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第7話「My music!」②

「あれ、二人とも? そんなとこで何してるのよ」



 そんな声が耳に入り、俺は目を開いた。


 次の瞬間、ゼンがガシッと俺の肩を掴み、その状態のまま頭を垂れる。な、何だ何だ。というか、今の声は……。


「……キャンディ」

「……えー、あれ、えっと……邪魔しちゃったみたいね。……じゃ……」

「え、いや、別に邪魔とかじゃねぇけど……行こうとしなくていいし……」


 俺が思わず呼び止めると、俺の肩から手を離して、ゼンが顔を手で抑えながら言った。


「……そうそう、キャンディ、ナイスタイミング……」

「……その反応を見る限り、やっぱり邪魔しちゃったみたいね」

「……いや……今のは積極的に邪魔して……」

「積極的に邪魔するって何だよ……」


 俺はゼンの言葉に小声で返す。ゼンが離れると、心臓は少し落ち着いてきたようだ。相変わらず、鼓動は早いままだけれど。

 ……やっぱり、不整脈とかか? 病院行くのはダルいな……。


「……キャンディは、学校帰りか?」

「うん。そう。そしたらあんたらの姿が見えたから、こうして来たってわけ」

「なるほどな……」


 俺がチラッとゼンの方を見ると、ゼンはまだ顔を手で抑えて項垂れている。何かに落ち込んでいるようだ。どうしたんだよ、本当に。


「……あんた、ゼンに何かしたの……?」

「え、いや……別に……これと言って何も……」


 キャンディに小声で問われ、俺は小声で返す。


「……強いて言うなら……この前お前に相談した……心臓の鼓動が早くて止まらないっていう話を……」

「……あー、原因それだよ」

「え? 何でだよ」

「……アキはそのまま純情でいてね」

「は?」


 何言ってるんだコイツ。


 首を傾げる俺に構わず、キャンディはゼンに近寄り、励ますようにポン、とその背中を軽く叩いた。さっきから何なんだ。わからないことだらけで繰り返し同じことだけを言っているような気がしてならない。


「そういえば、学校で能力の訓練したみたいなこと聞いたけど、したの?」

「あ、ああ」


 振り返ったキャンディにそう問われ、俺は頷く。キャンディは、ふーん、と言い、自分の喉を手で抑えた。そして。


「──♪」


 キャンディの口から、澄んでいて綺麗な高音が流れ出す。心地の良い音だ。下手したら、このまま寝れる気がする。


「もしかしたらこいつとかあんたの妹弟子とかに聞いたかもしれないけど、私の場合は自分の喉に依存する形だから、あんたとはちょっと違うのよね。あんたらは何もないとこから楽器を取り出す形だけど、私はこの喉だけが頼りだから」

「あ、ああ……聞いた」

「ま、私に手伝えることはほとんど無いだろうから、頑張ってね」

「雑だな……」

「応援する気持ちはちゃんとあるわよ」


 キャンディはそう言ってから、後ろでまだ項垂れているゼンをチラッと見てから、ぐっと背伸びをして俺の耳元に口を寄せた。だから俺は、少しだけ屈んでそれに合わせる。


「……私がここまで来て、何かおかしいところある?」

「は?」


 いきなり何だよ、という気持ちを込めてそう言うが、いいから。と言われた。俺は渋々考える。が。


「……いや、別に……」

「……ふーん、良かった」

「……良かった?」


 俺は聞き返すが、キャンディはどこか楽しそうに笑って俺から離れるだけだった。首を傾げる俺を他所に、キャンディは言う。


「言っておくけど私も、それなりに美少女なんだからね」

「……はあ……」


 美少女? ……確かに、小学生(禁句)にしてはどこか大人びた、それなりに整った顔をしているとは常日頃から思っている。いやでも、それを自分で言うか? しかも何だよ。その含みのある言い方。


「……何か、そこまで意識されてないと逆に悔しいわね」

「……さっきから何の話してるんだ? お前」

「あーもう、ムカつくわ。すごいムカついてきた。もうどうとでもなりなよ! ふん!」

「何でここぞとばかりに小学生みたいな態度取るんだ、」


 ……あ、と、呟く。俺は反射的に青ざめた。


「……誰が小学生ですってぇ〜〜〜〜……?」

「あ、いや、その……」


 キャンディの纏う服が、フォーマルなドレスに変わる。光に反射し、煌めくドレスに恐怖を抱いていると、キャンディが怒りのままに声を放ってきた。


「……って、二人とも何してんの? ……キャンディ、アキのこと、殺してやんなよ〜……」

「何悠長なこと言ってんだよ!! 止めてくれよ!!」

「いや〜……無理……」


 俺がキャンディの攻撃を避けながら叫ぶが、ゼンはお手上げ、と言いたげな表情を浮かべている。実際手を上げていた。クソ、口を滑らせたばかりに……。

 ……はあ、散々だ。


 ……でも、さっきのキャンディの言動。一体俺に何を伝えたいんだか。





 何とかキャンディの怒りを沈め、くたくたになって帰ってきた俺は、久しぶりにそのヘッドフォンを取った。部屋でこれを使う機会は滅多に無い。そもそも家で音楽を聴くことは無いのだから。学校で、耳栓代わりにしか使うことはない。

 俺はそれをつけて、プラグをスマホに挿す。そして、無料動画サイトで何か適当にピアノを探った。そのまま適当に流していく。様々な色をした音たちが、俺の耳に届いては通り過ぎる。


