表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ皇女と最弱ヴァンパイアと千年の恋  作者: 朽木昴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/50

王都エルドラへの侵入

 アーデルハイドと別れたミシェルたちは、グリトニア王国領内へ無事に侵入。王都へはオートレインではなく徒歩を選択した。理由は捕まるリスクが高くなるから。

 急ぐ必要はあるが、焦ってはいけない。

 大軍を動かすのには数日かかるはず。

 逸る気持ちを抑え、ミシェルは眠れぬ数日を過ごした。


 王都が視界に入った瞬間、ミシェルとリアに緊張が走る。まず警戒すべきは機巧兵器。感情が一切なく、受けた命令を忠実にこなす。物理的な攻撃がメインだが、魔法の耐性は非常に高かった。

「ここから先は見つからないよう、慎重に行動しないといけませんね」

「そうだねっ。特にミシェルさんは気をつけないと。今はポンコツなんですし」

 リアの容赦ない指摘に、ミシェルは苦笑いを浮かべる。

 ここ一番での失敗は許されない。いつも以上に気を引き締め、アリス救出作戦に挑む。緊張からミシェルの鼓動は激しいリズムを奏でた。


 主だから救うのか。

 それとも別の理由が存在するのか。

 今は余計な考え事はする必要がない。

 たとえそこに真実の愛の答えがあろうとも。


 王都エルドラの入口は非常に厳重だった。数体の機巧兵器が検問し、突破するのは至難の業。強行手段は悪手であり、少なくとも陽光が差している間は無理そうであった。

「簡単には侵入できそうにないですね」

「私はともかく、ミシェルさんはジュルニア帝国側だからね」

「こうなったら、夜を待ってから侵入した方がいいんでしょうか」

「上空の警戒網が手薄になればらいいんだけどっ」

 物陰に隠れ様子を窺うミシェルとリア。王都の大空を飛行する機巧兵器が瞳に映る。壁をよじ登っての侵入は不可能。闇夜に紛れるのが一番だと考えた。

「機巧兵器は休みいらずですから、手薄になる可能性は低いと思います」

「それなら残る手段はひとつだね。ひとまず夜まで待とうか」

 リアの言い方が気になるも、ミシェルは気のせいだと心の奥に疑問をしまい込んだ。

 漆黒が支配する時間。ミシェルとリアは密かに行動し始める。物音を立てぬよう慎重な足取り。王都エルドラの入口まで接近すると、機巧兵器が赤い瞳で警戒にあたっていた。

「あれでは突破は無理ですよ」

「大丈夫、私に任せて。私が機巧兵器の気を引くから、その隙にエルドラへ侵入するんだよ?」

「で、でも、それだとリアさんが──」

「しーっ、声が大きいよ、ミシェルさん」

 唇に触れる人差し指が温かい。緊迫感の中での生々しさが、ミシェルの顔を赤く染まらせる。

 近すぎる距離のふたり。

 リアは真剣そのもの。

 舞い上がっていたのはミシェルひとりだけだった。

「す、すみません……」

「私は平気だから、ミシェルさんはアリスちゃんをよろしくね?」

 静かに立ち上がるリア。一度だけ振り向き、ミシェルに満面の笑みを見せる。気迫に満ちた背中は頼もしく見えた。

 機巧兵器へ堂々と近づいていくリアを、ミシェルは固唾を飲んで見守るしか出来ない。心臓は飛び出しそうなほど激しくなる。本当に大丈夫なのか──ミシェルの心配を他所に、リアは機巧兵器に軽々と話しかけた。

「あのー、すみません──」

 何を話しているか聞き取れないが、機巧兵器を入口から遠ざけているのは確か。今がチャンスなのか。タイミングをはかっていると、リアから見えない合図が送られた。

 勇気を振り絞るなら今しかない。ミシェルはゆっくりと動き出す。警戒レベルを最大限まで引き上げ、慎重な足取りでエルドラへと突き進んだ。

 気配を限りなくゼロに近づける。

 息を潜め、体は景色と同化。

 だが全身に鳴り響く鼓動が外へ漏れ出しそう。

 聞こえないようにしなくては──ミシェルは細心の注意を払いながら、エルドラ内部へと侵入した。

「よし、うまく侵入できたかな。機巧兵器は──うん、いないみたいだ。やっぱり、街の中は警備が薄いね」

 月光に照らされるエルドラは、以前と違って見える。静寂が支配する漆黒の闇。嵐の前の静けさなのか、それともすでに嵐が吹き荒れているのか。今の状況からでは判断できなかった。

「それにしても、リアさんは大丈夫かな。ちょっと心配だよ」

 今の自分より強いのは確かだが、リアひとりを残す事に不安を感じる。とはいえ、リアのところに戻っても無力なミシェル。信じるしかない──罪悪感に蝕まれながらも、アリスがいるであろう城へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