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ボニーとクライド

 本物のクライドは映画のフェイダナウエイと違って、身長は150センチにも満たなかったらしい。

 だから、丁稚どん(でっちどん)のヒデヒトは、本当はそっちの方がぴったりなんだけれど担当はバイオレンスだから役回りはボニーの方となる。

 自慢に聞こえるけど、強盗に付随した人殺しの数はボニーよりもヒデヒトの方が圧倒してる。

 地球上で一番長寿(いちばんちょうじゅ)(しゅ)のホッキョククジラの最年長者(さいねんちょうしゃ)よりも(すぐ)っていて、すでに211を超えている。けれども殺り方の方(やりかたのほう)は、溶けた百目蠟燭(ひゃくめろうそく)でコーティングした実の体温より冷たい両掌で締め上げる絞め業(しめわざ)だから、ビジュアルもサウンドも殺ったあと(やったあと)の硝煙の臭いまで付いてくる派手なボニーがするドンパチとは違い、いたって地味だ。


 嫌だろうなぁ、殺られる方は・・・・あんな冷たく地味で気持ち悪いのが最期とわかった刹那(せつな)はと、わたしは相棒だから、そんな顔はヒデヒトには見せないけど、最期に目が合ったソノヒトにそんな顔した目を呉れてやる。実の掌は使えないけど、省略の片手だけど、ちゃんと立てて合掌する。アナタの最期なのに、こんな地味で冷たく気持ち悪くてゴメンね、と。


 こんなお尋ね者になってもヒデヒトの丁稚どん(でっちどん)は変わらない。前掛け掛けて紺絣の格好(なり)は変わらない。さすがにいつも五分刈りでいられないから、七分(しちぶ)まで伸びたら、わたしの頭陀袋(ずたぶくろ)からバリカンを出して、おとといまでの五分刈りに刈り戻す。

 ヒデヒトが丁稚(あんな)だから、相棒のわたしもそれと名指しされるような高野聖(こうやひじり)格好(なり)が板についた。初めから一式を一揃いしたのではない。流れものの道中をするうちに、手甲脚絆(てっこうきゃはん)を手始めに、頭陀袋(ずたぶくろ)深編笠(ふかみがさ)墨染の衣(すみぞめのころも)と機能を足してくうち出家在家(しゅっけざいけ)をメリハリする気のないまま、そんな風に落ち着いた。

 けっして片手念仏を格好良く(さまよく)するためのコーデじゃないが、傷んだ深編笠はときどき三度笠(さんどがさ)に替えたりはする。ここに縞の合羽(しまのかっぱ)道中指し(どうちゅうざし)まで加えたら、股旅もので登場する転んだ(ころんだ)生臭坊主(なまぐさぼうず)が一丁上がりとなるのだが、千年前の高野聖も悪いのがわんさかいたらしいから疎い繋がりでもないのかもしれない。

 相棒の丁稚が五分刈りで、こっちはこのかた頭も髭も伸ばし放題の狼藉道中(ろうぜきどうちゅう)だ。ほうぼうを背景に自撮りはよくするから、お尋ね者の御触書(おふれがき)を見つけると写りの良かった二人の等身大を貼って自らお上(おかみ)に御協力したのも二度や三度にきかない。それがいっこうに司直の掌(しちょくのて)が伸びて()ず、再び一緒に牢屋に放り込まれる機会は訪れては呉れない(くれない)から、小水(ションベン)で鉄格子溶かすわたしの秘儀が役立つ機会はいっこうに訪れては来ない。

 わたしの唯一の特殊能力を発揮したのは、お互いの出会ったときのあのときの一回だけ、相棒の本領が発揮できたのもあの一回だけ。

 ヒデヒトの望みがどうかは別として、いまはこうして殺られる(やられろ)そのヒトに向かってする手向け(たむけ)よりほか、わたしの()()()()()はないのだ。


 いまはこうして半眼でする片合掌が板についてきた。

 格好(なり)(ひじり)だから、あたまもからだも体毛はひとつもないから、片合掌(かたがっしょう)はするかたちは内省(ないせい)のときからやってきたから、こうして(じつ)をやっても板につく。格好はついている。

 でも、実を始める前からこうしてやってきたたのは、ヒデヒトには言ってない。

 気づかれてもいない。こんな二人でやって30年経つのだから、一つや二つお互いに内省(ないせい)のある方が何事によらず上手く続いてく秘訣だ。

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