 ……持ち曲か。つまり、十八番だよな。……考えたこともなかった。今までは、とにかく目の前に与えられた楽譜をなぞっていただけだし。戦った時も、基本的に相手の音楽に合わせてやっただけだし。……それを考えると、俺自身が望んで出した音というのは、無いかもしれない。だって、どの曲も……俺にとっては、取るに足らない。変わらないものだから。

 何が良いとか悪いとか、何が違うかとか、そんなものは気にしない。違いと言えば、あくまで楽譜上の音符の羅列だとか、強弱だとか、そういうもので区別するものだ。


 ……だけど。

 アイツらを見ていると、それが違うってわかる。


 アイツらは、自分にしか無いものを弾いているんだ。自分にしか出せない音を、鳴らしている。それを俺に届かせる。決して通り過ぎて行かず、ずっと心に居座るような、迷惑な音。……だが、それは、演奏家にとって大きな武器だ。

 だから、アイツらは強いのか。


 迫るような、力強いタッチ。新たな曲が流れ出す。それに合わせて、俺は自然とそのメロディーを口ずさむ。何かが芽生える。興奮のような、期待のような、新たな熱が。

 これは、知ってる。初めて能力を出した、あの時のような。


「──♪」


 俺が大きく息を吸った、その瞬間。


 ヘッドフォンをむしり取られ、音楽が途切れた。

 ……何だよ、今良いところだったのに。


 どうせ妹とかだろうと思って、俺は起き上がり……目を、見開いた。


「……誰だよ、お前」

「森下秋だな?」


 黒いマントにフード。それを目まで深く被った、男とも女ともわからない人物が、俺の枕元に立っていた。


「来てもらおうか」


 俺はその全身をジロジロと舐めるように眺めてから、小さく呟く。


「……お前、絶対不法侵入だろ、これ……」


 だって、母さんがこんな不審者のことを、上げるわけがない。





「アキは絶対、あんたが好きだよ」


 私の言葉に、目の前に座るゼンは目を見開く。そして悲しげな色をその栗色の瞳に滲ませた。


「……またその話?」

「私は結構確信を持って言ってるんだけどねー」

「……キャンディの性格的に、嘘で俺にそんなことを言わないって、わかってるけどさ」


 ゼンは机の上に投げ出している自分の左手を、包み込むように右手で撫でる。


「……やっぱり、それだけは絶対無いって。キャンディの勘違いだろ?」

「だったらあんたにとっては都合が良いだろうけどね。現実はそんな淡々と進まないよ」


 私はゼンに奢ってもらったオレンジジュースをストローを少し噛みながら飲んだ。行儀が悪いと良く言われるけど、癖だから仕方がない。


「……ゼンも、アキが好きなんでしょ? いいじゃん、Win-Winで」

「そんな単純な問題じゃないんだって」


 ゼンは少しだけ苛つきをその言葉に混ぜた。赤い色だ。それでもって青い。混ぜれば紫。苦しみの色。


「……キャンディは知ってるだろ。俺が〝あの時〟、何をしたのか」


 私は黙って、オレンジジュースを机に置く。ストローについた歯型が目に映る。


「知ってるけど」


 私は膝の上で拳を握りしめながら、言った。


「私は、親友であるあんたら二人に、ちゃんと幸せになってほしいよ。……前世の分も、ちゃんと」


 ちゃんと、か。と私は心の中で呟く。ちゃんと幸せになるって、何だろう。二人の幸せって、何なんだろう。私が決められることでもないのに。

 それでも、ちゃんと幸せになってほしいって、そう思ってしまう。


「……ありがとう」


 ゼンは、柔らかい声でそうお礼を言った。やっぱり、ずっと悲しそうに。喜びを、忘れてしまったように。


「ねぇ、ゼン」


 私は、口を開く。


「認めたくないのは、あんたの勝手だよ。でも、そのままで、いつか誰かに横から取られたって、知らないんだからね」

「それは、無い」


 私の言葉に、ゼンはすぐに返した。


「だって俺に、アキを縛る権利なんて無いし。……だから、横から取られるって、元々俺のものでもないんだから、その言葉は間違ってるよ。キャンディ」

「……」


 私は、思わず小さくため息をつく。

 ……こいつ、拗らせに拗らせてるなぁ……。


 そこで、ゼンのスマホが音をたてる。ゼンはすぐにその電話に出た。


「はい、もしもーし……」

『遅い!! グズグズしすぎ!!』

「うわっ、お前か。……何だよ」


 わかりやすく不機嫌に、ゼンがそう問う。……本当に、わかりやすいんだから。なのに自分の気持ちを認めないとか、意味わかんない……。

 電話の相手は、奏だった。声からして、だいぶ焦っているようである。


 すると、私のこの場所からも聞こえるくらいの声で、彼女が叫んだ。



『秋さんが例の組織に攫われちゃったの!! あんたも早く来なさい!!』



 ゼンが目を見開く。それを見ながら私は不躾にも、ほら、だから言ったじゃない。と心の中で呟くのだった。

 この時から文章ルール(文頭は1マス開ける、「!」や「?」の後に1マス開ける、「…」は偶数個など)を守るようになりました。お陰で手直しが楽で2025年の私は助かっております。

 あと地の文が多くなって、かつ前みたいに「1文書いたらすぐ改行!」じゃなくなったので読み応えも生じ始めているのではないかな、と。


 まあ展開のめちゃくちゃさは相変わらずなんですけど!!!! 特にBLシーンになると途端にテンションおかしくなるの、やっぱどうにかしたいですね。

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