。

 千年前には持っていなかった。

 未知なる武器に高まるリアの警戒心。

 肌が冷たくなり、見かけ倒しではないと悟った。

「やっぱり止めるには力づくしかないね。千年前とは違い、今度こそ私が倒してみせるから」

 燐光を纏うサーベルを手に身構えるリア。因縁の対決に終止符を打とうと躍起だ。

 静寂に包まれた戦場は、嵐の前の静けさと同じ。両者の時間が止まり、見えない攻防が続く。先に仕掛けるのはどちらか。張り詰めた糸は今にも切れそうであった。

 睨み合うふたりの少女。示し合わせたかのように、攻撃のタイミングは完璧なほど同時だった。サーベルと大剣の鍔迫り合い。どちらも一歩も引かず、純粋な力と力の勝負となる。

 全くの互角。幾度となくサーベルと大剣がぶつかり合う。美しく飛び散る火花が幻想的で、華麗な舞を披露しているかのよう。金属音の交わる音色は激しいリズムを奏でていた。

「少しはやるようじゃの。てっきり弱っているのかと思ったぞ」

「それはこっちのセリフだよ。どうやって復活したか知らないけど、今度は封印じゃ済ませないから!」

「まるで妾が負けるとでも言うつもりかい? 千年前とは違う妾の力、その身で味わうといい」

 大剣だけでは倒しきれない。そう判断し、カーリアは戦い方を変えた。

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